第18話 事務所で打ち合わせ?

 



 事務所までは何事もなく着くことが出来た。菊池さんにお礼を言い私、コウは待ち伏せ等ないか用心しながら事務所へと入っていった。


 事務所内に入ると慌ただしく働く人が数人いた。私のことで慌ただしく動いてくれているのだろう。


「おはよう、みんな。私のせいで慌ただしくなってごめんね」


 私がそう言うと事務所にいる人たちは軽く私に頭を下げまた仕事へと没頭した。

 私が女優になってたった1年、普通なら下っ端でありながらも一気に人気が出てこの事務所のトップになってしまった。

 そのためか事務所の人達にあまり良い印象を持たれていないようなので、まあこんなものかとさっさと事務所を素通りし社長室へと向かった。

 ノックをすると「入っていいわよ」と声が聞こえたのでドアを開け入っていく。


「お疲れ様。こちらに向かう際になにもなかった? 」


 社長からそう聞かれたので


「うん、何もなかったよ。事務所の周りも誰もいなかったみたいだね」


 私がそう言うと


「もう新聞に載せるとなると、とうに時間が過ぎてるからでしょうね。それなら会見に集中したほうが良いと判断したのかも」


 たしかにそうかもと納得して私はソファに座った。


「さてと引退会見だけど9時からすることにしてるわ」


「うわっなんか早い時間だね」


「ええ……遅くして話が漏れても困るしね。さっさと終わらせることにしたわ」


 社長は情報漏れを心配しているようだ。


「会見で話す内容はすべて任せるわ。私から何も言うことないから」


「ん? 言っちゃいけないこととかないの? 」


「今更何言ってるんだか。それならまずはあなたに引退するなんてやめてってお願いすることからしてるわよ」


 そう言って社長は苦笑する。


「約束がなければ引退なんてしてほしくないわよ。でも、私も社長、約束だけは守らないとね。信頼がなければやっていけない世界なんだから」


 社長はそう私に告げる。そしてため息を一つつき


「でもまさかこんなに早くこんな日が来るとは思ってなかったわ」


 残念そうな顔をして告げてくる。


「まあ、私もまさかこんなに早く引退することになるとは思ってなかったね。ソウくんにすべてを話す勇気なんてなかったから。時間掛かるかなって思ってたよ。でも、ソウくんが裏切られて沈んでいるところを見たら突っ走ってたよ。何も考えられなかったなあ。ソウくんしか見えてなかったよ」


「それは仕方ないにしてもそう決めたなら早く話をしてほしかったわね。私が家に押しかけなかったら多分今日になっても話が来なかった気がするわよ」


 社長はそう言いながらクスクスと笑ってしまう。


「確かにソウくんとの時間ばかり考えてこっちのことなんにも考えてなかったと思うよ。私も。」


 私もそう言って笑ってしまうのだった。




「そうそう、あなた気をつけなさいよ。今も着信がたくさん来ているんじゃないの? 」


 そう、昨日ソウくんにも知られた着信の数の多さ。


「引退会見後、番号かえようと思ってるんだけどいいかな? ソウくんに着信が多いの見られるのもう嫌だから」


「はぁ……あなたの基準はソウくんなのね。幸自身が嫌って言うのはないの? 」


 社長がそう言うが


「私だけなら我慢できるかな? 」


 そう軽く答える私に社長は頭を抱えるのだった。

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