第07話 社長押しかける。



 またコウさんの車に乗って移動開始。今度はコウさんの家だ。そういえば俺って彼女がいたのに彼女の家へ行かずじまいで女性の家に行ったことなかったなあと今になって思った。そんな事を思っていた俺にコウさんは


「ん? もしかして緊張してる? 女の人の家くらい彼女で経験済みでしょ? 」


 なんて言うが


「いや行ったこと無いよ。女性の家に行くなんて初めてだよ」


 俺は素直にそう返す。


「行ったことなかったのか。うん、私としては嬉しいなぁ。初の女の宅訪問が私の家ってことだね……それよりもちゃんと私のこと女として扱ってくれてるんだね。緊張までしてくれてるようで……なんかそっちのほうが嬉しいな」


 ニコニコしながらコウさんはそう言いながらも


「さてと……出発しようか」


 と一言、運転を開始するのだった。




 車で一時間ほどでコウさんの家、いやマンションに着いた。1階の駐車場に車を止めてふたり車から降りる。俺はどこに行ってよいかわからないためコウさんにただついていく。そしてマンションのオートロックを解き歩いて向かうはエレベーター。


「私の自宅は5階だよ」


 コウさんはそう言ってエレベーターを呼びふたりで乗り込む。しばらくの後5階に到着したので一緒に降りてコウさんへまたついていく。すると


「あちゃ来ちゃってるよ」


 とコウさんは困った顔をして呟いた。


「コウさんどうしたの? 」


 俺は何かあったのかと思い聞いてみると


「うちの社長が私の部屋の前に来てるよ」


 と困った顔をしてそう言った。通路の先を見ると、ある部屋の前に見た目は30歳くらいか結構年上の眼鏡を掛けた女性が待ち構えていた。


「幸! あんたはいきなり電話してきて引退するって言ってきて! おまけに理由を聞く前に電話を切って! こっちは訳わからなくて困ったじゃない! 今日の取材予定先の人に謝って電話をかけてみたらさっさと電源切ってたみたいだし……はぁ、ちょっと説明してくれる? 」


 社長さんはコウさんに一気に捲し立てた。


「そんな怒らないでよ。契約の時約束したでしょ? 想い人になにかあったときには引退するって。今日はその日だっただけだよ」


 コウさんは社長の小言を聞きたくないというような態度でそう告げた。


「その約束があったとしてもこんないきなりじゃこっちも困るわよ。ほんとにもう……想い人のことになったらいう事聞かないんだから」


 呆れた顔でコウの顔を見ながらそう話す。


「とりあえず家に入れて。話をしましょう……それとその一緒にいる子は誰? もしかしてその子が想い人さん? 」


 社長はやっと俺に気づいたようでコウさんに尋ねていた。


「そうだよ。私の大好きなソウくん。やっと今日隠すこともなくなって思いも伝えられて一緒に時を過ごすための制約が無くなったんだ……と話が長くなりそうだから早く家に入ろう。入ってから話すよ」


 そう言ってコウさんは玄関前に行き鍵を開け俺と社長を迎え入れてくれた。




 というかコウさん……行動早いし突拍子過ぎてるんじゃないの? なんだか社長さんってコウさんの扱い大変だったんだろうなあなんて思ってしまう俺だった。

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