第18話 🌻 甘夏出頭する。
「甘夏出頭するのは良いが
どんな仕打ちが待っているやも
知れない。
一度殿下に詫びを入れて事情を話
守ってもらったがいい。」
「そうだよ。
ヨンスンの言う通りだ、ミリアン様の
まだ配下の者もいるし、ミリアン様が
帰られるまでは用心したがいい。
ミリアン様は未だ18歳と聞くが
彼女が狙ったのかも知れない!
私達もそうそうお城には行けないし
助けるにも助けようがない。
殿下に守って貰うしか
方法が無い。」
「大丈夫ですよぉ!
悪い事した訳じゃないし
殿下に近ずかないなら平気‼」
「私は妾として、
城にはもどりません。
メイド募集が出ていたので
使用人として城にはいります。
働いていた方が逃げ回るより
疲れないし私に合ってますし。
じーっと部屋に監禁されるより
そっちがいいし。」
甘夏の決心が強い事を感じた
二人は・・・
「良いんだね。甘夏‼
殿下に知らせても!」
「はい、自分なりに考えました。
得策です。
蝶欄の事お願いします。」
「何かあったら直ぐ城の窓に、
このハンカチを結びなさい。
城には私の後輩も、ヨンスンの
部下だった料理人もいる。
誰かが知らせてくれるはずだから。」
そう言うと白のハンカチを手渡し
てくれた。
次の日、甘夏は蝶欄に蝶欄の母親
を探しに行くと告げた。
蝶欄は未だ幼く、母親に次いで甘夏が
自分の所から居なくなる事を不安に
思っていた。
「蝶欄も行く。」
小さな口はそう言った。
「蝶欄、知っての通りヨンスンさんも
カワンさんも、いい人で甘夏の家族
なんだよ。
今、蝶欄がお母さんを探すには
幼すぎる。
危ない事も経験したでしょう。
今蝶欄がやる事は、お勉強‼
賢くなるのよ。
そしてお母様を助けるの、わかる?
色んな国の言葉を勉強して
どこの国にも探しに行ける。
ね、甘夏を信じて‼」
甘夏はこの世界の事は何も知らない
蝶欄に何一つ教えられない。
生きて行くにはそれなりの知恵が
必要だ・・・。
蝶欄は涙をポロッ、ポロッとこぼし
小さく頷いた。
蝶欄は声を上げて泣く事すら
許され無い環境で育って来た
母親との別れ、そして又甘夏との別れ
ふたつの別れを経験するには
七歳と言う年齢の蝶欄には残酷かも
知れない。
しかし蝶欄を思っての別れなのだ
その事は忘れないでほしい。
「蝶欄、カワンさんとヨンスンさんに
よーく甘えなさい。
2人とも優しい人だから。
なんせ、甘夏のお父さんとお母さん
なんだよ。」
蝶欄は短く剃りあげた丸坊主の頭を
カワンさんに撫でられながら
肩を上下に揺らし
「ウ、ウンウンヒックヒックヒック
また・・・ヒックヒック会える、帰ってくる?
ウッウッ蝶欄の事ウッウッわ、忘れない‼
甘夏、あ“あ“あ“あびがどう。
うわーんうわーん
「蝶欄、蝶欄、ちゃんと声出して
泣けたね。前に進んだ証拠だよ。
よしよし」
甘夏は蝶欄を抱きしめて背中を撫でた。
初めて蝶欄を抱きしめた日
あの日も蝶欄は声を出して泣いたが
こんなに大きな張りのある声では
無かった。
弱々しく儚げな苦しそうな
声をしていた。
よかった、よかった甘夏は
自分がした事が間違いじゃ無かったと
感じていた。
その日、白い鳩を飛ばした。
殿下から直ぐ電話が来た。
迎えを寄越すと言う事だった。
「いいかい甘夏、
マノライ国の正確なあいさつはね、
目上の人、くらいの高い人それぞれ
違うんだよ。
くらいの高い人にはスカートの端を
摘んで腰を折るんだよ。
その時右足を軽く引く、綺麗にね、
ウンウンそうそう。
相手が頭をあげなさいと言うまで
そのまま、そうそう。
頭をあげなさいと言われたら
相手の胸を見るんだ
そして顔をあげなさいと言われて
初めて相手をみるんだよ。」
「目上の人には胸に軽く手を当て
片っぽの手でスカートをツマミ軽く
頭を下げるんだよ。
一般の挨拶だ‼
じゃ最初からやってみて。」
甘夏はしっかりとレディーの嗜み
を仕込まれた。
1週間みつちり仕事を休んで
教えてくれた。
多分人目に曝され甘夏が恥を
欠かないように
カワンさんの思いやりだった
のだろう。
甘夏は迎えに来た馬車に揺られながら
農道をはしる。
甘夏も1度は監禁された城だったが
メイドとして城に入る
不安と恐怖と入り交じった胸を
抑えながら進んだ。
話をつけて、レイを諦めさせなければ
何もかわらない。
蝶欄の母親探しもある。
ここはレイを頼るしか頭に浮かばない。
城の裏口に馬車は止まった。
意外と小さな馬車に甘夏は最初
驚いた。
てっきりレイが三人衆と護衛を伴い
迎えに来ると思っていたら
ちっちゃーい馬とちっちゃーい馬車
と厳しそうなおじいちゃんだった。
来ても来なくてもいい様な扱い方
兵もいないし緊張する事も
無かった。
半分気の抜けたような、ガッカリ
したような変な気分だった。
厳しいおじいちゃんは顎でクイクイ
城まで歩けと言っている。
「軽く2キロは有りそうだ」
カチャ
「殿下、甘夏様がお戻りです。」
姿勢よくエドワードが執務室に、報告
に来た。
レイはパッと嬉しい顔をした。
「 殿下分かっておられますか?」
エドワードはレイを鋭い眼差しで
見た。
「今ミリアン皇女が滞在されて
おられます。
よろしいですか?
何事もお気遣い、お心を
煩わせる事無く、
皇女にはおかえり頂き婚礼の
準備をして頂かねばなりません。
甘夏様とは今は
お会いする事もお話される事も
禁止です。💢
ミリアン皇女と晴れて
ご夫婦となられ、
お妃様となられてからの
第二夫人の要請となるのです。
第二夫人候補が先に殿下と婚姻
契りを交わすなど許されません。
もってのほかです!
変な噂が立たぬよう、甘夏様を
お見かけしても見ぬ振りをして
頂かねばなりません。
くれぐれもよろしく
お願いいたします。」
《《分かっ・・・ておるワ‼
何度も言わずとも心経ておる‼
うるさい‼》》
バンバン!!とテーブルを
叩いてエドワードを威嚇する。
《《おまえは、甘夏を見たら
直ぐブレルから念押しとんじー
アホ‼💥💢💥》》
エドワードも唾飛ばしながら怒鳴り
散らす!
「おーっと言い忘れた。
甘夏様いや、甘夏は今日から
シタッパのメイド見習いじゃ!
ハハハハハ」
「ハァ何でだ‼
夫人候補だぞ・・・許さん‼」
レイはエドワードの首を掴みながら
抗議した。
「自分から申し出たんだ。
メイド募集に応募して来たんだ‼
部屋に閉じ込められるより働きたい‼
とな‼」
「俺の許しなく勝手なマネは
させん。」
「じゃあ又退屈しのぎに
外にでて、狙われたらどうする?
メイドになるのは、
本人も望んでいる事だ。」
それを聞いたレイはガクッと肩を
落とし元気の無い声で
「大事に扱え‼
危ない事はさせるな‼
甘夏に何かあったら`✧ω✧´
例へお前でも許さん‼」
レイはエドワードを睨み付け
大声で怒鳴りつけた。
「フフン‼
それはお前次第だ‼
お前は国を守る義務がある‼
生まれ出た時からの運命だ‼
お前はそれを背負っている。
そして俺もお前を守る義務がある。
それは俺にもお前と同じこの国を
守ることなのだぞ・・・
苦しいのは
お前一人では無い‼
それを聞いたレイはエドワードの
襟元からダランと手を離した。
苦い顔をしたエドワードは衣服を
整えレイに対して
両腕を頭の高さに抱えあげ頭を
下げて言った。
殿下‼私とのお約束は‼
《《必ず、か.な.ら.ず.違えられませぬ
様にお願い申し上げます!》》
2人は暫く睨み合っていた。
《《分かっておる‼
何度も申すな‼💥💢💥》》
フンッ!!✖プィッ!
2人は顔を背け、ソッポ向いた。
エドワードも
バアアアン💥💢💥
とドアを叩きつけるように執務室を
後にした。
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