第40話 新居にて。
扉の鍵を開け新居へと入ってみる。引っ越したばかりというのもあり、ぽっかりと空いたスペースが目立つ。やっぱり一人暮らしの家財ではそんなものだろうなと思いながら部屋を見回る。空き部屋もあるなと思っていだけれどそこは服置き場にするとのこと。クローゼットに入れるより楽でいいとコウさんは言っていた。やはり女優、服はたくさん持っているようだ。
とりあえずリビングと寝室はしっかりと準備していた。あとおまけで俺の部屋が……しかし、俺の部屋に棚や机がなぜ用意してあると不思議に思っていたらコウさんは別に気にすることもなく「買っておいた」と軽く言う。そこまでしなくていいと思ったが「将来を考えればあっても問題ないよ」なんて言うものだから……こちらとしては照れるしかない。そこまでもう考えているのかと。
俺達ふたりは一回りした後リビングのソファにふたり座る。
「とりあえず住むには問題なさそうだね」
俺がそう言うと
「まあ服を置く場所と寝る場所があれば良いからね。それ以外の時間は仕事かソウくんと居る時間になるだろうし」
なんてコウさんは言ってくる。
「でもたまにはひとりの時間も居るんじゃないの? 」
と聞いてみると
「うーん、台本読みとかはひとりでやることになるのかなあ。ソウくんの邪魔になるだろうしなあ。その他は別に必要ないし、それよりもひとりよりソウくんと居たいしなあ」
コウさんはそう言って俺をチラチラと見てくる。もう……
「そうだね。俺もコウさんと居たいから。なんなら台本読みも手伝えるなら手伝っていいから。下手くそだろうけどね」
そう言い返してあげるとコウさんは俺に寄りかかり肩に頭を乗せてきた。
「幸せだなあ」
「うん、そうだね」
俺達ふたりはそう呟いた後しばらく静かに幸せな時間を満喫するのだった。
「そうそう、私楽しみにしていることあるんだけど」
とコウさんが唐突に言ってきた。
「ん? なに? 」
と聞き返すと
「ほら、この間ソウくんの学校で文化祭がもうすぐ? あるって言ってたよね。ソウくんのクラスはなにするの? 」
ああ、そう言えば話したなと俺は
「こないだ話し合いをして喫茶店をするらしいよ。俺は聞いているだけだったからなあ」
と他人事のように俺は言った。
「ということはソウくんなにか衣装着るの? 執事? もしかしてメイドとか? 」
執事はわかるけど俺にメイド服着せても逃げられるだけだろ? とか思いながらも
「んなの着ないよ。俺は裏方」
と答えた。
「そっかぁ。ちょっと残念。そそっあとさ。ソウくんの休憩時間はあるの? ないと一緒に回れないよ? 」
とコウさんはもう来る気満々。
「俺の裏方担当時間は午前中一杯の予定。だから午後からなら回れるよ? でも大丈夫かな? 」
「なにが? 」
「そりゃコウさん来たら騒ぎ起こるでしょ? 」
と俺は懸念していることを言った。
「一応変装? らしいものを来ていくけどどうなるかはわかんないかなあ」
とコウさんは答えた。まあねえ……バレるときはバレるか。それに俺と一緒にいればまさかと見に来る人も居るだろうしなあ。そんな事を思いながら
「なにを着てくるの? 」
と俺は変装衣装が気になったので聞いてみるが
「内緒。当日のお楽しみだよ」
なんてコウさんは笑いながら誤魔化すのだった。
「あっそれとさ。コウさんに聞き忘れてたんだけど俺の取材に来た記者さん達。コウさん通して話を持ってきてって俺言ったじゃない。なにか言ってきた? 」
と忘れていたことをコウさんに尋ねてみた。
「ああ、気にしなくていいよ。ほったらかしにしている」
なんてコウさんは笑って言う。いやまた学校に押しかけられても困るって。
「いや学校にまた押しかけられてもさぁ」
と懸念していることを話すと
「ああ、それはしないように事務所から「一般人に迷惑を掛ける行為はしないでください」って申し出てる。まあ抑えが効かなくなったらまた考えるからそれまでは気にしなくていいよ」
そう言って微笑むコウさん。
「そんなめんどくさいことは忘れて……ふたり楽しむことを考えよう。話そう」
幸せそうな顔で俺に言うコウさん。
まあそうだね。せっかく引っ越しできた新しい生活の始まりだし。ふたりの事を考えようか俺もそう思うのだった。
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