第28話 眠るまでのお話。



 みんなで食事後、風呂やら何やら済ませたわけだけど、俺の家の勝手がわからないコウさんには母さんがいろいろと教えてくれていた。俺も女性に任せたほうが良いだろうと思って放っておいたんだが、そんな中ふたりからたまに聞こえてくるのが俺の話題。母さん、変なことを言わないでくれよと思うも俺は我慢して部屋で待っていることにした。

 なお、コウさんの寝間着はみすぼらしいかもしれないけれど伸縮面やらを考えるとこれが一番いいかなと俺のジャージを貸していた。


 コウさんが上がると俺もすぐに風呂に入ったのだが、コウさんが入った後なんて考えるとなんでこんなに恥ずかしい感じがするんだよと頭から雑念を払いながら体や頭を洗ってさっさと上がるしかなかったのだった。


 風呂から上がってからはのんびりタイム。ふたりくっついて話をした。ちなみになぜくっついているのかというとコウさんが離れないから。風呂上がりのコウさんはとても綺麗で恥ずかしい俺なのだけれど離してくれないので諦めたわけです。はい。


 まず引越し先は母さんと予定を合わせて不動産屋に行くことで解決できそうだ。引退後の活動については月曜日に社長と話をすることになっているらしい。そう考えると慌てることって俺が浮気彼女と別れることが重要事項のようだった。


「俺も月曜日にきちんと話してくるから……コウさん待ってて」


 と俺が言うと


「大丈夫。別れようと別れまいと離れるつもりもないし」


 なんてコウさんは笑いながら返してくる。その気持ちは嬉しいけれど


「そう言ってくれるのは嬉しいけれどここはきちんとしないとね。コウさんのためにも俺のためにも……だね」


 と俺はそう伝えるのだった。




 その後はお互いの話をした。主にコウさんの事になってしまったが。

 コウさんの歳は現在20歳、今年21になるとのこと。俺の3つ上だった。コウさんが高校3年の時に俺と知り合ったということらしい。俺はその時中学3年だったなあと思い出す。


 俺は現在17歳の高校3年生。まだ18歳になっていない未成年。そして大学受験をするつもりがないのでそこまで慌てていないお気楽学生。

 なぜ大学に行かないかというと大学にまで行ってしたいことがなかったからでそれならバリバリ働いたほうが良いなと考えていた。両親は「大学に行っておいたら? 」と言ってくれたけれど目的のない生活なんて意味あるのかと考えるとどうしても行きたい気がしなかったんだ。


 コウさんの両親はコウさんが高校に入ったばかりの頃事故で亡くなったということだった。言いにくい話だったなとコウさんに謝ったけれど、コウさんは俺になら何を話しても問題ないから気にしないでと逆に微笑んで気を使われてしまった。


 それから親戚内で押し付け合いの上ある親戚のところで生活をすることになったんだけどいろいろあってあまり良い生活は出来なかったらしい。なお、内容を話すと話が長くなるからと詳細までは聞いていない。俺もコウさんが話したくなったときにでも聞かせてもらえばいいと思っているし無理に聞くことはしなかった。


 コウさんは高校卒業後に早く親戚の家から出たいと考えていたため、大学には行かず事務の仕事を初めてお金を貯めていた。まあ……簡単に貯まるわけもなく1年以上仕事を続けていたらしい。その仕事をしている時に如月さんからスカウトを受けたということだ。


 そして俺の発言もありスカウトを受け芸能界に入ることになったその時を見計らって親戚の方と縁を切ったらしい。その時はひとりでは大変だろうと如月さんも手伝ってくれたそうだ。


 そんな状態なので一応、許可の必要な人は居ないから俺との将来は問題ないとコウさんは胸を張って言っているんだけれど……俺まだ未成年だから待っててねと言葉を返しておいた。

 まあ「待っててね」と俺が言ったがためにコウさんは「いくらでも待つよ」と喜び勇んでいたわけですが……何についてここまで喜んだかは今は考えないことにした。


 まあ、そんな話の中でコウさんもいろいろと大変な思いをしてきたんだなあと知ることが出来たわけで……これも父さんのお陰なんだなと心の中で「父さんありがとう」と呟いておいた。


 さて、そんな話をしていると23時を回ったくらいの時間になったのでふたり寝ることにする。


 俺は下に布団、コウさんはベッドだ。さすがに両親がいるからか一緒に寝ようとまでは言わなかったから少し安心した俺。けれどベッドから手を伸ばしてきたコウさん。


「手を繋いでくれるかな? 」


 そう言ってくるコウさんを断れる俺ではないわけでしっかりと手を繋ぎ


「うん、わかったよ。コウさんおやすみ」


「ソウくんおやすみ」


 ふたりおやすみの言葉を交わして眠りにつくのだった。

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