第60話 初めて。




 笑いが収まった後、如月さんが


「おめでとう、幸。誕生日プレゼント良いものもらったわね。それとこれで引退撤回会見の準備もできたわよ。いい事尽くめで良かったわね」


 とコウさんに告げた。


「あっもしかして引退撤回と合わせて婚約会見もするってこと? 」


 とコウさんは気付いたようで。如月さんも


「そういうこと。婚約してから話し合いをしたところ積み上げたものを捨てないで続けてほしいという旦那さんの気持ちと自分の気持ちを考え女優を続けることにした。という感じね」


 と同意して答えた。それを聞いてコウさんは


「そっかあ。婚約会見……みんなに宣言できるのね。やった」


 ニヤニヤしながらそう言うのだった。




 そうそうコウさんも俺にプレゼントを用意しているけど後でねと言っていた。人前では渡せないものなのかな? と気になるけれどとりあえずそれは置いておくことにした。

 誕生日会は明日の事もあるため遅くまではできないけれど、みんなで食事をしながらわいわいと時間を過ごしたのだった。


 22時も回ったので片付け等は明日することにしこの会を終わることにして、ここで解散ということにした。俺はまだコウさんと共にいるため居残りだけれど。


 みんなは帰り際に俺とコウさんにそれぞれ言葉を残していってくれた。

 両親は「創、頑張ったな。幸さんを幸せにしろよ」「幸さん、創をよろしくおねがいします」等誕生日のことより婚約についての言葉を。

 如月さんと菊池さんは「幸、おめでとう。でもまだまだすることがあるからね。明日から会見準備よ、頑張って」「創くんとはこれから仕事でも会うことになるだろう。これからよろしくな」と今後のことについての言葉をもらうことになった。




 さて、みんなが帰り静けさが漂う空間となった。そんな中に俺とコウさんふたりソファに並んで座っていた。


「ソウくんありがとう。今までで一番幸せな日だったかもしれないよ」


 コウさんは俺に幸せそうな顔でそう言った。


「ほんと緊張してたんだよ、俺。コウさんにもし断られようものなら……とかさ。コウさんは受け入れてくれるって信じていてもさ」


 と俺はプロポーズの言葉を告げる時の緊張について語ってしまう。


「私が断るわけないじゃない。ソウくん好き好き人間なのに」


 と笑いながら俺に言い返す。


「そう言えばさ。最初に会ったときより言葉遣いが女性らしくなってきていない? 」 


 と俺は気付いたことを尋ねてみた。


「たしかにそうかも。もっと男っぽい話し方してたね、私。でもこれもソウくんと一緒にいるからじゃないかな? ソウくんに女性として今は見てもらいたいって気持ちあるから。隠している時とは違ってね」


 とコウさんが言ってきたので


「俺はどんなコウさんも好きだから……無理はしないでよ。そのままでいいんだから」


 と俺はそのままで居てほしいと伝えていた。


「うん、ありがとう」


 コウさんは少し顔を赤くしながらそう言った。




「そうそう、ソウくんへのプレゼントだけどいろいろと悩んだんだよね。でもさ、身に着けるものって学校あるからずっと着けたままじゃいられないよね? キーホルダーなんかも考えたけどなんだかなあって思ってね」


 コウさんがいろいろと俺のために考えてくれていたことを話してくれる。


「で、思いついたことがあって」


 そう言いながらコウさんは俺に飛びついてきた。俺はいきなりだったのでびっくりして


「コウさんどうした? 」


 と尋ねてしまう。そんな俺を見ながらコウさんは


「私達まだしてなかったよね。だからさ、私の初めて受け取って」

 

 そう言いながら俺にキスをした。そう俺はコウさんとキスをしているんだって……




 しばらくの後コウさんから唇を離す。


「ごめんね。これが一番かなあって。一生モノだよ? 私のファーストキス。ソウくんは彼女居たしそうなのかはわかんないけどさ」


 と俺がファーストキスじゃないかもと考えついたのか少し不機嫌になる。でも


「コウさん、俺もファーストキスなんだよ。前の彼女とは手を繋いだことしかなかったんだ。だからそんなに拗ねないでよ」


 と俺が言うと、機嫌を取り戻したのか


「やった。ソウくんもファーストキスなんだね。はぁ嬉しい……あっそうだ。今日から一緒に寝ようね。やっと近くにいるのに近づけない時間がなくなると思うと嬉しいよ」


 とコウさんは俺に言う。というかさっきも的外れ的に言っていたけれどコウさん俺とそんなに寝たかったのかとちょっと呆れてしまいそうになるがそこまで思ってくれることはとても嬉しいので


「わかったよ。今日から一緒に寝るよ。ただし寝るだけだよ」


 と俺は一応念を押しておくのだった。

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