ヤントーセー雅

なっとー

第1話 『童顔ヤンキー』後藤雅

都内某所とある『燕山東高等学校』通称『東高』と呼ばれるそこそこ有名な進学校という名のブタ箱に推薦入学という裏ワザを使って入学した俺、後藤雅15歳(彼女いない歴=年齢の童貞)だが別に高校に入学できたからとはいえバラ色の高校生活を楽しむ気はない、俺にとってむしろただただ作業のように3年間何事もなく卒業するという結構ベリーハードなミッションである。何故推薦してもらえたのかって?それは追々わかると思うので割愛しておく。


先に思いやられ自分の机に突っ伏してる中、聞き覚えのあるカン高い声で俺に近づいてくる1人の命知らずな女がやってきた。


「やっほー、一緒のクラスだったんだ。高校生になってもよろしくね♪」


「ああ、よろしく」


ぶっきらぼうにもその美少女に返事を返す。


彼女の名前は西岡美夢。160cmの巨乳美少女、中学入学前だったか、空き家になった隣の家に引っ越してきた。中学時代の女友達は彼女と他2〜3人くらいだろう。あいつは俺と関わっているお陰で周りの女子にいつも良からぬ噂を立てられていた。それでもあいつは俺と関わることを辞めなかった物好きな女だ。俺と一緒にいなければ色々めんどくさい事にならなかったのに。ああ、胸のサイズが気になるって?確かこないだFカップのブラがきついとかなんとか言ってたな。女子にいうと嫌味になるからって俺に愚痴ることないのにな。こないだ俺の義姉さんが美夢の胸を裁縫用メジャーで測ったら私と一緒だって言ってたっけ。義姉さんたしか92cmのGカップだったって自慢気に話されたが俺の体の一部が敏感になるのでこのくらいにしておこう。一応女子なんだからそういう言動は気をつけてほしい。俺も一応巨乳派だからな。あ?聞いてないって?悪かったな。


「あ、おはよう狭山君」

「よっす、師匠」

「おはよう雅、西岡さん」

「本当に2人とも仲良いよね、方や優等生眼鏡君と

方や童顔ヤンキー」

「うるせーよ、悪かったな目つき悪くて」

「そんなこと言ってないじゃん、むしろかっ…いや、今のなし、なんでもない!」


慌てて自分の席に戻っていった。


「なんだよあの女、貶すなら徹底的に貶せよ。」

「ねぇ、前から聞きたかったけどやるなら徹底的に…みたいなそのポリシー何?」


コイツは狭山幸太、162cmで若干小柄な優等生。入試学年トップだったらしい、5教科500点満点中498点とかなんとか。そんで中学2年の2学期から勉強を教えてもらったから幸太の事は師匠と呼んでる。


「はい、席に着いてー。これから1年間このクラスA組の担任になります、宮崎朱理(みやざきあかり)です、ちなみに担当科目は数学よ、みんなよろしくねー」


「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!」」」



うるせーぞ男子ども!と言わんばかりの女子達の露骨な呆れ顔、そして俺。何故なら俺の実の姉貴だ。実は推薦入学の件も彼女のお陰である。その話も追々することになるが今はやめておこう。ちなみに義姉さんと同級生で姉貴とは親友だ。ちなみに胸は義姉さんほどではないがそこそこ巨乳である。Eカップと言い張ってるが実際のところどうだろう?

俺自身は実の姉貴だし見慣れたもんなのでなんの反応はしないが他の男子どもはそうはいかないらしい。何お前ら人妻相手に何盛ってんだよ…


そう、苗字が俺と違うという事はそういう事でる。


HRも終わり入学式のあれやこれやが終わる、校舎を出ると1人の女性を見つける。空を見上げて何してんだ?


「おいあんた、空から金がなんか降ってくるのか?」


ナンパにしては悪い冗談だったがこれが彼女にとって史上最低な俺との再会という事に俺は全く気づいていなかっただろう。


「雅君?」


そして彼女は俺を見るなりハッとして逃げるように走って去っていく。


俺は不覚にも、彼女を「すげー可愛かった」と思いながら「ん?どっかで見たことあるような…」


初対面では無いような、でも見たことのない容姿だった。その日は家の夕食に出てきたハンバーグがなかなか喉を通らないほど見とれてしまった。綺麗で可憐な美少女その正体を俺は未だに思い出せないでいた。


「あらぁ雅君、恋煩いですかぁ?」

「ねぇねぇお兄ちゃん好きな人できたの?」

これは義姉の彩と義妹の摩耶だ。

「あ、いや、そう言う風に見えたか?」

「うん、なんか何もかもが上の空って感じ」

「気のせいだろ」

「お兄ちゃん、誰もいなかったら私が結婚してあげるね」

「マセガキが、余計なこと言ってないでさっさと食え」

「お兄ちゃんに言われたくないし、もうこっちはガキじゃないよ」


2つの膨らみを両手で持ち上げる


「体は大人だよ?Fカップだよ、お兄ちゃんの隅々をおっぱいでマッサージできるよ?」


おっふ、鼻に米粒入った


「中2のくせに変なこと言ってんじゃねー、ゲホッ」


義姉さんが俺の背中をポンポンと叩く。


「こぉら、摩耶ちゃん変なこと言わないの。雅君大丈夫?」


水をもらうとそれを口にする、食事中に悪い冗談はやめてほしいものだ。


「お兄ちゃんも素直になれば良いのに、私はいつでもOKだよ!」


過剰なブラコンである。


「何がだよ」

「もちろんエッチ!あ、でもやっぱり最初はパ…」

「いわせないわよ!」


義姉さんは摩耶に制裁のチョップをするとイタタタと頭を抑える。


「本当にごめんねこんな義妹で」

「そんなこと言って、お姉ちゃんだってお兄ちゃんのこと狙ってるの知ってるんだからね。こないだだってお兄ちゃんの選択前のシャツの匂い嗅いでニヤニヤしてたでしょ?」

「あわわわわちちちちがうのあれはあれは…」


聞かなかったことにしよう。


「まぁ、嫌われてるよりは全然マシだよ義姉さん」


オーバーキルに対してホ○ミ程度のフォローでも入れながら頭を撫でる。


「雅くーん」


後ろから抱きつかれた。義姉さんの胸がダイレクトに俺の背中に押しつぶされ幸せな感触を味わえるのはウェルカムなんだが鼻息荒くなるのはご勘弁願いたい。


「あの義姉さん、何を嗅いでらっしゃっているんですか?」

「あー幸せ!このまま寝る」

「せめてベッドで寝てください。」

「ううん、雅君と寝るのぉ」


どんだけ寂しがり屋なんだこの女は。だが義姉さんは割と俺のタイプなので抵抗できないのが悔しいところ。断言しておく、摩耶と彩義姉さんに彼氏ができたら結構凹む。俺も十分シスコンらしいがヤンキーらしく黙っておく。


次の日も何もなく授業をこなす、ヤンキーなのに授業を淡々と何事もなく過ごす理由は2つ。1つ目は何か問題を起こしたらまず停学or退学が避けられないということ、そしてある程度の俺の悪評は先公達に知れ渡っているから普段の素行に気をつけろと姉貴から口を酸っぱくして言われた。俺はともかく姉貴に迷惑をかけるわけにはいかない。

2つ目は俺自身勉強が全くできない訳ではないということ。ヤンキーだからたかが知れてると思うだろう。だがその常識を覆してやるよ、今日は数学の小テストだ。昼休みが終わりHRにて小テストの結果が返却される。


「はいみんなー、今回は赤点なしのようね。39点以下は赤点で補習になるから今後も気を抜かずに勉強するようにね」


担任の姉貴がそう言うと次々名前を呼び小テストが返却される。


「今回満点は2人、狭山君と西岡さんのようね。あと後藤君はあとで職員室に来てね」


笑顔が怖い。


HRが終わり職員室にて。


「なんだよ姉貴」

「今は先生と呼びなさい。あなたふざけてるの?」

「なにがだよ、別に赤点取ってないだろ」

「ええそうね、結果は赤点ではないしあなたは本来ならなにも咎められる理由もない。」


俺のテストの結果は75点、クラスで最下位という訳でもないし姉貴にとやかく言われる筋合いはないだろう。しかし1つ問題があったのだ。


「何故この計算問題は白紙でここの1番難しい問題が正解してるのよ。これは狭山君、美夢ちゃん、そして雅の三人だけなのよ。不自然でしょこんなの」


計算問題は全問正解で25点。そう、俺は計算問題全て白紙にしたのだ。


「あなた本当はその気になれば満点取れたでしょう?何故こんなことするのよ」

「目立ちたくねーんだよ」

「今更?あんたみんなから童顔悪魔って言われてるから目立ちたくないもへったくれもないでしょ?それにあなたが満点取れば多少は周りの目も変わるでしょ?」

「いや、カンニングと思われるだけだろ」


人と言うのは見た目、風貌、雰囲気で仕事ができる、頭がいい、運動神経がいいと勝手に決めつける節がある。実際100キロオーバーの男が100メートル走11秒で走れたりみんなからチヤホヤされるような可愛い女の子は実は友達1人もいなかったり、どう見ても見た目もヤンキーな奴が学年主席とかはまずないだろう。これは例えばの話だ。だが、俺も例外ではない。


HRでの出来事である。


赤点なしと言った姉貴の言葉の後に周りの奴らの声がチラホラ聞こえてきた。


「童顔悪魔は赤点じゃねーのかよ」

「後藤君赤点じゃないんだ。」

「そう言えば噂で聞いたんだけど宮崎先生の弟らしいよ。だから点数もおまけしてたりして。」


満点でないのにこの言われっぷりだ。俺が言われる分には構わないが姉貴のことを言われるのは腹立たしい。


「てめぇ」

「まって」


師匠に止められ、そして美夢がその女子に


「斎藤さん、雅はね、ちゃんと狭山君と予習をしてこのテストに挑んでるのだから赤点じゃないのは不思議じゃないよ?だから雅に謝って。」

「なんで私が謝らないといけないわけ?元々そう言う疑いがかけられてるような普段の行いが悪いからじゃないの?」


この嫌味ったらしい女は斎藤若菜、朝のHRで自らクラス委員長になった一応優等生美少女だ。余談だが今回のテストは1問外して95点だった。95点は2人いる、例の問題だろう。


「はいはいストーップ」


言い争いを止めたのは数少ない美夢の友達で中学時代の俺のクラスメート矢井田早苗だ。148cmなぜか胸は美夢より大きい。今回のテスト95点のもう1人


「みーくんは確かに怒ると怖いけど普段は大人しくてめちゃくちゃ優しいよ?まだ入学2日目だし普段の行いもへったくれもないと思うけどなぁ。それに斎藤さんがこれからのみーくんを見て判断すればいいんじゃないかな?それにみーちゃんがみーくんと仲良くしてるからって女子のみんなでみーちゃんハブにしようとか仕掛けた斎藤さんの方が人としてどうかと思うけどなぁ。」


「おいマジかよ」


「女子怖えぇぇ」


ここにいた男子全員がドン引き


中学時代、早苗は俺をみーくん、美夢をみーちゃんと呼んでいた。


「それに知ってるんだよ、みーちゃんとみーくんが仲良くしてるのを見て斎藤さんが昨日みんなにみーちゃんがあーいうのと仲良くしてるのはロクなのがいないから仲良くしないようにしようって。私初日は大人しくしてたけどやっぱり仲の良い友達がなにも知らないのに悪く言われるのは嫌だし許せないよ。」


だからか、早苗は入学初日からほぼ全員と挨拶して仲良くしようって言っていたな。あいつは愛想もいいし見た目もリスのようにマスコット的な可愛さがあるから周りと仲良くなるのは秒だった。それで周りの連中は早苗がうまく丸め込んだわけだ。


「うん、人を見た目で判断するのも悪いかな」


「いくらヤンキーだからって敬遠しすぎてたかも」


周りの声が聞こえてくる、ちなみに俺は黒髪短髪で服装も違反してないけどな。それにヤンキーな行動してたのは中学時代だけなんだがな。どっから漏れたんだよその情報。それはともかく斎藤には軽くブッこんどくか。


「おい斎藤!」

「な、何よ!」

「俺の事はなんとでも言え。だけど美夢には謝れ。またてめーが美夢をいじめるとか余計なことほざいてんならてめぇを潰す。わかったな?」

「ヒイィ!!」


俺の肩を叩いて早苗がジト目で見てくる。

「こらこらみーくんも脅かさないの、それにね、私は斎藤さんとも仲良くしたいなぁ」

「え?」

「この学校クラス替えないみたいだよ。だから3年間一緒なわけじゃん?だから仲良くしよ?」


でた、必殺早苗スマイル。あれは男女問わず早苗に魅了させられるという恐ろしい技だ。あれに耐えられたのは俺ぐらいだろう。彼女が首を少し右に傾けニコッと笑うと斎藤が少し蕩けた顔で


「ひゃ、ひゃい」


そして美夢には


「ごめんなさい、あなたに仲良くしてもらう義理も権利もないけど西岡さんは悪くないのに勝手に邪険にして。」


俺も悪い事一切してないけどな


「いいよ、できれば私も斎藤さんと仲良くなりたいなぁ」

「そんな、いいの?あなたに酷い事しようとしたのに」

「もういいじゃん?今日の敵は明日の友って言うし」


今日の今日だと正確には昨日の敵は今日の友だがな。


「あとさ、若菜ちゃんって呼んでいい?」

「うん、じゃあ私も美夢ちゃんって呼ぶね」

「じゃあ私は若ちゃんって呼ぼう。」

「じゃあ私はさなちゃんって呼ぶ」


仲良し3人組の完成だ。よかったな、これで俺は用済みかな。


「ちょっと!」

「なんだよ?」


まだ文句あんのか?


「あんたは認めないから」

「勝手にしてくれ」

「だーめ、みーくんとも仲良くしなさい」


そう言って俺と斎藤の手を無理矢理握手させる。あれ斎藤の様子がおかしい?


「ちょ、ちょっとはなしてー」


俺も離したいんだが


「だーめー。仲直りするまではダメです。みーくんも若ちゃんを許してあげて」

「はいはいわーったよ」

「私も仲直りするからこれ以上は」


顔真っ赤だぞ、斎藤って男の免疫ねーのか。


「雅、なんか面白いことになってきたね」

「師匠、何ニタニタしてんだよ」


これがさっきのHR直後にあった出来事。


「まぁ、こんな事があったな」

「そう、私を想ってくれるのはいいけど

姉弟だからシスコンもほどほどにしてね。」

「ブラコンが何言ってんだよ」



売り言葉に買い言葉だ。


これが入学初日から2日間までの流れだ。難なく卒業できれば良いがなんとなくめんどくさくなりそうな気がしてならない。どうか無事卒業出来ますように…


そう思い家路につく。




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