7話:初体験は唐突に…
”擬人化”のSkill効果で今俺の目の前にはファンが人の姿になって立っている。
まあ、魔獣が服なんて着てるわけないのだから当然今のファンは全裸だ。
うん。美少女だなと上の髪から足の先まで眺めてそう思った。
うん。正直まさか!ってくらいの美少女だ。
今までこんなに綺麗な女の子を見たことがないってくらいだ。
うん、今、俺真っ赤になってるだろう。
苛められたり虐げられたり身勝手に追い出されたり理不尽な目に遭ったり血の涙を流すほど悔しさを覚えたりトラモドキに殺されかけ死闘の果てに色々価値観や自分の内面に関して壊れた俺だが、女性の裸身を見る事なんて、昔に母親と一緒に入っていた時以来だと思う。
いや、まあ、正直俺はこんな機会はもうないと思っていた。
だって嫌われ者のボッチの俺に好意を向ける物好きな女はいない。
……1人だけいた気がしたが、まあ気にする事ももうないだろう。
だからだろう。不思議そうに人間に変化した自分の体を眺めたり、ぺたぺたと触っている目の前のファンに目を背けることも忘れ御視してしまう。
足の膝くらいはある長い艶のある金髪もしくは黄色の髪。顔立は幼さがあるが目を奪われるくらいの魅力があった。
身長は150cmくらいだろうか。ファンの身長は俺の胸の上くらいなので、俺の身長が…トラモドキを喰った際に少し成長したのか170cmくらいだからそれくらいと推察した。
スタイルも抜群だと思う。
小柄に似合わずの大きな胸、括れのある腰つき、すらっとした手足。
うん。美少女万歳!である。
なんだか凄いSkillを得てしまった気がする。
そう思っていると自分の体を興味深く確認していたファンと俺の目が合う。
ん?なんでだろうか、ファンが俺と目が合った瞬間俯きなんだかフルフルと体を震わせ始めた。
なんだ?今頃男に裸身を見られた羞恥を感じて叫んだりするつもりか!と構えた俺だったが、次の瞬間、ファンが顔をばっと上げると嬉しさ全開と言った表情のまま俺に飛び掛かってきた。
いきなりだった為、俺は飛び掛かってきたファンに驚いた為に支える事も出来ずファンごと倒れこむ。
「なんだっ、おい、ファン!?」
「はふぅ♪マスター、マスター、マスターァ♪」
「ま、まて…!?」
裸のまま、俺の胸にファンの巨乳が当たる感触に戸惑い、と言うか全身の柔らかさにどうにかなりそうだった俺に、ファンは追い打ちの様に顔を俺の胸に横に擦り合わせる様に抱き付いてくる。
一体全体どうなってるんだっ!?
取り敢えずファンの俺を呼び方は”マスター”なんだなと思うくらいしか余裕がなかった。
+
しばらくして少し落ち着いたファンに話しかける。
因みにファンは俺にしがみ付いたままだ。
上目使いで俺を好意的な嬉しさのある瞳を向けてくる。頬が興奮から赤くなっている。
全裸だが元動物故にか恥ずかしいとは思っていない様だ。
「とりあえず、まず確認だが…ファン、で間違いない、んだよな?」
「そうだよ♪ファンはファンだよ。マスターが付けてくれた大切な名前、ファンだよ♪はふぅ~マスター~カッコいい♪」
うん。滅茶苦茶好かれてるな。キラキラした目をあまり向けないでほしい。
俺の残り少ない理性と言うライフがゼロになっちまうだろうが。
「ああ、ファン?とりあえず俺の上からどいてくれないか?なんていうか話しにくいだろ?」
「うぅ~、マスターはファンが嫌いなの?因みにファンはマスターが大好きですよぉ~」
「それは、俺も…好きだとは思うが…」
「わあ!マスターがファンを好きって言ってくれた♪」
「だぁ!だから抱き付くなぁ!」
「むふぅ~♪」
余計なことを言ったな。
ここまで好意的に接してくるファンに正直嬉しさ30戸惑い70と言った感じで、とにかく戸惑っている。
人化したファンは子供のような無邪気さがある気がする。
言動も幼さがある。けど体は成熟している。困った。
一先ず戻せるなら人化から魔獣形態に戻す方が俺の理性的にもいい、と、そうしようと思ったのだが、どうやらファンは「ムッ!」と俺が試用としている事に感づいたのか、抱き付いていたファンは俺の肩を押して倒れこむ。
どうやら人化してもステータス等は変化しないようだ。
今の俺のステータスはまだファンに敵わない。しかもどうやら”主への忠誠愛”も発動しているのか抵抗できない。
「おい、ファンなんの真似だ、これは?動けないんだが?」
「むぅ~、マスター、ファンを元に戻そうとしたでしょ?ダメだよ、せっかくこうしてマスターと同じ人になれたんだからぁ。ファンにはしたいことがあるの!」
「…ファンのしたいこと?」
「うん!ファンね、マスターとひとつになりたいのっ!」
「……一つに?……それって…あれか?」
一つにって、あれか、合体するって意味か?
「うん!ファンはマスターと契を結びたいの❤」
「いや、待て待て…いいから待て、もう一回言うぞ、待てっ!」
「むう、もう待てないの!ファン、さっきから疼いて仕方ないの!ファンは雌でマスターは雄、しかもマスターは優れた雄なの、優秀な雄の匂いにファンの雌の部分が欲しがって仕方ないの❤…だから―――大丈夫!ファンも初めてだから!」
「いや、初めてとかどう…でも良くないけど、待てって………アあ~!」
この日、異世界にて男としての初めてを奪われた俺だった。
初体験の多い日だった…
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