第63話 会見宣言。



 準備が終わったコウさんも休憩室にやって来て、後は会見が始まるまで待つだけという状態だった。




「幸。あなたちゃんと話す内容覚えてる? 」


 如月社長が少し心配なのかコウさんにそう尋ねると


「婚約しました! と婚約者と話し合った結果、婚約者のしたいことをしてほしいという希望と私自身女優を続ける意志があり引退を撤回し続けることにしましたってことで良いんだよね? 」


 とコウさんは婚約だけ強く言いながら如月社長の問いに答えてきた。そんなコウさんに


「なんで婚約しました! だけ元気なのかしらね」


 と如月社長は呆れながらそう告げていた。そんな如月社長に


「だって私にはそれが一番大事なことだから」


 とコウさんは俺をチラチラ見ながらそう答えたのだった。




「まあ間違ってないから良いわ。失敗しないように頑張ってね」


 と如月社長はコウさんにそう言うと


「了解。分かりましたよっ」


 と言いながら俺にくっついてくるコウさん。


「コウさん、くっつくのは良いんだけどせっかくの衣装にシワが付くよ? 」


 だから俺は衣装の心配もありそう伝えるけれど


「衣装よりソウくん成分を取らないと。この会見、絶対に失敗しないようにしないと駄目だからね」


 と気にすることもなくそんな事を言ってきた。まあ落ち着くなら良いのかなと俺は如月社長を確認すると、呆れた顔をしながらも無言で頷いてくれたのでコウさんがしたいようにさせることにしたのだった。






 さて私、坂梨 幸は今会見会場に1人向かっている。会場では私と社長で会見を行う予定。引退会見の時と同じ形だね。ただ側でソウくんが見守ってくれていることが前回とは違うかな? 


 でもまさかこんな形でまた会見を開くとは思っていなかった。当初は引退してソウくんを追っかけ回して私を見てくれるように頑張ろうなんて思っていた私。それが……婚約して、ソウくんがマネージャーになってまで側に居てくれるって言ってくれたし。女優業も続けてほしいって言われたし。ほんとこうなるとは思っていなかったよ。


 私ができることをたくさんしていこうって思っていたけれど、ソウくんも負けないくらい私にたくさんをくれた。


 本当に幸せだなあって思える最近の日々。


 ソウくんありがとう。行ってきます。しっかり宣言してくるね。


 会見会場に入ると一斉に証明が私を照らし出す。そんな中社長が司会として記者たちに話を行っていた。私は私用に用意された席まで行きすっと座る。よし、後は社長の合図で宣言するだけだ。


 珍しくドキドキしている私がいた。引退会見のときもそこまで緊張していなかったのにと不思議に思う。そして私はちらっと横を見る。するとソウくんも会場に入って私のことを見守ってくれていた。


 ソウくん、ちゃんと宣言するから見ててね。


 私は社長の合図で宣言を開始する。みんなちゃんと聞いてね。大事な人と一緒に入られる喜びあげるから。



「私、坂梨 幸はこの度婚約いたしました。相手はCMに一緒に出演した人です。また彼のために引退をして側にいようと考えていましたが、彼との話し合いの中、彼が女優業を止めることはないと私を説得してくれたこと、そして私自身も女優業を続ける意思があることから引退を撤回させて頂きます。坂梨 幸、これからも女優を続けます! みなさんご迷惑をかけましたがこれからも宜しくおねがいします! 」



 私はなぜか左手を上げそう宣言していたのだった。

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