第70話 コウさんが離れていた理由
朝起きると今日は珍しくコウさんが横に居なかった。俺はベッドから出てダイニングへと行ってみた。するとコウさんはなぜかダイニングにあるテーブルで寝ていた。とりあえずここで寝ていたら風邪を引くかもと考え
「コウさん、こんなところで寝てたら風邪引くよ? 」
そう声をかけた。するとコウさんは
「え? ここどこ? あっソウくん。ソウくん居るなら良いや」
と寝ぼけているのかそんな事を言いながらもまた眠りに入ろうとする。しょうがないなあと思いながら
「コウさん起きないとソウくん居なくなるよ? 」
とコウさんの耳元で囁くと
「え? それだめ! ってあれ? ソウくん」
今度はそう言って飛び起きたコウさん。ほんとこんなところがかわいすぎるんだよなあ。
「もう朝だよ。それにこんなところで寝てたら駄目だよ」
俺はコウさんに再度そう伝えた。
「あっよかった。ソウくんーー」
そう言って抱きついてくるコウさん。そんなに嫌だったのかと申し訳なく思い
「ごめんね。ちゃんと側にいるから。起こしても起きなかったからってちょっと意地悪なこと言っちゃったね」
と俺が謝ると
「ううん、居るなら良いの」
そう泣きそうな声でそう言った後、周りを見渡して
「あっ私こんなところで寝てたんだ。ごめんね。私こそ変なところで寝ちゃって」
やっと自分がどこで寝ていたのか気付いたようで俺にそう言葉を返してくれたのだった。
「で……なんでこんなところで寝てたの? 」
そう、普通なら俺から離れないコウさんがここでひとり寝ていたのが不思議だったので聞いてみた。
「ああ、仕事があるからあまり時間がとれなくて昨日の夜に頑張ってチョコ作ってたの。ソウくんにあげるんだから頑張んないとと思って……作り終わって片付けした後、多分安心したんだろうね。いつの間にか寝ちゃってたみたい」
ここで寝ていた理由は俺にチョコを作ってくれていたかららしい。ほんと仕事も忙しいんだから無理しなくていいのにと思いながらもその気持ちが嬉しくて
「コウさん、ありがとうね。でも無理はしちゃ駄目だよ。チョコよりもコウさんのほうが大事なんだから。体壊しちゃったら意味ないよ」
お礼とともに体には気をつけてほしいとそう伝えたのだった。
ちなみにそのチョコは「まだ見せないよお」と言って冷蔵庫に隠しているようだった。こそっと見ることは出来るかもしれないけれどそんなことはせずもらうまでのお楽しみとしておいた。
さて、今はもう2月に入っており俺の家の改築も完了して俺の家族とコウさんみんなでこちらに移住していた。そしてコウさんは借りていた家の契約も解除しこの家で同居していた。
改築の内容はリビングの拡大と古くなったところの修繕そして俺とコウさんの部屋やコウさんの衣装部屋の追加といったところだ。
コウさんももう俺の家族とは慣れたものでいつものコウさんのままだ。まあ最初からそこまで気を使っている様子はあまりなかったので安心はしていたけれど。
まあ、そんなバレンタインも近い時期になっていたのでコウさんは俺のためにチョコを作ってくれていたというわけだ。ただ、俺はバレンタインのことなんてまったく気にもしていなかったのだが。というのも母さんからしかもらったことがないわけでいつもは気にしても仕方のない日でしかなかったのだから。
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