第68話 参拝の言葉。
ふたりで神社へお参り。コウさんは部屋に戻って着物を探していた。女優だといろいろと持っているのかななんて思っているとコウさんは着物をいくつか持ってきて
「ソウくんどれが良い? ソウくんシンプルなのが好きそうだからこの辺持ってきたけど」
と数着の着物を俺に見せてきた。はっきりいって俺が見てもよくわからないというのが本音。それでもコウさんに似合いそうだと俺が思った白地に赤い柄の入った物を選んでみた。
「これね。じゃ着てくるよ」
とひとり寝室へと入っていく。そんなコウさんを見て女優さんはスタイリストがいてその人らに頼んで着せてもらっているものだと思っていたので、ひとりで着付けできるのかとちょっと驚いてしまった。
しばらくして出てきたコウさん。
コウさんはやっぱり邪魔にならない色や柄がいいなと俺は思った。だから俺は素直に
「コウさん綺麗だね」
と呟いていた。それを聞いたコウさんは俺の方から先に褒め言葉をもらうと思っていなかったのか顔をカーっと真っ赤にし
「まさか見てすぐに褒めてもらえるとは思ってなかったよ。急に言われると照れるね」
と俺に告げたのだった。
俺は着物を着ず普段着でコウさんと一緒に近所の神社へと向かった。近くといっても数分は歩くわけで、ふたり歩いていれば同じ様に神社に向かっているのだろう人たちがコウさんに見惚れている様子が見れたりした。
「コウさんに見惚れている人結構いるね」
「うーん。見られるのは慣れてるから良いけどね。私としては見惚れてもらうのはソウくんだけでいいんだから。ソウくんも気にせず行こうよ」
そう言ってコウさんは俺の手を繋ぎ引っ張ってくる。コウさん着物なんだからそんなにはしゃいでいると転けるよ? 気をつけてね。
目的地に着けば流石に元旦。小さい神社ながらも人が結構集まっていた。そして数店だけれど露店まで出ていた。
「へえ、久しぶりに来たけどここでも露店は出てるんだなあ」
「なんかくじ引き、紐を引っ張るやつあるね」
そんな事を言いながら俺たちは参拝をしようと手を清めた後神前へと向かった。
そしてふたりお賽銭を賽銭箱に入れ俺たちはお参りをする。
俺は鈴を鳴らした後「いつまでもコウさんと一緒に居られますように」とお参り。そうして事が終わった後コウさんを見てみるとなぜかまだお参りをしておらず考え事をしていた。
「コウさんどうしたの? 」
俺がそう聞くと
「どういう言葉でお参りしようか悩んでたの」
とコウさんは呟いた。どういう言葉? と俺は考えていると
「だって一生じゃ死んだら一緒に居られないし、生前も死んだとしてもあの世に行ったとしてもソウくんの側にいたいって神様に伝えられる言葉ってなんだろうって考えてた」
コウさんどこまで考えてるの? と思ってしまうもこれがコウさんだし、その気持ちは俺にとってとても嬉しいものであって。だから
「どんな言葉でもいいと思うよ。コウさんがそう思っていればきっと神様にも通じるはずだから。言葉だけじゃなく心もきっと分かってくれるさ。俺も同じ気持ちだからさ」
そうコウさんに伝えると
「そうだね。言葉だけじゃなく心の思いも一緒に伝えるよ。ありがとう、ソウくん」
そう言ってお参りを開始したコウさん。そんな様子のコウさんを見てしまうと俺はやっぱりコウさんかわいいなあと思わずにはいられないのだった。
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