20話:では俺も始めよう2
「クソッ!なんで当たらねえんだぁ!」
俺の握っているナイフと同形ナイフによる攻撃を繰り出す俺と同年代くらいの男……盗賊Aとしよう。
まずは手始めにと4人の内、盗賊Aが一人で突っ込んできた。
どうやら盗賊Aは連中の中で一番力量が低いようで、まずは俺の実力を測るための捨て石として当てが割れたようだ。
「……」
盗賊Aの馬鹿正直なナイフ捌き。奴からの殺気が馬鹿みたいに漏れすぎてるのでどこを狙ってるのか丸分かりだ。
戦闘において素人と同じだなと感じた。
その盗賊Aの隙だらけで大振りに繰り出されるナイフの刃を俺は体を逸らし躱す。
そんな俺に自分の攻撃がまったく掠りすらしないことに盗賊Aは苛立ちと焦りを醸し出している。
しかし…躱しながら思う。そんな馬鹿みたいな大振りの攻撃が当たる訳がない。
相手が戦いの素人である商人のような非戦闘員なら当たるかもしれないが、少なくとも今の俺には通じない。
それでも俺からは手を出さず躱しに徹する。躱しつつ他の3人の動向に注意を向けている。
うん。俺の力量を簡単には把握させんよ。
「この!……おわっ!?」
只いい加減この相手は飽きてきたので、相手のナイフ攻撃を躱し足を掛け転倒させる。
間抜けにも顔から地面にぶつけた。痛そうだなアレ。
気にせず他の3人に顔を向ける。
「さて、次は誰?俺の力量を測る目的で一番雑魚のそこに転がった奴を嗾けさせたのは分かってんだ。今度はそこの二人か?いや、4人で来たほうがいいぜ。じゃないと面白くもなんともないからな」
「…ああ、どうやら今ので理解できちまった。テメエはそこらの石っころみてえな雑魚とは違うみてえだ。……ああ、そうだな。こんな時でなんだがテメエに一つ聞いておきたいことがあるんだがよ…」
リーダーらしい男が警戒しつつ、そして盗賊B、と盗賊Cに目で指示を出しつつ俺に質問してくる。盗賊BとCはリーダーの男のアイコンタクトに微かに頷くと行動を開始した。俺を囲う様に動き出す。
転倒させられ顔が泥と擦り傷だらけの盗賊Aも、転倒させられたことに怒り叫ぼうとしたが、盗賊リーダーの細められた目からの威圧に充てられ静まる。そして盗賊AもBとC同様に行動する。
もちろん俺は奴らの思惑を無視し好きにさせた。
俺は既に連中のある程度の力量の把握が済んでいる。
俺の後ろに陣取った先程の盗賊Aの男。こいつは論外だ。一番弱い。正直目を瞑っていても攻撃を捌ける自信が今の俺にはある。気配の殺し方がとにかく下手だ。連中の中では一番若いからなのか、こういった戦闘する場面に立ち会った経験が少ないからか、体の動かし方から武器の扱いも褒められたものではないと言わざる負えない。
俺の左に動く盗賊Bの男。身長は俺より高く堅もよさそうだ。男の手には小さな斧と槍が組み合わさった武器、いわゆるハルバートと呼ばれる武器を持っている。長物の獲物だし間合いに注意だな。
俺の右に位置取る鉢巻をしている盗賊Cの男。武器は俺や盗賊Aと同じナイフのようだ。
少し緊張しているように見えるが隙のない良い構えを敷いているように思う。少なくとも同じナイフを扱う盗賊Aよりは数段上だろう。
左右背後に位置取る3人。それら3人とも近接戦闘用の武器のみを所持しているようだ。”観察眼”によって隠し武器とかを所持していないのを確認できた。
そして、俺の正面の盗賊リーダーの男が刀の様な片刃の剣を構えつつ此方の意識を自分に向けさせる狙いもあるのだろうか質問してきた。
「テメエは、王国が最近この世界とは別の異世界とやらから召喚?だか何だかで呼ばれたガキの一人かなんかか?」
「……」
それを聞いて(なんで一介の盗賊風情がそんなこと知ってんだ?)と不思議に思った。
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