第15話 ふたりで食事を。
しばらくしてバスローブをまとって現れたコウさん。シャワーから上がってきたようだ。
「どう? 私のバスローブ姿。なによりお揃いなのが良いね」
扇状的なコウさんの姿。やっぱり芸能人になるとなんというかまとってる雰囲気が違うなあと思わず見惚れてしまった俺。
「うん、綺麗だね。見惚れてしまったよ」
と俺が言うと……
「うっまさかそんなに素直に返されると照れるな。ソウくんを照れさせようと思ったのに」
とコウさんは俺をからかおうとしたらしいが失敗に終わったようだ。
「ちょっと食事の準備後少しだから終わらせるね。待ってて」
コウさんは照れていたのを誤魔化すように食事の用意に行ってしまった。
俺はコウさんを待つ間テレビでも見ようとテレビををつけてソファに座りぼーっとする。ついて現れたのはコウさん。どうもゲストでなにかの番組に出ているようだ。テレビの中にいるコウさん。それが今側にいるんだなあとちょっと不思議な感覚に覆われる。
「不思議だなあ……」
思わず出てしまうそんな言葉。
「ん? 何が不思議? 」
いつの間にかコウさんがサラダを持って俺の横に来ていたようで俺に尋ねてきた。そしてサラダをテーブルに置くコウさん。
「いや、今テレビにコウさんが映っててさ。そのコウさんが今側にいるってのがすごく不思議な感じがしてね」
俺がそう言うと
「ああ、確かにそんな感じがするかもね。でもね。本当の私はここにしかいないから。テレビに映る私はある意味作り物。なにか絶対に隠してるそんな私だよ」
そういうコウさん、いろいろとあったんだろうなとコウさんの表情がなにか物語っているようなそんな雰囲気だった。
「もう茹で上がったからすぐ持ってこれるよ。後ちょっと待ってて」
そう言ってすぐに表情を戻しダイニングに向かうコウさん。なにか隠していたように見えたコウさん。
もしそうなら少しでも助けになれたらいいなって思ってしまう俺だった。
準備が整い俺とコウさんは食事を始める。
話す話題は触れ合えなかった時間のこと。通話で話していたと言ってもやっぱり知らないことが一杯あってその時間を埋めるようにふたり話していた。
特にコウさんは隠し事をしていたせいか知らないことが沢山だ。
そんな時間に何度も響く通知音。コウさんのスマホからだ。
「コウさんでなくていいの? 」
あまりにも多いのでコウさんに聞いてみる。
「ああ、気にしなくていいよ。いつものことだし。必要な人の通知音は違う音にしてるから大丈夫」
いつものことなのか? 俺は多分変な顔をしていたのだろう、コウさんは気にしたようで
「んー。あんまり言いたくなかったんだけどね。芸能界に入ったばかりの頃、あまり気にかけてなくてね。共演した人とかに番号教えちゃったんだよ。そしたらさ、かけてくるかけてくる……。なんでちょっとしか関係がなかったのにこんなにかけてくるのやら。だからそういう人らは出ないことにしてるんだよ。無視でいいんだよ。というより男の人は絶対スルー、ソウくんが居るんだから。はっきり言って邪魔だよねぇ」
ちょっと気まずそうにそういうコウさん。うわっやっぱりモテるんだな、こういう大変さもあるんだなと考えさせられたコウさんの言葉だった。
「でも無視したら次会った時大変じゃないの? 」
俺はそう聞いてみると
「その時は「好きな人がいますので申し訳ないですがお相手できません。彼に疑われるのは嫌ですから」って言って断ってるね。だってソウくんも他の男と仲良くされるのは嫌でしょ? まあそこでムキになって怒る人は少ないから。ただ、しつこいひとも居るけどね」
そう言って苦笑するコウさん。
「ソウくん、誤解されたくないから通知のこと言わなかったけど……私誰とも付き合ったことないからね。それだけは伝えとくよ」
そう俺に伝えるコウさんはそれはそれは可愛らしく感じられるのだった。
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