第22話 帰宅する前にやりたいこと。



 母さんとの電話も終わり何をして良いかわからない俺。それは仕方ないというものでここはコウさん宅。自分の家ではないわけで家主が居ない家で何が出来る? と俺はソファに座りテレビをまた眺めぼーっとしているしか無かった。引退会見ももう見なくていいくらい何度も流れているばかり。見たいテレビもない俺に眠気が襲ってくるのは仕方ないわけでいつの間にか眠ってしまうのだった。




 自然と目が覚めた俺。今回は朝のように慌てること無くここはコウさんの宅だと理解できた。ただ朝とは違う肩に掛かる重さはなんだろうと確かめてみるとそれは俺の肩に頭を乗せて横で眠るコウさんだった。

 寝ているうちに帰ってきてたんだと思うも今日は大変だっただろうし起こしちゃ悪いなと俺は動かないようにしてコウさんのしばらく顔を眺めていたのだった。



 そうしているうちにいつの間にか時刻は15時くらい。そろそろ俺も家に帰らないといけないなあと考えているところにもぞもぞと動いて起きる気配がしたところでコウさんは目を開ける。


「ソウくんおはよう」


「コウさんおはよう」


 そうふたりで挨拶を交わす。今回はコウさんは寝ぼけなかったようだ。


「やっぱり良いね。起きてすぐに挨拶できる人がいるって」


 そう言って笑うコウさんはとても綺麗で……そんなコウさんを見ているとなぜか俺の方が照れてしまう気がして話を逸らそうと


「コウさん、そろそろ俺も家に帰らないとかなあ」


 と帰宅したいとコウさんに告げた。


「あっそうだね。ソウくんの両親も待っているだろうし。遅くなってごめんね」


「いやコウさんが今日は忙しかったことはわかってるし両親もわかってるはずだし問題ないよ」


「それなら良いけどね。あっソウくん、両親に会うにあたってどんな服を着ていったら良いかな? 」


 そう言うコウさん。いや……別になんでもいいよと思ってしまうが


「コウさんなら何でも似合うだろうし好きな服でいいと思うよ」


 と俺はそう伝えたわけで、それを聞いたコウさんは


「ソウくんにそう言ってもらうととても嬉しいね。これからは今まで見せてあげられなかった分いっぱい見てもらわないと」


 と張り切って洋服探しに寝室へと入っていったのだった。




 さてと俺は帰宅する前にひとつだけやらないといけないことがあるなと考えていた。やらないといけないこと……それはコウさんときちんと話をすることだ。さっき母さんと電話で話したようにコウさんとの関係について両親に会う前に話しておかないといけないよなって。

 まだ浮気した彼女と別れていない俺だけど今後どうするかは決めているわけで。それにコウさんが強いられてばかりの関係なんておかしくて。よくよく考えると凄いことばかりで……コウさん思い切りが良すぎるよと少し笑いが出てしまいそうで。それでも告白してくれて引退してまで側に居たいと言ってくれて引っ越しまで考えてくれているそんな人に俺も応えたいって思うから。




 そんな思いを抱えながら俺はコウさんが着替えから戻ったら話をしようと待ち構えるのだった。

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