第16話 どこで寝るの?



 通知のことはもう忘れ俺達ふたりは食事を続けた。コウさんはちょっと気まずくなったのか先程より無口になる。そんなこと気にしなくていいのにと俺は思い


「コウさん、さっきの話気にしてるの? 」


 俺が尋ねてみると


「そりゃ好きな人に少しでも疑われるようなことを話したりしたくないじゃない。明日のこともあるし社長から連絡会ったりしたら行けないと思ってマナーにしてなかったからバレるのも時間の問題だったけど。まあ、普段も仕事時と就寝時にしかマナーにしていないけどね」


 そういうコウさんに俺は思っていることを素直に告げてみた。


「コウさんはっきり言っとくけど俺コウさんのこと信じてるからそんなに気にしなくてもいいよ。今までさ。よくよく考えると信じられる人って家族は別にして、通話のみの関係だったけど俺にはコウさんだけだったみたいなんだよね。彼女もまあこんな事になったし、友達といっても僻み妬み? いつの間にか学校で話しかけてくれる人もいなくなったし。はははっなんか全部彼女に持ってかれてたというオチになってるね。そんな中変わらない……いや会って変わったか。女性だったし女優だったし……でも心は変わってないよね。コウさんは。一緒に居ても良い人だよ……ね? 」


 俺がそう言うとコウさんは思わず立ち上がり


「うん。私はソウくんだけ。絶対裏切らない。何があっても……」


 俺の元へとやって来てそう告げながら抱きしめてきたのだった。




 しばらくそのままコウさんの温かさを感じていた俺だったけど……やはり女性に抱きつかれるといろいろとあるもので


「コウさんそろそろいいかな? 食事を終わらせよ? 」


 俺はコウさんに離れるように促した。


「うん、早く終わらせて今日は早く寝ようか。私早く起きて仕事に行かなくちゃいけなかったんだ」


 コウさんは俺から離れながらそう言って苦笑していた。

 その後はあまり話すこともなく食事を終えふたりで皿を下げ、流石に俺にも洗い物は出来るので一緒に片付けをした。


 片付け後テレビを付けたままふたりソファに並んで座り少しの間、時を過ごした。なんというか喋らなくても良い、一緒にいるだけで……そんな気分になっていた。ただ、それは俺の気持ちなだけでコウさんはどうだろうと見てみると俺の肩に頭を乗せてとても幸せな顔をしてくれていたので問題ないのかなと少し安心した。


 それでもそろそろ寝ないと駄目かなと俺はコウさんに


「コウさん。俺の寝る場所はソファでいいかな? 」


 と聞いてみるとコウさんは無言のまま顔を横に振る。


「ん? 別の場所があるの? 」


 再度聞いてみると


「一緒に寝る。ベッド」


 何を言い出すのと俺はコウさんの顔を覗き見る。


「何もしないから。ただ一緒に手を繋いで寝たいだけ」


 そう甘えた顔と声で俺にお願いと伝えてくる。俺は「はぁ」とため息をつくも、もう泊まりまでしてるんだし今更かと


「手を繋いで寝るだけだよ」


 そう伝えるとコウさんはまた幸せそうな顔をしてまた俺の肩に頭を乗せ頷くのだった。



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