第74話 やってくれますね。
体育館に整列して入場していく卒業生生徒。体育館内では先生や在校生そして保護者達が待っていた。俺はその列の中でまだ緊張というものはなかったけれどこれで最後なのかあと感慨深く歩いていた。
そして席までたどり着くと先生の合図によって全員が席へと座る。
みんなが揃ったところでまずは始まる卒業式授与式。みんなが見守る中、クラス毎一人一人名前を呼ばれ卒業証書を授与していく。
そして遂に呼ばれる俺。
「はい」
名前を呼ばれると俺は大きく返事をして校長の元まで歩いていく。すると先程まで殆どなかったのだけれど次第に感じてくる緊張、胸の鼓動。
「……以下同文」
証書を全ては読まれないが名前と内容の一部のみ読まれ校長先生から渡される卒業証書。この高校に来て多くの良い思い出があるかと言われるとそんなことはないのだけれど、それでも高校を卒業できたという喜びはやはり感じるわけで。
そんな気持ちを抱えたまま俺は卒業証書を受け取ると校長先生に頭を下げ中央の階段から降りていった。
すると
「ソウくんおめでとう。かっこよかったよぉぉーー」
と静かな体育館に響く声。え? コウさん叫んじゃったの? 俺は思わず顔を上げて声がしたほうを思わず見てしまう。
「ソウくんこっちこっち」
と手を振って俺にここにいるよとアピールするコウさん。いや……なにやってんの? 流石に両親も居るし俺は安心していたんだけど。歯止めを期待していた両親はその横で恥ずかしそうにしており「やっちまったかあ」って今にも言いそうな感じになっていた。
そして聞こえるみんなの笑い声。なにやってんの? と呆れている人もいた。まあそうだろう。普通叫ぶ人なんていないよね。
ほんとにほんとにごめんなさい。俺が甘くございましたよ。
そして俺は先生方の方を見る。けれど不思議なことに先生方はあまり動じてなかった。まあ呆れた顔をしていたけれど。もしかしてコウさんに先生方も慣れたのかなと困惑しながらも俺は席へと戻っていく。
俺は席に座ると同時に思わず「ほんとコウさんやっちまったなあ」と頭を抱えてしまう。するといつの間にかに担任が俺の元までやって来て「はぁ……あの人は最後までやってくれたね。申し訳ないけど教室でのホームルームではおとなしくしていて欲しいと伝えておいて」と一言釘を差されてしまった。
まあコウさんのハプニングはあったもののその後は何事もなく卒業証書授与終わることができた。
しかし次は校長の長い話、祝辞と祝福の言葉なのは分かっていてもどうにも退屈で俺も卒業式の残りは眠そうに目をこすって眠りと戦うのみとなっていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます