第32話 コウさんって……そうだったな。
俺は教室に戻りながらコウさんへとメッセージを送ることにした。「無事に別れることが出来たよ」と。
するとコウさんからすぐに「嬉しい。わかったよ。今日は何時頃帰ってくる? 」なんて返事が返ってくる。コウさんも仕事中だろうによく見れたなと思うも「学校終わりは16時頃だと思うから16時半には家に帰り着くと思うよ」と再度送っておいた。家までは15分くらいで着くからこれで問題ないだろうと。
その後はコウさんも忙しいのからだろう返事は来なかったけれど大丈夫だろうと俺は教室へとさっさと戻るのだった。
後に思う。俺はコウさんを甘く見ていたなと。
噂のお陰かクラスメイトの視線はたしかに痛ったけれど、その後は帰りのホームルームまで特に何の問題もなく終わった。
さて、俺の席は窓際の後ろの方でホームルームが終われば帰れるとぼーっと先生の話を聞きながら窓の外を見ていたわけなんだが、校門を見ていると誰かが待っているようで。それも見たことのある人が。
姿を隠すこと無くそこで待っていたのは……コウさんでした。家で待っているんじゃないのかよと俺は焦ってしまうのだけれどコウさんの方はお気楽に俺の学校を興味深く眺めているようだった。
俺のクラスより早く終わった学校の生徒達はコウさんを見かけては立ち止まってまじまじと見ているようで。いや見るよな……普通。なにしてるんだか、コウさん。どんどん人が増えているんじゃないの? とこっちが心配してしまうよ。
教室にいる生徒も気付いたのだろうか少しざわついてきたようにも感じてしまう。
いや、そんなことより俺はとにかくホームルームが終わり次第ダッシュでコウさんの元まで向かおうと思うのだった。
俺は終わり次第鞄を持って周りも気にせず校門まで走っていく。先生に「走るなよ! 」と呼びかけられるのもお構いなしで。そんなこと言ってられないと。
靴箱で靴の踵を踏みながらも履いてコウさんの元へと向かう。その頃には人だかりができてコウさんが見えないくらいになっている。その間をかき分けて校門にたどり着くと俺が気づくその前にいきなりコウさんが俺に抱きついてきた。
待て待て、ここ人前だってと思う俺を気にもせずに。
「ソウくん、これでもう私だけの愛しい人だね。嬉しいな」
そう言いながらしっかりと俺を抱きしめるコウさん。嬉しい反面、こんな人だかりの中で抱きしめられるとまずいって。そう思いながら
「コウさんなんでここにいるの? おかげで人集まってるじゃない」
とコウさんに問いかける。すると
「そんなこと言ったって嬉しすぎてメッセージきた後は仕事になんないしソウくんの家で待つのももどかしいし迎えに来たんだから」
と周りを気にせず俺に告げてきた。
そうか……そうですか。コウさんって猪突猛進、こんな人だったわと少し諦めが入る俺。仕方ないなと思いながら
「とりあえずコウさん離して。今はちょっとまずいんだよ」
とコウさんに伝え離してもらうのだった。
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