第13話 お風呂、食事、それともわたし?



 どうやら母さんとコウさんの会話は終わりそうな感じだ。コウさんがニンマリしているところを見ると上手く交渉ができたのかなあと俺は思った。


「ソウくん、話は終わったからかわるよ」


 やはり交渉は終わったようで俺に電話を代わるように言ってきた。


「もしもし? 母さん話は終わった? 」


「はぁ……コウさんには負けたわよ。泊まってきていいわよ。ただし、明日ふたり揃って私がわからないことをきちんと説明するってことにしたわよ。それにしても驚いたわね。コウさんって女優さんだったのね。それも今人気絶頂じゃない? それがねえ。創のことこんなに気に入ってるなんて。世の中って不思議なものね」


 いや気持ちはわかるけれど俺をけなし過ぎじゃね? そりゃ俺は一般人だし普通だし……ソウ考えると仕方ないのか。はぁ。


「わかったよ。コウさんに明日車で送ってもらうことになってるから、一緒に行ってきちんと話すよ」


「そうそう、創。あなた変なことしちゃダメよ? もし変なことしたら世間から総スカンもらうわよ」


 母さんはなんとか持ち直したのか俺をからかってくる。


「しないって。今日あったばかりだよ。まあ、昔からの付き合いだから一緒に居ても女性だから女優だからって違和感もないし今までとそう変わらないんだけどね」


「まあいいわ。じゃ明日はきちんと帰ってくるのよ。はっきり言うけど母さんも心配なんだから。サボったりしたことも悪いけれど、それよりも母さんに何も言わずに居なくなったことのほうが心配だったんだから。それだけはわかってて頂戴」


 そういう母さんは少し悲しそうな声で俺に言った。


「ほんとごめん。自分のことしか考えてなかった……これからはきちんと話すから。母さんありがとう」


「はいはい。というか久しぶりに創からありがとうって聞いた気がするわ。これくらいいつも素直だといいのにね。あっお父さんには上手く話しておくわ。じゃまた明日ね」


 そう言って母さんは電話を切った。

 それにしても母さんにも今日は迷惑をかけたなと反省してしまう。

 そんな俺にコウさんは


「ほんと良いお母さんだね。話をしてても創くんのことをとても心配していたよ。私のわがままを伝えたのに怒ることもせず、ただ創をよろしくお願いしますって言われてしまったよ」


 そうコウさんは少し苦笑してそう言った。


「明日きちんと謝るし、コウさんも一緒に母さんに話をしてくれるんでしょ? ふたりできちんと話そう。心配かけた分」


「ああ、私にとってもソウくんとのこれからがかかっているからね。しっかりと話しをさせてもらおうと思ってるから」


 そうだった。コウさんうちの近くに引っ越すつもりだったし、引退の件もあるし……いろいろ話すことがありそうだ。




「さてとソウくん、そろそろお風呂や食事をしないとね。あっそうだ。ソウくん、お風呂にする? ご飯にする? それともわ・た・し? 」


 コウさんそれ言われるとむちゃくちゃ恥ずかしいって。俺の顔は思いっきり赤くなっているだろう。


「コウさんもうからかうのはやめて」


 俺はそう伝えることしか出来なかったのだった。



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