第54話 お買い物。
CM撮影という大きな出来事は終わりを告げ、とりあえずはいつもの生活へと戻った。バイトして、帰ってはコウさんと一緒に過ごすという日々。けれどそんな繰り返しでも毎日コウさんと過ごしてはその度に幸せを感じている俺がいた。
今、俺はバイトをコウさんに内緒で休んでおり如月さんに相談をして終えて帰宅しているところだ。ちなみに俺はその中途にコウさんの誕生日プレゼントを買いに行こうと思っている。実際、本当のプレゼントは別にあるわけだけどそれは誕生日には渡せないのでコウさんの誕生日に渡せる小物も用意したいなと考えていた。
さて、お金もそんなにあるわけではないので大きなお店にはいかず商店街にある装飾店にでも寄っていこうと思っていた。
「いらっしゃい……って入江さんのとこの子か? どうした? 」
お店に入ると、店員さんのおじさんが声をかけてきた。この店には入ったことなかったんだけどなあなんて思いながら
「こんにちは。よくわかりましたね。こういうお店に俺自体は全く縁はなかったんですが」
と言うと
「この商店街に入江さんの奥さん知らない人なんていないんじゃないかね? あの人面白いからなあ。まあ、そんな奥さんの息子のこと知らない人も少ないんじゃないか? 少し前はよく一緒に商店街来てただろ。それに……ほら。ニュースにも出てたしある意味君は有名人だからな」
なんて言葉を返してきた。ああ……母さんだけかと思っていたけどコウさんの影響もあるのかと俺は思いながら
「ははは。都合が良い反面、悪いことはできないですね」
と俺が言うと店員のおじさんも笑っていた。
とりあえず俺は店を見回してみると、目立つところには高そうなきれいな装飾品が並んでいた。まあ、流石にあんなのには手が出ないなあと思っていると
「うん? やっぱりなにか探し物かい? 」
と再度聞かれたので
「はい。彼女の誕生日にプレゼントをしようと思って」
と俺は答えた。すると
「もしかして彼女って幸さんかい? 」
と興味津々に聞いてきた。
「ええ……そうです。ってなんでそんなに興味津々なんですか? 」
と俺はちょっと引き気味にそう言った。すると店員のおじさんは
「そりゃうちの店のものをつけてもらえるんだろ? そりゃ興味津々にもなるよ」
と告げてきた。確かに芸能人に店のものを付けてもらうっていうのは宣伝効果もきっとあって大きいことなんだろうなと俺はそう考えた。
「まあ大したお金持ってないので安いものになりますがね」
と俺がいうと
「なら安いものなら……このあたりはどうだ? 」
とお手頃な装飾品あたりを教えてくれた。俺はそのあたりを眺めながら思う。シンプルなものが欲しいと。石のついたものは俺は好まなかった。飾りが派手なものも嫌だった。なんていうのかコウさんにはシンプルなものが似合うと俺は思っていた。他の飾りは邪魔になる気がして。コウさんらしさを消すものはいらないと。
そんな中ひとつの指輪を見つけた。唯のリングのようにみえるけれど薄い数本の線で何かを描かれたような感じのもの。
「これがいいですね」
俺はすぐにそれが気に入ってしまう。値段的にも持っているお金で買えるものだった。
「ほう、シンプルなものを選んだな。でも確かにあの人には派手なものはいらないかもな。逆に邪魔になりそうな気がするよ。さすが彼氏ってところかな? 」
なんて事を言ってくれた。俺はそんな言葉に照れながらもそれを購入することにした。
そして俺はそれ以外の装飾品も確認した後、店員のおじさんと話をしてお店を出たのだった。
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