第34話 こんなところであれだけど。



 先生でもやっぱり人間だと思ってしまう。俺とコウさんへの説教が終わった後、多くの先生が人が変わったように「サイン下さい」とコウさんに集まっていく構図を見てしまうと。

 そんな中サインをしても良いか確認を取りたいコウさんは俺を見つめてきたので、流石に今回は先生方に迷惑をかけてしまったと負い目もあるため「こくん」と頷き了承したのだった。普段なら仕事以外では見世物にしたくないからそんな事させたくないんだけれどねぇ。仕方ない……


 その後やっと帰れるとふたり車に向かい家へと帰宅する中


「ほんとにコウさんやりすぎだよ」


 俺は車の中でコウさんに思わずそんな事を口にした。コウさんの行動にも驚いたが……それよりもあれだけ人が集まるとは思わなかった。コウさんがまったく見えなくなっていたもんなと思っていると


「だって仕方ないだろ? ソウくんにあんな噂たてられたら黙っていられないって」


 そう言い返してくるコウさん。たしかに騒ぎになったけれど俺を思ってしてくれたことだと言われてしまえば俺はもう何も言い返せない。


「はぁわかった。俺のためにだったもんな。うん、コウさんありがとう……だけど明日学校どうなるやらだな……まあコウさんのことで寄ってくる人はスルーでいいか」


 と俺がいうと


「もしかすると明日にでも学校の出来事がニュースになるかもしれないよ。最近はさ、スマホで録画できるでしょ? 多分撮ってる人いただろうから……まあスマホの録画じゃソウくんの顔わからないだろうし良いでしょ? 」


 と怖いことを言ってくる。うわ……学校だけじゃ済まないのかと俺は頭を抱えてしまう。ほんと顔がバレていないことを祈るのみだ。


「でもそれならコウさんも大変じゃないの? 」


 俺がそう言うと


「私はなんとかなるから気にしない」


 と気楽そうに俺にそう返事する。そんなコウさんを眺めながら


「はぁ……コウさんと居るとイベントばかりだな」


 俺がそう口にすると


「こんなコウさんは嫌かい? 」


 コウさんは心配そうに聞いてきた。

 んな馬鹿なと俺は思う。大変な部分は確かにないとは言わないけれどそんな事でコウさんのことを嫌いになるわけはない。だから


「コウさんはコウさん、こんなコウさんを嫌いになんてならないよ」


 と返すとコウさんは嬉しそうに微笑んでくれた。




 そして


「こんなところであれだけどさ、コウさん。俺コウさんのこと好きだから。俺のことを大事にしてくれるそんなコウさん大好きだから。これからずっと一緒に居て下さい。俺と付き合って下さい」


 俺はそう伝え終わった後窓の外の方へと顔を向けて照れを隠した。コウさんの方はまさか今言われるとは思っていなかったらしく運転をしながらも顔を真赤にしていた。

 無言のままのふたり、しばらくしてコウさんから


「あ……ありがとう。場所なんてどこでも良いよ。私にとってソウくんから言葉をもらえたことが一番大切で嬉しいことだから。こちらこそよろしくおねがいします。ずっと……」


 そう伝えられた後さすがにコウさんもまた黙ってしまった。




 その後は俺の家へと帰り着くまで双方無言のうえ顔を真赤にしていたのだった。

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