第39話 なかなか勝てないのかなあ。
それからは俺にはもともと話しかけてくるクラスの人は殆ど居なかったし、周りの追及で修羅場になったことやそれ以降高梨が口を開かずひとりで過ごすようになったことからそちらの話については徐々に収まっていった。
けれど俺が別の意味で大変になったのは言う必要もないわけで。クラスの人達から話しかけられることはなくても他のクラスや後輩たちから顔が知られていくにつれて声をかけられたり追いかけられたりすることが増えていった。
ということで俺はそれをなんとかかいくぐることに精一杯な学校生活を送ることになっていた。
その原因となったコウさんは2度に渡って迎えに来た日以降学校には来ていない。なぜかというとコウさんはどうも仕事を早く切り上げていたようで、ポロッと漏らしたコウさんに「如月さんに迷惑かけないようにしてね」と仕事をきちんとしてもらうよう俺がお願いしたからだ。しぶしぶコウさんは言うことを聞いてくれたようで頑張ってくれている。
そういえば、数日前コウさんと俺の母さんで借家を見に行ってきたようで確認した後即契約をしてきた。コウさんの望みは「俺の家から近いこと」が重要であってそこまで家にこだわっていなかったらしい。それを聞いた俺は「それでいいのかコウさんよ」と思わずにはいられない。
あと引っ越しについては業者に全て任せたらしい。することは殆ど無いそうだ。このあたりは俺にはよくわからないけれど、ダンボールに詰めたりといろいろ作業がありそうで手伝いに行かないといけないなと思っていた俺はそこまでしてくれるなんて引っ越し屋さんって便利なんだなあと感心していたのだった。
また、コウさんは最近自分の家に帰っていない。
なぜかというと行ったり来たりのコウさんの生活を気にしていた父さんは引っ越しの作業で散らかっていることもあるだろうと「引っ越しが終わるまで泊まっていきなさい」と軽くコウさんに伝えれば、コウさんも「遠慮なく泊まらせていただきます」と軽く答えていた。なんというか父さんとコウさんの関係うまく行き過ぎてない? とも思える光景を作りだし、俺と母さんを蚊帳の外でそんなことを決めていた2人を見て俺達は苦笑するしかなかったのだった。
さて、コウさんが泊まれば寝る部屋は同じなわけで。
最近は当たり前のように朝にはコウさんはベッドから抜け出て俺の布団に入ってきている。もう親にもこの事はバレていて母さんから「もう最初からベッドで寝たら良いのに」なんてからかわれてしまう。
でも流石にね? まだ早いよと俺が拒み続けているわけだけど、結果的に寝ているわけでなんとも言い難い今の状況。
だからか母さんの言葉に「もう一緒でもいいですよね? 」と確認していたりするコウさん。
その光景がコウさんらしくとても微笑ましく見えてしまうのは俺も家族もコウさんに感化されていっているのかもしれないなあなんて思ってしまっていた。
さて、引っ越し業者の作業終了の翌日に俺とコウさんは朝から家を一緒に見に行くことにしていた。
俺はどんな家かは見ていないので少し楽しみにして一緒に向かっていた。そんな中コウさんは
「数年前に建てたばかりらしいから綺麗だったよ。そうそう、ちゃんとソウくんの部屋も一応用意してるよ。まあ、泊まるとすれば別の部屋になんか寝かすつもりはないんだけど」
なんてことを言ってきた。まあ……最初からではなくとも一緒に寝ているからなあとすぐに諦めの入った俺は今後コウさんにはなかなか勝てないのかなあとそんなことを思ってしまうのだった。
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