第27話 引っ越し先はどうするの?



 服屋のおばちゃんには黙っててもらうようにお願いをし店を出た。「内緒なのね。わかったわ。おばさんに任せなさい!」なんて言っていたが、人の口に戸は立てられぬともいうしまあ無理だろうと諦めながらも帰宅することにした。


 他に買い物が必要かわからないのでコウさんに聞いてみると「化粧とか他は持ち歩いてるから問題ないよ」とのことなので早速家に帰ることに。


「そういえばコウさんって化粧しているの? 見た目わかんないし、匂いもほとんどしないような気がするけど」


 と俺は気になったので聞いてみた。


「ああ、化粧水とかファンデーションとリップくらいかな? まあこれもソウくんの影響だけどね」


 とコウさんは言ってきた。え? これも俺の影響と首を傾げていると


「ソウくん言ってたじゃない? 化粧の濃い人は苦手だって。電車に乗ってたりすると化粧臭い人が居ると気持ち悪くなるんだって。それに化粧をせずに素顔でいる人が好きとも言ってたね。そのままを見せてくれる人がいいってさ。化粧落としたら別人とか耐えられないって。だから私も最低限にしているんだよ」


 そう笑いながらコウさんは言っていた。それを聞いて……コウさん俺の言ったことほんとよく覚えているなあって関心するとともに俺の事を考えて行動するコウさんにさらに好感を持ってしまうのだった。


 コウさん宅を出たのが15時過ぎてたし、着いて俺の両親とも話をしたりと時間を使っていたからだろう。家に帰り着く頃には空が闇へと染まるように暗くなってきていた。コウさんは行きがけと同じ様に腕を組んでいたから問題ないかとそのまま歩いて帰路へと着いた。




 帰り着くと母さんが出迎えと共に「夕食の準備ができてるから」と教えてくれた。俺達は洗面所に行き、ふたり手を洗った後ダイニングへと向かい俺の両親と俺、コウさん4人で夕食をいただくことになった。


 父さんは夕食時はいつもビールを飲んでいる。だからか


「幸さんはいくつだっけ? 20歳は過ぎてたはずだよな。一緒に飲まないか? 」


 とコウさんを誘っている。コウさんがお酒を飲めるかわからない俺はコウさんを確認するとコクンと頷いて


「はい、あまり飲めませんがお付き合いさせていただきます」


 と缶ビールを貰い、父さんと乾杯をしごくごくと飲んでいた。


「創にはまだ早いから我慢な? 」


 と冗談半分に父さんはからかってくるが


「わかってるってば。というかそれが美味しいのかさえわかんないのに欲しいとかまだ思えないって」


 と俺はさらっと断った。




 しばらく食べて喋って飲んでと時間を過ごしていたが、何を思ったか


「そういえば、幸さんはどんなところに引っ越ししたいの? 」


 と母さんがコウさんに尋ねた。


「えーと、とにかくこちらの家に近いところですね。あとできたら一軒家が良いかなと思ってます。アパートやマンションだと周りの心配があるかなと思ってますので」


 とコウさんは答えた。確かに女優ということもあり、人の多いところはあまり良くないかなと思ったので一軒家が良いのかなとは確かに思った。それに俺の家が近いと何かあったときにすぐに俺も助けに行けるしなと。


「だったら、家から近くの隣3件目くらいだったかしら? 転勤で家を残して引っ越した人が居たわよ? 帰ってくるまで人に貸しておこうかしらって言ってたから、住むにはうってつけかもしれないわね。まだ誰も住んでいなかったと思うし、家の作りとかそのあたりは幸さんが確認しないといけないでしょう……今度一緒に不動産に行って確認してみる? 」


 と母さんが提案してきた。というかよくそんな情報知ってるな……母さんよ。


「母さんはほろほろと何も考えず人について行くからなあ。情報網は結構あるぞ」


 と父さんが言うと


「止めて下さい。ほろほろなんて。なんだか私が天然さんみたいじゃない? 」


 と母さんは言い返していたけれど……いやそのとおりだと思う俺と父さんは目を合わせてそして思わず笑ってしまった。


「お義母さん……よろしければお願いしてよろしいですか? 私にとってソウくんの自宅から一番近いことが重要ですから」


 そう言って母さんにお願いするコウさん。



そんな話をみんなでする中


「ソウくんもだけど家族の皆さんも温かいね。ほんと幸せすぎてとても心地よい気分だよ」


 そう俺の耳元でささやく幸せそうなコウさんがいたのだった。

 

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