第53話 撮影の後。



 ひとまず撮影の終了を伝えられた俺たちは休憩の場所として用意してあるバンに乗って時間を過ごしていた。というのも撮影した内容のチェックが完了するまで待たないといけなかったからだ。映像的に足りない部分があればもう一度撮影する必要があるということらしい。とりあえず一時間程度待ってほしいとのことで。


「ソウくんお疲れ様。初めての撮影なのによくできたと思うよ? 」


 とコウさんは言ってくれるけれど別になにかしたわけでもなくコウさんとデートしてたようなものだったし……だから俺は


「いや、ただコウさんと遊んでただけだよね? 」


 と返事すると、コウさんは違うというような素振りをして


「ううん。初めてだと緊張したりしてなかなか撮影が進まなかったりするんだよ。そういう点では文句なしだったから」


 そんな事を言った。そして如月さんも


「そうね。初めての撮影って周りも結構気を使うのよ。相手を緊張をどうやってほぐそうかとか。今回はそういう心配はまったくなかったから安心してみてたわ。幸もついてたしね。でもほとんどデートだったわよね、あなた達。見てて面白かったわ」


 と言ってきた。にしても面白かったですか……まあ無事に済んでよかったとは思うけれどね。




 そんな会話の中俺はコウさんにひとつ聞いてみたいことがあったのでここで聞いてみることにした。


「コウさん。撮影って楽しい? 芸能関係の仕事って楽しい? 」


 俺がそう聞くと


「ソウくんどうしたの? もしかして私がソウくんのために引退するからって気にしてるの? 」


 とコウさんは心配そうに聞いてきた。


「いやそういうんじゃなくてコウさんは今までしていた仕事についてどう思っているのかなあって思ってね。俺のこととは関係なく。今日見ててもなんというかコウさんの空気が少し違うような気もしたし。楽しそうだったし。だからちょっと聞いてみたくてね」


「うーん。今日の撮影はソウくんがいたから楽しかったってのが一番だけど……それとは別にと考えるならね。嫌いじゃないよ。好きか嫌いかと聞かれれば好きなんだろうな。多分何もなかったら続けていたかもしれないなって思えるからね。でもソウくんと比較したら辞めちゃうね、やっぱり。一番はソウくんと居ることだから」


 とコウさんはそう俺に微笑みながら答えてくれた。


 その言葉を聞いた俺は決心がついたとそう思った。俺が存在しないなら続けていたんだなと好きなんだと分かったから。




 まあそんな話をしながら3人で時間を過ごし結果まで時間をゆったりと過ごした。結局、映像チェックで問題ないとわかり撮影は終了ということになる。それを聞いて俺はほんとに一安心。


「ソウくんよかったね。一発OKだよ」


「ああ……安心したよ。また撮影にならなくてよかったよ」


 と俺がいうと


「え? 私と遊ぶの嫌? 」


 なんてコウさんがそんな事を言ってくるので俺は


「それは好きだよ。ただ撮影はもう良いよ、ほんとに」


 と俺はもうこりごりだと両手を上げて降参ポーズを取ったのだった。



 

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