第47話 ふたりで。
如月さんが帰った後も俺達はリビングに残ったままだった。
「ソウくんほんとにいいの? 」
コウさんはとても心配しているようで……もしかすると自分のせいなんて思っているのかもしれない。
「まあ、何回もこんな事あると困るから今回限りってことにしてって如月さんには伝えたし。それにね、今回のことはコウさんだけじゃなく俺の問題でもあると思うんだ。俺のためにコウさんが決心して引退まで決めたわけで。そう、今回の件はコウさんひとりの問題じゃないから。ふたりの問題だよ。だから気にしないの。それにコウさんが笑ってないと俺も嫌だよ。だからもう気にするんじゃなくてさ。ふたりでここ乗り切って幸せになろう」
俺はコウさんに思ったことを素直に告げる。するとコウさんもいつまでもくよくよしてちゃいけないと思ったのか
「うん、そうだね。落ちこんでても仕方ないから。ふたりの問題……うん、ふたりで乗り切っていこうね」
そう俺に答えてくれたのだった。
「そうそう、コウさんの誕生日って8月31日でいいんだよね? 」
俺は前々から聞きたかったことを尋ねてみた。はっきりこの日でいいのかわからなくて。プロフィールって嘘を書いてることもあるって聞いたことあるからなあと。
「うん。その日で間違いないよ? ソウくんは9月の10日。ちゃんと覚えてる。でも急にどうしたの? 」
「いや彼女の誕生日くらいちゃんと知っていないとねと思って。プレゼントとかも考えないとと思ったし」
「はははっプレゼントなんていらないよ。ただソウくんがそばに居てくれたらそれでいいって」
コウさんは本当に俺が居れば良いと言ってくれる。だから余計に俺が俺としてできることがなにかをここ最近考えるようになった。学生だしお金を持っているわけでもなく大した事が出来ない俺なりに。
そして今ひとつ考えていることがあった。ただ、それにはいろいろとすることがあるんだけれど。
「いや、とりあえずね。コウさんになにかしたいと考えているから夏休みにはバイトをしようと思ってるんだ。ああ、コウさんが仕事をしている間しかしないよ。バイトでコウさんと一緒の時間がないとかにはしないから。まあ何をするかは内緒ってことで」
自分のことでバイトをすると聞いてすこしぶすっとしたコウさんだったが、それでも一緒にいる時間は減らさないと聞いたことで少し機嫌は戻るけれど
「そんなことしなくていいのに。それなら一緒に居てくれるだけでいいんだよ。それが私にとって一番のプレゼントなんだから」
と言ってくれるコウさんはやっぱり温かいなとそう思った。
今回のCMの件があったせいか
「ひとつ終わったらまたひとつとなにか起こるよね。静かにしておいてほしいんだけどなあ」
コウさんはそんな事を言う。確かに何も起こらずただずっと幸せで居られるならばそれが良いんだろうけど
「ほんとだね。まあ、ひとつひとつふたりで歩いていこうよ。ふたりでだったらどんなことでも乗り切れるはずだよ」
俺はコウさんの頭をなでて宥めるようにそんなことを伝えるのだった。
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