第10話 コウさんお泊りを催促する。
今は俺とコウさんふたり。
そして時間はまだお昼。
それでも本当に濃い半日だった。
慰めに来てくれたはずだったコウさんのすべてが驚きばかりで浮気した彼女のことなんかあっという間に吹っ飛んでしまった。それを思うと俺ここにいていいのか? なんて思ってしまった。
「コウさん」
「なんだい、ソウくん」
「俺ここに居て良いのかな? 」
「ん? 急にどうしたの? 」
「いやね……コウさん俺を慰めに来てくれたんだったよね。ぶっちゃけもう彼女のことで落ち込んでないんだけど。そう思うと元気になったということで俺は帰ったほうが良いのかなあと」
俺が立ち去るようなことを言うとコウさんは
「え? 理由なしに私と居るのは嫌かい? 」
とちょっと悲しげな顔で俺に尋ねてきた。
「いやいや、そんなことは思ってないって。ただ理由もなしに女性の宅に長居しても良いのかなって。ごめん、よくわかんないんだよ。初めて女性の家に上がったんだから」
と俺はすこし恥ずかしがりながらコウさんにそう言った。
「そんな事気にしない。それに言ったよね。私はソウくんのことが大好きだって。私はいつでもどこでもずっとソウくんと一緒に居たいんだけどな」
コウさんは俺に素直に自分の気持ちを伝えてくる。嬉しい反面、彼女に浮気されたけれど逃げてしまってまだ別れもできていないそんな俺が側にいて良いのかと少し考える余裕が出てきたのかそんな事を考えてしまった。
「コウさん。俺さ、彼女とまだ別れてないんだよ。浮気されたことがわかって逃げちゃったんだよ。きちんと話をしていないんだ。そんな俺がコウさんの側にいて良いのかな……好きだと言ってくれる人の側にいて良いのかなって」
だから思わずそんな事をコウさんに言ってしまう。けれどコウさんは
「一応聞くけどさ。その彼女とよりを戻すつもりかい? 」
と聞いてきた。俺は
「いや戻すつもりはないよ。だって裏切られたんだから。仲直りしたとしても絶対今回のことは俺の心に残ってしまうと思う。そんな関係じゃ続くわけないよ」
と素直に思いをコウさんに話した。
「ならソウくんとしては問題ないんじゃない? ここにいても。別れる予定なんでしょ? それと私としては何も問題ない。どんな理由があろうと問題ない。ソウくんが側にいてくれるなら何も気にしない」
コウさんはそう言ってくれる。ただ、コウさんの話を聞くとどれだけ俺のことを思ってくれてるんだ? と困惑しそうになる。そんな状態の俺に
「そうそうソウくん、今日泊まっていかない? 明日休みでしょ? 」
と急に話を変えて気楽に聞いてくるコウさん。
「いやいや女性の家にそんな気楽に泊まっていかないと言われても泊まれないでしょ? 」
俺はそう返すが
「別に私からは何もしないから。ソウくんからなにかしてくれるなら私はいくらでも受け入れるけど」
とニヤニヤした顔でそんな事を言ってくる。
「コウさんからかうのは止めてくれよ」
おれも苦笑しながらコウさんにそう返した。
「いや泊まってほしいなと思ったことは本当だよ。明日の朝に私はちょっと出掛けるけれど……あっ引退会見しないといけないからね。で戻ってきたらソウくんの家まで車で送るから」
本当に気楽に言ってくれるなと俺は思った。ただ、俺もコウさんと居るのは楽しいことはわかっている。それにひとりになるとせっかく忘れた彼女の嫌なことを思い出しそうなそんな不安もあるわけで……
「あっでもそうなったら親に話をしないといけないし……ってコウさんと一緒にいるってこと言っちゃったし女性の家に泊まるなんて許さないって怒られると思うよ」
と俺が言うと
「なら私がソウくんのお母さんと話をして了解がもらえたら泊まってくれる? 」
とコウさんはそんな条件をつけてきた。俺は根負けしてしまい
「はぁわかったよ。母さんを説得できたら泊まるよ。負けました! 」
おれはコウさんに負けを宣告するのだった。
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