第35話 🌻レイの婚約者

その次の日もその次の日も

レイは、帰って来なかった。


あれから2週間が過ぎようと

していた。


夜中の事だった。

見覚えのある黒装束の男達が

窓から覗いているのが

月の灯りで鏡に映っていた。


レイの事が心配で毎夜寝る

時間にズレがあったからだ。


ジュディーはあの日張蘭の家に

あずけて来ていた。

吠えなかったのが幸いした。


城に警報機を鳴らすと門が閉まる

しくみになっている。

緑のボタンが外部からの侵入者

赤のボタンが火災警報機。


甘夏は、緑のボタンを、

迷いもなく押した。

門の閉まるのを確認した警備隊は、


静かに事を進めた。


いつの間にか城を取り囲んだ兵隊が

城全体を照らす灯りをつけた。

真昼のように明るくなり黒装束の

男達が浮き出された。


たくさんの矢が向けられ針の山の

様になった。

一斉に矢を飛ばせば一網打尽


しかし黒装束の男達は隊長の言葉に

従い観念した。


狙いは明蘭。

レイの女になったと勘違い

したラミハルがヤキモチを妬き、

明蘭を拉致しょうとしたようだ。

しかしそこに居たのは明蘭では無く

甘夏だった。


黒装束の男達は、それに気づいて無く

中に入る場所を探していた。



下の方が急に騒がしくなりその夜は

レイが帰って来た。


レイを待つもなかなか

現れない。

1日、2日、3日帰ってるはず

なのに顔をみせない。


「忙しいのかな?」


暫く会えない日が続き不審に思って、

部屋をぬけだした。

メイド部屋の知り合いに、

服が破けたと言い訳をして

1枚借りた。


「久しぶりね。メイ。」


「甘夏?久し振りじゃ無いゎ よ。

急にいなくなってー‼

心配したんだから‼」


「ごめんごめん。

急に田舎にかえらなくちゃ

いけなくて、

もう、用事済んだから

またメイドの仕事始めたの。

今日だけ、貸しておねがい。」


「いいわよ、甘夏なら。」


メイだけは、人が良いのか

甘夏とウマがあった。




前掃除婦で働いていた時メイド

同士知り合いになった。


メイド長に見つからないように

短い時間抜け出した。



城の中は何か華やかな様子で

いっもと違っていた。


メイド同士の話が盛り上がっていた。


「みたみた、殿下カッコイイ‼

そうそう、

姫様もブロンドの髪が、

凄ーくキュウト‼

美人よね。」



「そうそう殿下も

ノリノリな感じ」


ん?殿下ってレイだよね?

おかしくね?


話を繋げるとまた、こりもせず

私にここに住むように言いながら

私を妾にしようとしておるって事?


まさに許せん。


「ねえねえ、今日は何があるの?

遅番だったから、何にも聞いて

無いのよ。」

甘夏は、探りを入れる為忙しく

働くメイドに聞いた。



「あなた新入り?」

甘夏は、ウンウンと頷きながら

今日の行事を聞き出した。



「今日はね殿下のフイアンセの

ルナ様が見えてるの。



ほらー、前のエミリア様があんなん

だったじゃない。


あれから上の官僚達が探し回って

清楚でお淑やかな姫様を

見つけたのよ。」


「え‼デモ殿下には、

いらっしゃるんじゃ..」


「あ‼今殿下の処にいらっしゃる、

お妾さん。」


・・・お妾さん?(´⊙ω⊙`)ワタシノコト

甘夏は、以外な顔をしていた。


「あ、ああ聞いた聞いた。

押しかけていらしたんでしょう。

ズーズーしいって

噂よ。」


「しってる。ルナ様がいらっ

しゃっても

帰らないんだって‼」


「殿下も追い出そうとしても

居座ってるって話しよ。」


「まあ、気持ちはわかるわー‼」




「殿下は、カッコイイだけ

じゃなく

頭もいいもの。


今度だって、カイン、アラバレント

様をグウの音も出ないくらい

追い込んで


自滅させたんですってー

すごーい。」


『えっ‼アラバレントは、死んだの?』

甘夏が部屋に閉じこもって居る間に

事は動き出していたのか?


キャーキャーキャーキャーキャーキャー

女の子のレイ自慢は、

止まら無い。


この子達が言っていること、

婚約者の噂は、間違いだよね。



急いで真相を確かめようと

レイの執務室に向かった。


「レイ、ルナ様は、

綺麗すぎるぞ‼」

エドワードの声に足がとまる。


「ああ、2日前ラニトワ国まで

足を伸ばして合って来た。

確かに美人だ..。」


「こうなったら甘夏様には、

やはり2号になって

もらわねばならないな。」


「あ、ああ、説得するよ。」

レイは元気なく答えた。


「俺も姉夫婦、姪まで世話になった

と聞いて感謝しかないが

国を収めるのとは又話が別だ。

お前もルナ様を見て、

迷ってるんだろう。」


「・・・」



その立ち話を聞いて項垂れた。

噂は本当だった。

その夜ルナ様の歓迎会が執り

行われた。


メイドは、全員集められ

甘夏担当のメイドさえ駆り

出された。


メイド服を着た甘夏もせっせと

働いた。


ファンファレーが高らかに鳴ると

軍服に肩から金色の勲章を下げ

キラキラした 服装の、レイの

手には白いレースの

ウエイディンググローブをした

白い指を覗かせたルナ様の手が

重なっていた。


薄いピンクのレースが

何枚も重ねられた可愛らしい

ドレス。


レースの可愛らしさと

背中がカットされて綺麗な肌を

さらけ出した装いは

大人の女を感じさせる。


凄くうつくしい。

結い上げたブロンドへァーに

レイも声を失っている。


ふたりはしずしずと赤い絨毯の

上を歩いて玉座の前に立ち

レイは、軽く頭を下げ

ルナ姫は、ドレスの裾を持ち

片手は、レイに重ねたまま、

両陛下に挨拶をした。



「よく、参られましたね。

嬉しく思います。」

王が声をかけると


「勿体なきお言葉

お招き有難うございます。」


と可愛らしい声で、お答えに

なられました。


官僚のカンパーイの温度に合わせて

城の中も外もお祝いムード。


何だかなぁ。この皆の喜び

を壊してはいけない気がした。


オーケストラの演奏が始まると

レイと、ルナ姫がダンスを

踊り出した。


しかも誘ったのはウヌヌー‼

レイだった。


にこやかに楽しそうに踊るふたりは

DVDの白雪姫、や、シンデレラの

ダンスシーンと重なって、

甘夏は、呟いた。


「もう、家に

大事にしまってある

あのDVD捨ててやる。‼」


片付けも手伝わず部屋に帰ると

お妃様専用の、気難しいオバンが

待っていた。


「お妃様がお呼びです。

ご一緒に来られませ。」



「あーはいはい。

お腹空いてるので何か


食わせて‼」


「わかりました。

すぐ手配致しましょう。」



前と同じルートでお妃様の

部屋に着いた。


前と同じ扱いで部屋に通された。

前と違っていたのは


この塔に対しての説明が

無かった事、

そしてお妃様がしおらしかった

..事



「此度の働き聞きました。

ありがとう。」



「いえいえ、どういたしまして‼。」


「本来ならば王が直々に

礼を申しあげる所だが..」



「あーわかってますって‼

ルナ様がおいでなので

内密にでしょ。


妾が手柄を立てたとあっちゃ

本妻候補は何してんの?

になりますもんね。」



「すまない。分かってくれて

有難い。」



「いえいえ。」


「失礼いたします。」

重苦しいドスの効いた声がして

さっきのクソオババ、いやメイド

ババア長が現れ


「お食事の用意が整いました。」


王室専用のダイニングに通されると


チキンの丸焼き。

ロブスター

サンドイッチ

フルーツの盛り合わせ。

etc...


「私の気持ちだ、沢山召し上がって‼」


「私も食べよう。」


お妃様は、お上品に召し上がるが

甘夏は、ロブスターなんか

手づかみでお召し上がりになる。


ピュピユピュと口の回りを拭くと


ぷふぁーぁとワインをいただく。

ゴクゴク


「そうやって食べると美味いのか?

凄く美味そうに見えるが...」



「誰も見ていません。

どうぞ...=^^=」



「成程..そちと偶に食す

のも楽しいのう。


2号になったらそちの

宮殿に足を運ぼう。」


お妃様は大層ご機嫌でした。


「そちは2号で良いのか?

官僚達が決めた相手で良いの

だな‼」


ウンウンと頷いて

お妃様とのたのしい晩餐は、

終わった。


甘夏は密かに決心していた。

この街を出る事を、

ジュディーは蝶蘭に託し、新しい

人生を歩む事にして!

此処を出よう。


この城の中で

あの夫婦を見ながら死ぬ迄

暮らすのは


「何だかなぁ。」


国公立大学を出て、就職先が

妾では、高い金かけて塾まで出して

もらった意味が無い。

寝ずに頑張って勉強した意味が無い‼


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