第66話 別にイベントなんて
時は過ぎ今日はクリスマスイブ。と言ってもコウさんには仕事が入っているのでなにかをするということは特になかったりする。そして俺は2学期も終わり冬休みに入ってて、残りの学校生活は月1回の登校日と卒業式だけだった。そうもうすぐ学校生活も終わりを告げるのだった。
だから俺は殆どの時間を仮マネージャーとしてコウさんと共に行動していた。そして今はそんな仕事の休憩時間。休憩室でふたりのんびりとしていた。
「クリスマスはソウくんとゆっくり過ごしたかったのに」
コウさんはちょっとふてくされたような顔をしてそんな事を言う。
「まあ仕事だしね。でも、別に俺はクリスマスだからって特別なことしなくてもいいと思ってるよ」
と俺が言うと
「え? 一緒に食事したりとか景色の良いところ行ったりとかしたくない? 」
コウさんはなんでと俺を不思議そうに見ながら尋ねてくる。
「ん? だって俺たちいつも一緒だろ? 別にイベントに頼らなくたってふたりでしたいことはやろうと思えばいつでも出来るだろ。それに世間で言うイベントなんて関係なくてさ。大げさかもしれないけどコウさんと一緒にいるだけで毎日がイベントなんだよ」
俺がそう言うと
「そっかあ。たしかにそうだね。年に数回のイベントなんて関係ないかあ。ふたり一緒に居られる、それだけで確かにイベントになるもんね。大切な人といること……うん。素敵だなあ」
コウさんはさっきまでのふてくされた顔を戻し嬉しそうな顔になってくれた。
「あんたたち。なにふたりでのろけてるの? ほんと飽きないわね。さっそろそろ出番らしいから。幸は準備して」
そんなふたりの会話に如月社長が呆れた顔をして割り込んでくる。コウさんの出番らしい。
「ならコウさん行っといで。俺はもう少ししたらちゃんと見に行くから」
「はーい。打ち合わせとかあるからね。仕方ないか。先に行っとくね」
コウさんはそう言って俺の頬にキスを落として撮影現場へと向かっていった。
「創くん、どう? 少しは慣れた? 」
如月社長が俺に尋ねてきた。
「ええ、まだまだわからないことだらけですけどね」
俺は素直にそう答えた。
「そんなに簡単に理解できたら苦労しないわよ。幸でも自分の仕事が理解できるから自分である程度できていただけよ。それに菊池さんも付いてたから。創くんは幸の仕事についてはまだ良くわからないでしょ? 仕方ないのよ」
と如月社長は優しくそう言ってくれる。けれど
「だけどやっぱりコウさんを早く支えられるようになりたいですからね。もっと頑張らないと」
俺は納得せず頑張ると如月社長にそう告げた。
「ほんとふたりは仲が良いわよね。不思議だわ。しばらくは女性とは知らない状態で交流していたわけだし。おまけに交流期間は長いのかもしれないけれど初めて会ったのは半年くらい前ですものね」
と如月社長は不思議がる。まあ普通ならそう感じたりするんだろうなあって思う。俺だってこんな短期間に婚約までするなんて当初は考えていなかったわけだし。
「俺もよくわからないですね。でも言えることはコウさんは俺にとって大切な人だった、まあそういうことだったということですね」
俺はそんなことをしばらく如月社長と話をした後
「さて……そろそろコウさんを見学しに行きましょうか。早く行かないとコウさんの機嫌が悪くなるんで」
と俺が言うと
「ほんと創くんがいないと何もできなくなってるわね、あの娘は」
と如月社長は呆れながらも俺と一緒に撮影現場へと向かったのだった。
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