第33話 コウさんやってやりました。



「今はまずいって何かあったの? 」


 こんな現状でも周りを気にせずコウさん強すぎだろ。そう思いながらも


「んー。今ね、彼女じゃなくて俺の方が浮気したって噂が立てられてるんだよ。だから別れた後すぐにこんな状態をみんなに見られたら信憑性が増すよね? 」


 と聞かれたことに答える俺。それを聞いたコウさんは


「なんでそんな事になってんのよ。ソウくんがそんな事するわけないじゃない? この学校の人達見る目ないなあ。なら……よし」


 そう言った後なぜか気合を入れているように見えるコウさん。それを見た俺は一体なにをしでかすのか不安で仕方ないのだった。




 コウさんはいきなり


「みなさん、私が誰か知ってますか? 幸です。坂梨 幸です」


 と大きな声で叫びだした。どこまでも届きそうな響く声で。その声を聞いて周りの生徒は「やっぱり……」「綺麗だな」「なんであいつに抱きついてたんだ」等いろんな事を言いながら騒ぎ出す。

 

 俺は……驚きと困惑で固まったままなんだが……それを他所にコウさんは続ける。


「えーお静かに。今私の横にいるのは入江 創くんと言ってこちらの生徒です。その彼の事なんですが学校内で彼が浮気をしたと噂が立っていると聞きました。ですが、彼は浮気などしていません。それは私が証明します。今日、創くんは彼女と別れたと聞いています。そして別れた原因は彼ではなく相手の浮気です。はっきり言います。相手の浮気です」


  え? そこまで言っちゃうの? と俺は焦る。思わず俺はクラスの方を見た。そこには顔色を青くした彼女が見える。俺としてはわざわざ言うつもりはなかったがこうなったら仕方ない。実際、周りが彼女を信じるかコウさんを信じるかなんてそんな事は俺にわからないし。


 そう思うことにして俺は再度コウさんを見つめた。




「それで数日前に落ち込んでいた彼を癒やした後、私が以前から抱いていた思いを持って彼に告白をしました。そう私が会見でも話した想い人は彼のことです。さて、返事は彼女と別れた後貰う予定でしたので今日きちんと返事を貰う予定です。なのでみなさんソウくんには手を出さないでくださいね」


 そう言うと、一呼吸入れた後また俺に抱きついてきて


「絶対渡しませんから」


 再度そう叫ぶのだった。


 


 その後、盛大な騒ぎになりそうなところに先生たちがやって来て人払いをすることになる。そして俺とコウさんは職員室へと呼ばれ説教を受けるのだが……

 それよりも俺、明日から大丈夫かな? と浮気の噂よりもコウさんとの噂が立つ心配のほうが大きくはぁとため息が止まらない。


 コウさんの気持ちが嬉しかったことに変わりないのだが……コウさんやりすぎだよと思わないでもないのだった。

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