第14話 新婚さんみたい?



 とりあえずお約束を言ってくれたコウさん。そういえばと気になったことを聞いてみる。


「夕食はどっかに食べに行くの? 」


 そう、夕食。俺は作れないし、コウさんが作れるかもよくわからない。


「ソウくんはどっちが良い? あっもしかして私が作れないとか思ったかな? 上手ってわけではないけれど練習してある程度は作れるよ。ソウくんに会えたら手料理を作ってあげたいって思ってたからね」


 うーん。コウさんの基準は何を聞いても俺基準になってるな。


「でも今から作ると面倒じゃない? あっそういや俺慌ててきたからお金あんま持っていないんだった……」


 そうだった。財布にお金追加してきてなかったんだったと思い出す。


「お金の心配なんてしなくていいよ。これでもコウさんいっぱい稼いでるんだから」


 そう言って胸を張るコウさん。確かに人気芸能人って給料? 多いんだったっけ?


「うーん。でももし面倒じゃなかったらコウさんの手料理食べてみたいな。お願いしても良い? 」


 俺は手料理の方をお願いすることにした。やっぱりコウさんが作る料理食べてみたいと思うよね?


「了解。でも簡単なものになるから……そうだね。スパゲッティとサラダくらいでいいかな? 」


「うん。俺は何でも良いよ。コウさんが作るものなら」


 俺がそう答えると……


「なんかいいね。新婚さんみたい……」


 コウさんはどこかに飛んでいったようにぼーっとしてそんな事を言いだしたのだった。




 コウさんが準備をしている間俺はお風呂に入ることにした。といってもシャワーで済ませるんだけど。そういえば着替え持ってきてないなと今更になって思い出す。まあ1日だし良いかと思っていると


「ソウくん洗濯物カゴの中に入れといて。ああ下着だけ洗濯するから。少ないし薄いものだから乾燥機使えばすぐに乾くでしょ。その間はとりあえずバスローブでも来といて」


 とドアの向こう側からコウさんが言ってくれた。


「わかったよ。ありがとう」


 俺をそう言って風呂場にはいりシャワーを浴びる。それにしても初めての女性の家で風呂まではいり食事を作ってもらいおまけに泊まる。


 ほんと俺……なにしてるんだと思った。


 こんなことになったのもあの彼女がきっかけか。昨日は浮気されてしんどかったのになあ。いまじゃそんなことを考えている余裕がないほどのコウさんとのやり取り。良いことなのか悪いことなのか……いややっぱり良いことなんだろうなあ。


 通話でのやり取りしかしていなかったコウさん。それでも俺にとって一番仲の良い頼れる人だった。多分近くに居たらいつも一緒に行動しているだろうなあとそう思える人だ。


 同性だろうと異性だろうと関係ない。コウさんはコウさんだ。

 それはわかっているんだけど、告白までされてあんなに俺がいることで喜んでくれる人って他には居なくて。


 なんかコウさんのことを考えるとやっぱり頭が混乱してくるわけで。でも、これからはそばに居てくれるってコウさんが言ってくれているのだから、ゆっくりと落ちつていて行けば良いんだよなと焦らない焦らないと心を落ち着けた。


 体も洗いシャワーで流してお風呂からあがり置いてあったバスタオルで体を拭く。着替え用のバスローブはハンガーにかけてあった。バスローブなんて初めて着るわけで。バスローブって裸できるものなの? とよくわからないながらもどうせ下着はないわけだしとバスローブを羽織る。




 俺は脱衣場を出てリビングへと戻ったわけだが


「バスローブ姿もいい感じだね」


 コウさんが声をかけてきた。


「初めて着たからよくわかんないや」


 俺はそう答えると


「食事の準備は大体できたから私もシャワー浴びてくるね。ソウくん覗かないで……じゃないな。ソウくん覗きたいなら覗いていいよ。待ってるから」


 とクスクスと笑いながら俺に言う。




「コウさんほんと今日は俺をからかって遊ぶよなあ」


 俺はそう言って赤くなった顔でそっぽを向くのだった。


 

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