第11話 眠るふたり。



 結局コウさんの押しに負けてしまった俺は14時過ぎには帰る母さんを待って電話をかけることになった。

 それまではのんびりとコウさんとふたり特に何をすること無く寄り添ってと言えば良いのか並んで座っていた。




「ふふっ何かをするわけでもなくソウくんとこうやってのんびり時を過ごす……嬉しいなあ」


「そう? ただ俺といるだけなのにそんなに喜んでくれる? 」


「そりゃそうさ。ソウくんと毎日通話している時も会いたいなあ会いたいなあと思っていたんだよ。やっと会うことが出来た上にこうやって触れ合って一緒に居られるんだよ。とてもうれしく感じられても不思議はなくないかい? 」


 コウさんにとって待ち望んだ出来事って言うことなのだろうな。でも、そう言われると照れてしまいそうになるわけで。


「でもコウさん今は、いうやそうじゃないな。きっと女優になる前からモテてただろう? なのになんでそこまで俺のことを思ってくれているのか不思議なんだよなあ」


 俺は疑問に思ったことをコウさんに聞いてみた。


「んー。私もよくわからないかな? ただね。外見で寄ってくる人を好ましく思ったことなんてないんだよね。外見だけで何がわかる? ほんと私の何を見ているのかわからないそんな人達ばかりだから。ソウくんはネットで知り合ったからというのが大きいけれどそんなの関係なしに今まで付き合ってきた……だから内面だけで仲良くなれたことが一番の要因かもしれないかな」


 コウさんは曖昧ながらもそんな風に答えてくれた。




「そういえばコウさんの話し方って昔からそうだったの? 少し男の人っぽい話し方だよね」


「うーん。これはソウくんのせいかなあ。ソウくんに女だとばれないように一生懸命練習してたらいつのまにかこれが普通になっちゃったよ」


 どうもこの話し方は俺のせいのようだ。


「なんか申し訳ないな」


「ん? この話し方、ソウくんは嫌いかい? 」


 俺が困ったようにそう言うとコウさんは気にしたような表情で俺に尋ねてきた。


「ううん。俺は好きだよ。だってこの話し方が俺にとってのコウさんなんだから」


「ならよかった。嫌いって言われたら即座に直すように練習しないとって思ったよ」


 そう言って安心した表情を見せたコウさんを俺はとてもかわいらしく感じていた。




 そんなのんびりとした時間をふたり過ごしていたせいか俺達はいつの間にか寝てしまったようで。目を覚まして横を見てみると俺の肩に頭を乗せて眠っているコウさんがいた。


すーすーと可愛らしいいびきをかいて寝ているコウさん。

俺の横で安心して寝てくれるコウさん。


 そういえばと部屋に時計がないか周囲を見渡してみると壁時計があったので時間を確認する。17時ともう夕方近くになっていた。なのでコウさん起きたら母さんに電話するかなと思いながら俺はコウさんが起きるまで寝顔を眺めていた。




 この安心しきったコウさんの寝顔が俺の心まで安心させてくれているかように感じながら。

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