第06話 ソウくんと母さん。



「りーーーん」


 コウさんの話が一段落したところに俺のスマホが鳴り響いた。着信を見てみると母さんからの電話だった。ああ、サボった件がバレたかな?


「ちょっとコウさんごめんね。母さんからだ」


 俺は別にコウさんに聞かれても問題ないと目の前で着信を受けた。


「創! 学校に行ってないってどういうこと? 先生から電話があってびっくりしたわよ。なにかあったの? 」


 母さんは挨拶もなしに一気に捲し立てた。


「ああ、母さん悪かったよ。事故とかそういうのは無いから大丈夫。ちょっと落ち込んでたもんでさぼっちゃったわ」


 と俺は母さんに伝えると


「はぁ……ならよかったわよ。家に電話しても誰も出ないし……何かあったのかと心配したんだから。しんどいことがあってサボったのはまあ仕方ないとしてもちゃんと言いなさい、連絡しなさい。わかったわね」


 母さんは本当に心配してくれたようで申し訳なく思ってしまった。


「で、創。今どこにいるのよ。家にいないんでしょ? 」


「ああ、俺が落ち込んでいたのを知ってね。たまに母さんにも話してた友人のコウさん、覚えてるかな? わざわざ心配して家まで来てくれてさ。ちょっと今一緒に出掛けて話をしていたところ」


 俺がそう説明すると、横からコウさんが


「ソウくんちょっと代わってくれるかい? 」


 と言ってきた。俺の母さんと話すの? と疑問に思ってしまったけれどなにか考えがあるのだろうコウさんに代わることにした。


「母さん、コウさんがちょっと話したいってさ。いいかな? 」


「別にいいわよ? 創を心配してくれてわざわざ会いに来てくれた大事な友人なんでしょ。私としてもお礼言いたいしね」


 母さんから了承をとったので「はい、いいってさ」とコウさんにスマホを渡す。


「はじめまして、ソウくんにはコウと呼ばれています坂梨 幸と申します。ソウくんにはいつもお世話になっております。今回、ソウくんを家から連れ出してしまい誠に申し訳ありません……」


 コウさんがいつもと違う口調で俺の母ちゃんと話している。でも俺には横から聞いてて違和感しか無かった。コウさんの丁寧な口調なんて話をしていて聞いたことなかっから。ただテレビとかで話すコウさんはこんな感じだったかなと薄っすらであるが思い出すことが出来た。


「はい、後日そちらにご挨拶に伺いたいと思います。はい……ありがとうございます」


 どうも話が終わったようで「はい」と俺にスマホを渡してきたので、俺は受け取ってまた母さんと話をした。


「ちょっと創。ひとつ聞くけどコウさんって女性なの? 」


 ああ、俺も今まで男性と思って母さんにも伝えていたからなあ。母さんも不思議に思ったんだろう。


「そうだね。でも女性と知ったの俺も今日なんだよ」


「あんたそんな事も気づかなかったいのかい? ほんと創は鈍感で駄目駄目だねぇ」


 母さんは俺にそんな事を言ってきた。でもなぜか言い返す気分ではなかったので


「まあ……とりあえずそういうことなんで。また後で電話入れるから、じゃあね」


 と受信を切りとりあえず電話は終了。コウさんは隣で静かに待っててくれた。




 母さんとの通話が終わると


「そういえばそろそろ昼食の時間だね、なにか食べたいものとかあるかい? 」


 コウさんは俺を気遣ってかそう聞いてくれた。


「んー。ちょっといろんな事を聞いてあんまり食欲湧いてないかも。軽いものでいいかなあ」


 俺はそう言うと


「なら私の家でサンドイッチでも作って食べようか?」


 とコウさんは自宅へと誘ってくれる。でも


「俺なんて家に入れていいの? いろいろと問題でない? 」


 俺は不安になりそう尋ねると


「ソウくんとのことが問題だなんて私が思うわけないじゃない。周りに知られても別に構わないんだよ」


 コウさんは胸を張ってそう言った。


「ならお邪魔させてもらうことにするよ。よろしくね」


 俺は素直に誘いに乗りコウさんの自宅へとお邪魔することにした。

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