第2話 遅れてきたヒロインとイケイケ(イケすかないイケメン)男子

4月12日、3日目の朝を迎える。いつも通りかったるいが教室へ入ると自分の席へ着く。いつものように師匠と美夢と挨拶を交わす。窓から二番目後ろから二番目の席、師匠が後ろで俺の右隣の隣が美夢、右隣は初日から何故か元々師匠の席だったが後ろの空席が今師匠が座っている。早苗は1番前の真ん中の特等席で天敵の斎藤は早苗の後ろに位置している。


「いや、先生がこっちに来てくれって言ってたからさ」


どういうことだ?本来名前順の出席番号順に座るのだが初日からクジで席替えした。にしても何故俺の隣が空席なんだよ?


「はいはいみんな席に着いてー」姉貴の担任がそう言うと他の連中も自分の席に着く。


「転校生ではないんだけど家庭の事情で昨日と一昨日来れなかったクラスメートを紹介します。可愛い女の子だから男子の諸君がっついちゃだめよー」


「「「はーーーい」」」


よくもまぁうるさいうちの野郎どもを懐柔させたな。関心も束の間戸を開ける音と同時に謎の静寂に包まれる。



ガラガラガラ、そこには絶対的美少女の姿があった。髪色は暗めのブラウン、髪型は胸より下までの2つのおさげ、程よい肉付きの白い細めの足に紺のハイソックスが清潔感を漂わせる。


俺は驚いた、他の奴らとは違う意味で。初日の放課後に見覚えのあるあの女だ。


(「雅君?」)


絶対どっかで会ってるはずだ。それはそうと男子がうるさい。


「うおおおおおお、彼氏いんのかな?」

「めちゃんこ可愛い、読モかなんかか?」

「まるで遅れてきたメインヒロインだぜ、周りの女子どもが霞んで見える」


まずお前らうるさい。彼氏いるかなんてのは気になるだろうし2番目は同意するが3番目黙れ、そしてこのクラスの女子全員に一人一人土下座しながら謝れ、そして全員から頭踏まれろ。


「あ、あの、月村沙織です。よろしくお願いします」


あれ?人違いか?そう俺の中で胸がざわつく。絶対どっかで会ってるはずだ。この眼鏡美少女俺の人生のどっかで会っている。思い出せ!

その葛藤の中クラスメートの連中がパチパチ拍手を送る、そして俺もそれに合わせる。


「席は後藤君と西岡さんの間の席に座ってもらうわ。この時間が終わったら2人とも学校案内頼むわね」


美夢「はい」

俺「…(黙って首を縦に振る)」


そして後ろの席にアイコンタクトを送ると師匠も首を縦に振る「わかったよ」と。わかってもらえたか。


そして1限目は校内探索と言う名のオリエンテーションになっていたので俺、美夢、師匠、月村で探索をしようとしていた。がそこに凸凹コンビが割って入ってくる、早苗と斎藤だ。

「ねぇねぇあたしたちも混ぜてー」

「貴方が月村さんに手を出さないか監視しに来たのよ」

「お前にそんな事される覚えはない」

「まぁまぁいいじゃない、こんなに可愛い子がいっぱいついてるんだから。この幸せ者」


美夢さん、近いんですけど。俺の右腕をホールドする。


「おい、胸当たってんぞ」


こういうこと言うのは慣れている。


「そ、ラッキーじゃん。あたしは気にしてないよー」


俺が気にすんだよ。今日はやけに積極的だな。


「お二人は付き合ってるんですか?」


月村がそう言うと


「そうゆうわけじゃないよー。ベタベタしてるのはいつものこと。ねー狭山君」

「ま、まあね。あはははは」


師匠が顔を真っ赤にして苦笑いしてんぞ、それもそのはず。美夢はもう片方の腕で師匠を捕まえる、Gカップ相応の胸が腕に当たっているのだから。


「それじゃみーちゃんビッチみたいだよ」

「どっちかっていうと連行されてる宇宙人だな」

「ぶー」


やっと俺と師匠の腕が解放される。その柔らかさに免じて許してやるか。


※狭山視点


僕はきっとこの子に以前会っている。だから月村さんにひっそり声をかける。


「月村さん、放課後一緒に帰らない?話したいことがあるんだ」

「う、うん。私もちょっと話したいことがあって」


僕はこの一言である確信に至った。そして雅には悪いけどどさくさ紛れに放課後デートでも楽しもう。(ゲス顔)


(雅視点)

昼休みになるといつものメンバープラス月村で昼食をとる。俺は料理が好きで特に中華料理を趣味で作って色々弁当を試している。多分美夢とか欲しがるから1つのタッパーにおかずを2つ詰める。今日はホイコーローと青椒肉絲だ。


「うーん、やっぱりこれだよコレ!雅のオカズたまんない、もうイッちゃう。」


美夢、言い方考えてくれこのアバズレ女足くねくねすんな故意的に胸揺らすな素直に美味しいと言ってくれ。

周りの野郎どもの視線が痛い、そして他の女子まで。

「そう言えば後藤君クラス中で噂が立ったんだけど、ハーレム王後藤って」


なにそれどこの鈍感ラノベ主人公だよ。

「ヤンキー、優等生、眼鏡美少女、リス、モブ、痴女」

その声は…

「誰がモブよ」

「リスはあたしだよね」

「メガネってあたしだけだよね///」

「あたし痴女なんだ()」

1人魂抜けたぞ、もどってこーい。


「なんだよオメーか半澤」

コイツは半澤克義、小5後期からクラスメートの身長180cmスリムなイケメン。後期って何かって?ちょっとした事件があって俺の小学校は9月に急遽クラス替えをする異例な事があったんだが今はこの話はここまでにしておこう。まぁ俺は小6まで不登校だったけどな。ちなみにコイツは成績優秀スポーツはバスケ部で中2の時インターハイベスト4の10番だ。中学3で訳あって転校したが今は引退と言い帰宅部ながらも朝のランニングと週末はどっかの体育館借りてバスケしてるそうだ。


「かっちゃんもっと早くきてくれても良かったのにー」


「いやぁ、あまりにもハーレムキングがモテモテで目立ちそうだから落ち着いた頃に行こうと思ったんだが」

「張っ倒すぞコラ」

「あー怖い怖い、まともにやり合ったら勝てないから勘弁してくれ」

小学校時代の時実はコイツにいくつもの借りがある、しかもいい意味でな。だからないがしろにできねない。

「それにしても一体どう言う風の吹き回しだ?」

「いやぁ、目の保養になるかと思って」

「帰れ」

「あっはっは、そりゃ俺がいたらハーレムキングにならないからな」

「帰んな」

「あの後藤君が押されてるなんて」

嫌いじゃないが苦手なタイプだ。実際小学校時代あいつは俺の恩人だからな。

そして半澤は月村をじーっと見る

「おいあんた…」

「なにかな?」

「あ、わりぃ。なんでもねー。可愛いから見惚れちまっただけだ」

「えっ」

「かっちゃん大胆ですなぁ」

「まぁ事実っしょ。そこの痴女さんも負けてないけどな」

「もう、半澤君のばかー」

肩をポカポカ叩く、あざといな。

「あれで学年イケメンランキング2位だからね。」

「「納得いかねー」」


俺と師匠が声を揃える。てかイケメンランキングってなんだよ。


「はいはいこれー、2、3年生新聞部が入学式の写真から入学2日目に女子全員が男子一人一人投票を入れるって言うランキングがあって…」


淡々と説明するリス(早苗)


「で、これがベスト10です。意外なのがこーちゃんが8位にランクインしてまーす。」


「うそ?僕?なんで?」

「ヒント、入学式の写真を思い出して」

「あっ!眼鏡」

そう、師匠は眼鏡を外して撮影した。師匠はメガネを取るとなんちゃらJUMP!の山田○介のような可愛い系イケメンなのだ。斎藤がよだれを垂らしいてる、汚ねーぞ。


「もっがいはずじでぐだざい」


首を傾げながら斎藤の言われるがままに眼鏡を外す。


「尊い、あー尊死」

「あー、斎藤さんちょっと」

彼女はどうやら師匠に票を入れたみたいだ。

「私とお母さんHey!Say!JUMP好きすぎてライブ何回も行ってるのよ。」

「私もビックリ、可愛いなぁとは思ってたけど眼鏡外したらこんなにかっこいいんだ」

美夢がそう言うと師匠は顔を真っ赤にする。

「ははーん」

おい、リスが頬袋膨らませながら悪い顔してやがる。ハムスターかよ。てか俺のおかずしれっと完食してんじゃねーよ。

(あー、雅君のおかずがー)

寂しそうにタッパーを見つめる月村

「今度作ってやるから」なぜか反射的に周りに聞こえないように月村に耳打ちした。

すると耳打ちで「ありがとう、楽しみにしてるね」

だってさ可愛いなこんちくしょー。そして余った白飯を処理しようと思う。

「こんなこともあろうかと持ってきてよかったわ、余計なことすんなよ悪徳ハムスター」

早苗の頭をくしゃくしゃすると

「わ、わかったよお。ごめんなしゃい」

反省の色がなさそうな謝り方で謝罪。まぁあんま気にしてないからいいけど。

俺はポケットからふりかけの小袋を取り出す、のりたま最強。

「んで、肝心のキングの順位は?」

もういいだろ克義。

「意外の意外、なんと6位です。20位くらいまであるんだけど2組だけでベスト10が4人いるからね。」

俺「いやぁ、意外すぎた。」

そう言うと…

斎藤「ほんと意外」

リス「まぁ顔と中身は全然違うけどね」

美夢「おっぱい星人のくせに」


お前ら言いたい放題だな、1時間1980円で受け入れてやるよ。


沙織「そ、そんなことないですよ。その、み、後藤君かっこいいじゃないですかぁ。」


そう行ってくれたのは月村だ、コイツが天使に見える。


「月村、お世辞はよせ。気持ちはありがたいが寂しくなるだけだ」


真面目女「ほんと、すぐキレるし」

リス「女心わかってそうにないし」

痴女「おっぱい星人だし」


最後の女、せめて言葉のチョイス捻ってくれ


沙織「みんなみy…後藤君がかわいそうだよ。わたしだったら後藤君に票を入れてると思うし」


今日の運勢おうし座一位だな、テレビ見てないけど。


ジャニオタ「良かったわね、理解者ができて」

ハムスター「沙織ちゃん優しいなぁ、さっちゃんって呼んでいい?」

アバズレ「雅のえっちぃ、おっぱいばっかり見ないでよぉ〜」


よし、最後の女は後でヤキだな。そしておっぱいから離れてから物言え。


「ちなみに一位ってそれもうちのクラスだよね?」


「あいつか」


「彼は神坂駿、女子の全体の3分の1の票を取ったって話だよ」


身長は178cmだがスポーツ体系のガリマッチョで部活は元サッカー部らしい。あれ?噂をすればこっち近づいてくるぞ。


「久しぶり沙織、元気だった?」

「うん、久しぶりだね駿君」


どうやら同中らしい。


「よっすー駿」

「おう、克義」


そういえば克義親父さんの転勤で中学3年の1年間あっちの中学か。


「なんかさー駿ちゃんとさっちゃんってお似合いのカップルみたいだよねー。」


黙れおっぱいハムスターひまわりの種でも食ってろ。なんか変な空気になったぞおい。


「まぁイケメンと美女が揃えばそう見えるっしょ。あっはっは」


「まぁそれもそうね。私と本気を出した狭山君と一緒ならそう言う風に見られるかもね」


まぁ、そうだろうな。お似合いだけど勘違いさせてくれるなよ。うちの山田○介を見てそう思った。


狭山視点


放課後僕は約束通り月村さんとデートする。小腹がすいたので隣駅徒歩1分のカフェでコーヒーとチーズケーキを注文、月村さんはレモンティーとショートケーキを注文。


「いやぁ、可愛い子とデートできるなんて光栄だよ」


柄にもなくお世辞を言ってみる。


「狭山君、ありがとう」


顔を真っ赤にする。僕でもある程度女子に免疫がついてきたと言う事だろう。しかし今日彼女を連れて来た目的は別にあった。ケーキも食べ終え世間話もしたところで…


「さて、本題に入ろっか」

「はい」


いよいよ核心に迫る。


「月村さん、いや、桜井さん。小学校の時クラスメートだったよね?」

「狭山君は覚えてくれてたんだ。そうだね。」


少しくらい顔をする彼女


「多分雅も気づいてないと思うんだけど黙ってた方がいい?」

「それは、その…雅君には私の口から言わせてほしい」

「わかった、じゃあ僕は黙ってるね。」

「お、よっすーお2人さん」

「ねぇ空気読んでよ半澤君」


月村さんは苦笑い


「いやぁここの向かいジムじゃん?そこに通ってるんだけどたまたま2人を見かけてさ。それで顔だしたとこ。」


半澤君って普段チャラチャラしてるけどカンが鋭いし洞察力もあるんだよなぁ。


「いらっしゃいませー」

可愛いウエイトレスが半澤君にお冷やを出すと

「このメンツなら話せるよな、あ、俺コーラで」

「かしこまりました。」

「なぁ、このメンツなら話せるよな?」

「というと」

「あの事だよ」

「うん」


月村さんがまた落ち込んだ。半澤君のコーラが出され飲み干すと同時に口を開く。


「あ、悪りぃな桜井。多分雅桜井と月村は同一人物だと把握してないらしい。多分どっかであったことある、程度だろうな。」

「うん、というかそろそろ外していいかな」

元桜井さんは眼鏡を外す。

「うわぁぁ、眼鏡を外すとやっぱり桜井さんって感じするよ」

「やっぱべっぴんだな。なぁ桜井、悪いがどっかでボロ出ちまうからこのメンツの時は沙織って呼んでいいか?」

「僕も下で呼ばせてくれ。なんとなく月村さんって違和感あるし」

「うん、勿論だよ。私も幸太君と克義君って呼ぶね。あ、でも雅君に私の事話すまではこの事は内緒にして欲しいの、お願い。」

「「了解」」

僕達は少し昔話をして解散。決していい話ばかりではなかった。

そしてあの忌まわしき事件、カフェでは誰も触れなかった大事件だ。

雅を含めた僕達4人は同じ小学校に通っていた。5年の9月までは雅と同じクラスだった。そして隣のクラスで桜井さんと半澤君がいたんだけど僕は卒業まで不登校、雅は小6まで不登校。桜井さんは隣町に転校して僕達は一度バラバラになった。そのバラバラになったピースをまた完成させるんだ。これが僕にできる雅達への償いだ。僕が雅の5年越しの無念を晴らさないといけないんだ。僕はそう心に誓った。





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