第38話 チョロイン。



 先生に声をかけられたコウさんは「仕方ないなあ」と渋る感じで仕方なく俺を離した。コウさん顔に出過ぎだって……

 先生は離れたのを確認した後「少し待ってくれ」と一言残し、廊下の方へ向かい廊下の生徒へ


「お前らうるさい、用がないならさっさと帰れ」


 と生徒を追い返していた。




 話はそう大した事ではなかった。俺が職員室に呼ばれたのはコウさんが来ていたからというのが理由らしかった。ただ、今後コウさんが俺を迎えに来るときは校門で待つのではなく職員室で待ってほしいとお願いされた。理由は……人だかりができて騒ぎになり、校門の場合だと学校内だけでは騒ぎが済まなくなるかもしれないからとのこと。

 それとできるだけ姿を隠してほしいとも言われた。でもこちらはコウさんは断った。なぜか? と言うとこれから俺とともに居るのに自由にできないのは嫌だと、それに俺の近所に住むわけで隠してもしょうがないという理由だ。流石に服装まで矯正できない先生は「わかった」と諦めてしまった。


 最後に先生はコウさんに「入江を迎えに来る以外にこちらの行事やら参加する予定がありますか? 」と聞いてきた。そう言えば来月文化祭の予定だと俺はコウさんに言うと


「ソウくんが見れたりデートできたりするなら必ず来ますね」


 とすぐさま答えたため先生は仕方ないと「わかりました……そのかわり騒ぎが起きないように気をつけてくださいね」とこれが精一杯という感じで一言言うのだった。




 話が終われば後は帰るだけ。でもそう簡単にはいかないわけで、集まっていた生徒を俺が掻き分けてコウさんはあとに続く。

 みんな暇だなあと俺は思ってしまうけれどコウさんは「これが当たり前。なんだかもう慣れちゃった」なんて言うものだから芸能人は大変なんだなあと再確認してしまった。


 そしてなんとか抜け出すことに成功しやっと帰れると校門を出て車に向かう。

 着いた車の中では帰路につきながら今日あったことをコウさんに話した。するとコウさんは


「確かに別れ話が無くならなくてよかったけれど、なんで浮気の話をはっきりさせなかったの? ソウくんがしたことだと思われるのは私としても嫌だったのに」


 なんて言ってくるので


「俺としては彼女を完全に追いつめても意味ないし相手にするのももう面倒くさい。まあ、今時点でも彼女結構参ってる様子だったけど。それに他の人がどう思おうとコウさんだけが分かってくれたらそれだけでいいんだよ」


 と俺が伝えると


「そう? 私……私だけね? 私だけかあ……うん、わかったよ」


 ところっと変わったコウさん、ちょっとチョロインになってるよ? と言った後に思ってしまう俺であった。




 それと渡すものがあったんだと


「コウさんこれ渡しとくよ。誰も居なくて入れないと困るだろうし」


 うちの家の合鍵を渡すというか車にある物置? のところに置いておいた。母さんに頼んで作ってもらっておいたものだ。


「え? これソウくんの家の鍵? いいの? 両親の方とかは大丈夫なの? 」


 と聞いてきたので


「大丈夫だよ。俺の恋人だから心配いらないねって軽くOKもらったよ」


 ときちんと確認していることも伝えておいた。すると


「はははっ嬉しいね。なんだか愛の巣もらったって感じだよ」


 なんて言うものだから、その言葉に俺は顔を真赤にするしかないのであった。

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