第62話 会見前。



 そう言えば俺はマネージャーとして活動するなら車の免許も必要ということで自動車学校へも通い出した。通うのは平日の夜に学校が終わってから。


 ちなみにコウさんは自動車学校にまで着いてきていた。「人が集まるから家で待っていて」と言っても聞いてくれなかったコウさん。おかげで自動車学校でVIPルーム付きとなってしまう。「こちらとしても来ないでもらいたい」と自動車学校の教員に言われるも「お客を選ぶんですか? 」と詰め寄るコウさん。そんなわけでコウさんが言いくるめて勝ち取った場所でもあった。


 そんな中「私も習いに来てたなあ」なんて口にするコウさん。免許を取りに行ったのは女優になってからだと言っていた。その教習所も大変だっただろうなと俺はその時の様子を想像し同情してしまうのだった。




 そんな慌ただしい日々を送っているとついにやってきたコウさんの会見。婚約発表に女優継続と大きな話題が2つもあり結構大変な会見になりそうだなあと思いながら俺は会見会場の休憩室にいた。なぜこんなところにいるかというと今日は休日、というより休日に合わせて会見を開いていたからだ。俺は仮マネージャーとしてのお供。ちなみに菊池さんもちゃんと居る。慌ただしい会見前にボディガードがいないなんて考えられないからね。


 休憩室には如月社長と俺、菊池さんがいた。なお、コウさんは準備のため席を外している。


「俺……今日はいなくても良かったんじゃないかなあなんて思うんだけどなあ。することってなにもないですよね? 」


 俺はそんなことをポツリと漏らす。すると如月さん、いや如月社長が


「そんなこと幸が許すわけ無いでしょ? ちなみに大事な会見だから創くんが側にいないと嫌だって言って聞かなかったんだから」


 と如月社長は少し不機嫌に愚痴をこぼした。


「まあ仕方ないんでしょうね。婚約した……いやこれはあんまり関係ないですかね。ただ、幸さんは創くんとセットで行動を考えないとなにもしなくなりそうなのが……それが後々怖いです」


 その言葉に菊池さんは反応してそうこぼす。


「そう言われると俺……マネージャーになるってことでよかったんですかね? 」


 と俺はふたりの愚痴にちょっと困った感じになりそう言うと


「そりゃ良いわよ。幸が戻ってきてくれる。これだけで十分なんだから。それにね、今後の幸のわがままって創くんのことばかりになるだろうから絞れて楽っていうのもあるのよね」


「確かに。創くんだけに絞れるなら楽でいいですね」


 とふたりは笑いながらそう言った。


「コウさん今までどんな事してきたんだろう。なんだか先が怖く感じますよ」


 と俺が困惑した顔で言うと


「大丈夫よ。創くんは幸を止められる唯一の人だからね」


 そうウインクしながら如月社長はそう告げたところでいきなり休憩室のドアが開いた。




「ソウくんどう? 似合う? 」


 ドアを開けて入ってきたのはコウさん。第一声は挨拶とかではなく似合う? であった。


「ああ……似合うけど、みんなに挨拶は? 」


 と俺が言うと


「あっごめんなさい。みなさんおはようございます。今日はよろしくね」


 と元気いっぱいで言うコウさん。


「ほんと大丈夫かしらね……この娘」


「なんとかなるんじゃないですかね? 」


 と如月社長と菊池さんは呆れながらそう言葉をつぶやくのだった。

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