第03話 車での移動。
慌てて玄関へ向かいコウさんのもとへ行く。すると俺を見たコウさんは立ち上がり
「なら行こうか? 」
と言い外へと出ていった。俺にはどこへ行くのかわからないけれど、とりあえず玄関の鍵を締めコウさんの後をついていった。
ふたり歩いて近くの有料駐車場まで行きコウさんの車へ乗る。コウさん車運転できるんだと今更そんなことを思いながら。
ふたり車に乗ったはいいがコウさんは
「さてどこ行きたい? 」
なんて聞いてくる。行く場所決まってなかったんかいと
「コウさんどこに行くか決めてなかったの? 」
と一応確認をする。
「まあね。最終的に行くところは決まってるんだけど……。だって仕方ないだろ? ソウくんが心配だったんで慌てて来たんだから。とにかく会わなきゃって」
コウさんは俺の方を見ずそんな事を言う。照れているのかな。ほんとコウさんはいつも俺のことを気にかけてくれる。だからなのかコウさんと話すと落ち着くなと思うけれどそれは姿を見ないで話した場合。初めてみたコウさんは俺とは別世界の人であってそのせいですべての緊張は抜けやしない。
「コウさんありがとね。とりあえずコウさんが行けるところでいいよ。表をそのまま歩いていたら多分コウさん困るでしょ? 人が集まってきて」
流石に人気者のコウさん。このまま行けば警察沙汰になりそうなそんな気がした。
「そうだね。今日はソウくんには我慢してもらうか。でもすぐに町中や人通りが多いところも歩けるようになるはずだから。それまで待ってて」
そう言ってコウさんは場所を決めたのか車をすぐに発進させた。
やっぱり緊張は抜けず俺は困りながらも無言で居るのはきつく感じるのでコウさんに話しかける。運転に邪魔にならない様に気をつけながら。
「そういえば呼び方コウさんのままでいいの? 俺、呼びなれてるからどうしてもコウさんて呼んじゃってるけど」
「ああ、コウでいいよ。というよりコウで呼んでほしいかな? 芸能人でもない仮面を被っている「さち」でもないソウくんの前だけにいる人。コウだからね」
コウさんはそのままでいいと言ってくれた。ただその言葉の端々でコウさんもやっぱり芸能人、女優なんだっていろいろとあるんだなってふと感じてしまう。そんな事を思っていると
「ソウくんは一緒だからそのままでいいね。私もソウくんから変えたくないからね」
コウさんはソウくんと呼べるのが嬉しいのかニコニコしながら俺に言ってくれた。
「そういえばどこにいくの? 」
行く場所を聞いてなかったとコウさんに聞いてみた。
「んー。とりあえず人がほとんどいない海にでも行こうかと。そこでふたりでのんびり話すって良いと思わないかな? 」
それは俺も同意だ。
「そうだね。俺もコウさんについてはいろいろと聞かないと。ぶっちゃけパニックだよ」
俺はコウさんにそう伝えた。いきなり俺の前に現れたし男性と思っていたのが女性だったりその上芸能人、女優だったり……そうそう引退するってたしか言ってなかったか? いろいろと聞かなきゃいけないことがあるな。
「はははっごめんよ。別に隠すつもりじゃなかったんだけどね。なぜか流れ的に隠すような形になっちゃったんだよね。まあそのあたりは後で話そうね」
コウさんはそう言った後こっちを向きたいのを我慢しているかのような表情をしながら目的の海への運転を続けるのだった。
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