14話:頂き物を物色しよう!
(彼らは一体何者なのだろうか?)
商人の親子は、自分達を襲って来た盗賊を逆に返り討ちにして助けてくれる彼らに対してそう思っていた。
鋭い眼光で緑色の爪みたいなもので盗賊共を引き裂き倒していく、まだ娘より少し上と思われる年齢の茶色の髪をした人間の少年。
そして、その少年と共に盗賊を倒していく2体の魔物。
大きな虎のような姿をしており鋭い牙と爪を持つ黄色い魔獣。大きさは人の掌くらい(翼を広げればもう少し大きく見える)で、三つ目のある蝙蝠型の魔獣。
魔獣は魔物の一種。
そして魔物は人を襲う存在である。
魔物が人間と行動を共にする事など、少なくともこの商人の親子は見た事も聞いた事もなかった。
しかし、今、親子は例外となる存在があるのだと知った。
盗賊を仕留めていく少年と二匹の魔獣は、明らかに、まるで協力しながら戦っているようにしか見えない。
(彼は一体?)
疑問に思う間に最後の一人を緑の爪で彼が止めを刺した。
何者かと言う疑問は残るが、一先ず自分達は盗賊からの脅威から助かったと。
この時親子はそう思い安堵した。
+
最後の逃げようとした盗賊の男をその背から爪で斬り付け倒した。
「ふぅ…これで仕舞いだな。しかし……血生臭いな、俺…」
俺は初めての対人戦を終え、一息ついた後、今の自分の全身をざっと見回した。
いたる所に血液が付着している。
もちろん俺の血じゃない。
今しがた狩りつくした盗賊達を殺した際に付いた盗賊の返り血だ。
魔獣を喰う際の血は特に感じなかったが、こうも人間の生臭く鉄臭い血の匂いには、どうにも嫌悪感が湧いてくる。
『マスター、おつかれ~』
『大丈夫と分かっていますが、主よ、特にお怪我は?』
盗賊狩りを終えファンとキキが寄ってくる。
ファンは『頑張ったしほめて~』と擦り寄るので頭を撫でてやる。嬉しそうだ。
大きな猫の様だ。まあ虎もネコ科だったし。
キキはパタパタと俺の肩に泊まると、俺の無事を確認してくる。
俺が相手の攻撃を受けていないのは、キキも分かっているので俺が無傷であるのは分かっているが念の為に確認をしてくる。
ただ、キキが俺に傷がないか確認してくるのは俺の心配からだけではないと、俺は分かっている。
キキは、おそらく俺に傷がもしあればその傷から俺の血を吸おうとか考えているのだろう。
どんだけ血に飢えてんだと苦笑する。
まあ頑張ったご褒美に少し、ほんの少しだけ右手の親指を噛み血を垂らす。
キキはそれに『はっ!』とご褒美を貰えると肩から飛ぶと俺の親指に吸い付きパタパタと飛びながら血をチューチューと吸う。
満足そうに皮膚がピンクぽくなるキキ。
「あのお…」
俺達に控えめな男の声が掛かる。
声を掛けてきたのは無論商人の親子だ。
どこか緊張したような態度をしている。
おそらく原因はファンとキキの2人だろう。
それはファンもキキも魔物だからだろう。
自分達を助けてくれたのだから害意はないと考えているのだろうが、やはり怖いのだろう。
とりあえずこいつ等は俺の眷属で、俺の許可なく襲うことはないと告げた。
ついでにこの事は誰にも喋るなと脅しつけた。
分かりましたっ!と素直に何度も頷く男。
さてまずはこの親子は一先ず放置にして、先程倒した盗賊共から金目の物や使えそうな物を集めていく。
まあ雑魚だったので正直期待はしていなかったが,、やはりたいした収穫はなかった。
まあいいか。
これからもっと良い収穫があるかもしれないからな。
俺は商人の男に話しかける。
「さて、俺達はアンタらにとって命の恩人だ。そうだよな」
「は、はい。この度はほんとに―」
「なら、アンタらの荷物からいくつか俺に渡して貰うぞ」
「えっ、私達の荷物から、ですか?」
「ああ、命を救ってやった代償とでも思えばいい。安いもんだろ?それとも、このまま俺に全部奪われる方がいいか?」
奪われる。つまり此方の提案を拒めばこのまま死んでもらうよ、とそう言われたと自覚する商人の男と娘。
「そうだ、聞き忘れていたんだが、お前らの積み荷って何だ?いくつか欲しい物はあるが、できれば服とかもあればいいんだけど?」
親子は御互いの顔を見る。
「えっと、この荷の中にはいくつかの衣服もありますが……」
「その、多くは女性物です、けど…」
「男物も少しはあるってことだな。ああ、あと女物が多いのは好都合だ」
俺の言葉に「えっ?」と声を漏らす2人。
なんか変なことを、俺が着るとか想像でもしてんだろうか?
有り得ない。
とりあえず、ニコッと凄みのある笑みを向ける。
その俺の笑みを見て商人の親子は背筋がゾクッと震えるのだった。
荷台の中に入る。
物色は俺達だけでいいと、あと決して中を見るなと警告し親子は閉め出す。
親子はなぜ魔獣も一緒に入っていくのだろうかと疑問に思った。
親子を締め出したのも、ファンとキキを一緒に入らせたのも、二人の今後着る服を探すためだ。
もちろん着せるのは人間に変化した時に着るものだ。
つまり二人を俺のSkillで”人間化”させることになる。
当然だが、人間化した場合の2人は全裸だ。
人目にさせるわけがない。
荷物を物色し服の入ったは大きめの箱を見つけた。
さらにもう一つ見つけた。
後に見つけた箱は最初に見つけた箱より小さめだ。
小さい方の箱には男物の服が入っていた。
大きめの方には女物の服が入っていた。
種類もあり選べそうだ。
さてっと、選ぶ前に2人に俺のSkill”擬人化”を掛ける。
その効果でファンは小柄の金髪美少女も、キキが長身のクールな印象を醸し出す美女に変態する。
「わぁい!人間になれた~マスター♪~」
「はう…、見ないでください、主ィ~」
人間化するとファンは感無量に笑みで俺に抱き着き、キキは顔を真っ赤にし羞恥していた。
とりあえず抱き着いてきたファンを離れてもらおう。
「えぇい、ファン、離れろ!」
「なんで~ムフぅ~♪」
全裸で抱き着かれるなんて俺の理性のライフをゼロにし掛けない。
「今はそんなことをしてる場合じゃないだろッ?ほら自分の着れそうな服があるか見てこい!」
「むぅ……マスターはファンが服を着ているほうが好き?」
「ああ、当然だ。着飾る女は魅力的だろうな」
「わかったー!それじゃ探してみるねぇ。キキも一緒にさがそー♪」
「わ、わかり…ました…(わ、私より小柄なのに、なんだこの大きな胸はっ!?)」
「?どうしたの?(わあ、やっぱりキキは背もあってカッコイイなぁ)」
「い、いえ、何でもないです…。で、では主…そのあまりこちらを見ないでくださいね」
「ああ、いいからさっさと探せ」
俺はすでに目ぼしい服を物色している。
そして仲良さそうにきゃっ、きゃっと選ぶファンとキキ。
元気な妹としっかり者の姉の様な気がした。
その頃。
外で待つ商人の親子はハラハラとしつつ彼らが出てくるのを待っていたのだが、何故か荷台の中から彼以外の人間の女性の声が聞こえてくるのはどうしてだろう?と不思議に思っていた。
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