第17話 🌻 蝶蘭の素性

カワンさんが

背中に顔を埋めた蝶蘭に、


「あ、そうだ、飴を持っていた。

食べるかい、おチビちゃん。」


優しく手の平をパッと広げ

いちごミルク味の飴を取り出した。


「はい、リラもおあがり。」


カワンさんが飴を取り出した手は

いちごミルクの甘い香りがした。


お腹が空いていた甘夏より

蝶蘭の方がお腹が空いているように

見えた。


カワンさんの手からソロリソロリと

飴を握り、パッと手にしてパクッ

と口に入れると、蝶蘭の顔は

緊張が解けた様子だった。


甘夏もパクッと、口に入れる。

「美味しいね。」


蝶蘭もニコニコしてウンと頷いた。

その様子をニコニコして見ていた

ヨンスンさんはカワンさんが

目を丸くしているのに気付いた。


「どうしたんだ?カワン?」


「あ、ああ、あ、何でもないよ。」

と不安そうにヨンスンさんを見ると


「!!!ハッ!!!!」

ヨンスンさんは蝶蘭の顔をマジマジと

見て呆然としていた。

2人は囁く様に何か話していた。


蝶蘭の痩せた姿に驚いていたのだと

呑気な甘夏は思っていた。


急かす訳でもなくて蝶蘭のお腹も

甘夏のお腹もほぼ限界だった。

昨日のお昼ご飯を食べたきりだった。


「カワンさん、ヨンスンさん、

お腹が空きすぎて、死にそうです。

何か食べさせてもらえませんか?」


「お、おおう

荷台にだけど乗りなさい。

しっかり捕まっているんだよ。」


ヨンスンさんは私と蝶蘭に

気を使いながらユックリ、ユックリ

運転してくれた。


蝶蘭がポッリと言った。

「甘夏、有難う。」


甘夏は涙で潤んだ蝶蘭を抱きしめて

「今からはママを探しながら

此処でいきていこう。


私も蝶蘭もボッチだけど

優しい人もいる。

この人達のような・・・

ね。」


蝶蘭は涙を汚れた服の袖で拭きながら

頷いた。今では遠くなった荒れた町

を振り返りながら泣いていた、

小さな胸はきっと母親を・・・

思っていたのだろう。


店に着くとドアを開けた。

2ヶ月ぶりのカフェは相変わらず

パンの匂いや、

珈琲の香りが染み付いて

それだけで癒された。


カワンさんが

「食事の用意をするから

お風呂浴びておいで

汚くてしょうがないよ‼クスッ」


蝶蘭と甘夏は顔を見合わせて

お互い真っ黒でボサボサな事に

気づく。


歩き続けて3週間、幸いなのが

極度のストレスで生理が来なかった

事だ‼


服を脱いだ蝶蘭はやはり女の子だった

蝶蘭のガリガリな痩せた体は

アバラがクッキリと浮かび

子供らしい丸い体型ではなかった。

下を脱ぐと足の骨すら浮かび上がって

いた。


蝶蘭の痛々しい姿は溜息がでる、

いったいどんな生活を送って

来たのだろう。


甘夏にとっては久々のお風呂だったが

蝶蘭にとっては、経験のない事の

様だった。


「甘夏〜

この水暖かい、暖かいよー」

と歓喜の第一声を上げた。


蝶蘭のゴツゴツした体を洗って

あげながら、

こんなに痩せてと涙が止まらない。


蝶蘭の母親はどんなに寒い日でも

夜中にしか

風呂には入れてくれなかった。

寒い冬は何日も入らないのが

普通だったらしく、人に見られるのを

嫌っていたそうだ。


夏場でも街の灯りが消える頃に

ならないと風呂にははいれない。

しかも風呂とは、よくよく聞いて

見れば川の事だった。


お湯と浴室が有ることに、

はしゃぐ蝶蘭を見ながら苦笑いしか

出来ない甘夏だった。


蝶蘭は朝ご飯に目を丸くしていた。

蝶蘭の朝ごはんとは、草だった

ヤギの食べてる草は食べれて

ヤギが食べない草は毒草と母親が

教えてくれた、あとは川魚でお腹を

満たしていたと言う。


ガッガッガッと犬のように

食べる蝶蘭を見ながら

ヨンスンさんもカワンさんも、

勿論甘夏も涙が止まらない。


そんな3人を見た蝶蘭は急に

恥ずかしくなったのか食事のペース

が落ちていた。


「どうしたの蝶蘭、お腹いっぱい

食べていいんだよ。

ほらスープも飲みなさい。」


カワンさんの言葉に蝶蘭は甘夏を

見て心配そうにしていた。


「そうだよ、蝶蘭スープも

飲まないと、サラダもね。

しっかり食べて元気になろう。」


甘夏がニッコリ笑うと

蝶蘭は又美味しそうに食べだした。


蝶蘭は朝ご飯を食べると

お腹が満たされたのか

家の中に寝れる事が

信じられ無いようでどうしたら

良いのか分からずにいた。


「おいで蝶蘭」

カワンさんが声をかけると

カワンさんの座っているソファーに

戸惑いながら歩いて行った。


甘夏は片付けをしながら蝶蘭に

頷く。

カワンさんは蝶蘭を抱っこしながら

ポンポンポンポンポンポン

と軽く叩いた。


気持ち良いのか蝶蘭は直ぐ眠って

しまった。


柔らかい毛布をかけられてやっと

蝶蘭は人として人間として

眠りについた。



甘夏もヨンスンさんから

白薔薇の紅茶を渡されホワホワと

上がる優しい湯気と香りに

癒しを感じていた。


そして一連の騒動を話した。

自分の名前は甘夏、城で起こった

全ての事、アルバート公爵の話

馬の餌を狙い馬に警戒された事

蝶蘭と合った日の事そして

三週間歩き詰めで帰りついた事



「マノライ国の馬は・・・

そんな気の荒い馬は飼育されていない。皆、利口な馬しか殿下の部下も

乗らない!」


「いや、馬番は殺されて

いたらしいぞ、甘夏が馬に乗る

のを殿下は見ておられたのか?」


「いえ、数秒ではあったけど

レイが先に出ました。

その後、馬が調子悪いと言われて

違う馬を引っ張って来て

私が乗ったら、パシーンと馬を叩く

ムチの音がして・・・。」


そう話すとカワンさんは

鋭い眼差しで甘夏をみて


「狙われたのは、殿下じゃない。

はなからリラ、いや甘夏を狙って

いたんだよ。」



「Σ(ㅎωㅎ;)エッ💦‼私?なんで?」


「甘夏が城にいると困る人物がいる。」


甘夏は2人を見て叫んだ


「まさかナイナイ、王妃様は

そんなお方じゃないよ。

長年務めたけどそんなお方じゃない‼」




「でも‼王族しか入れない塔に

連れていかれて、

しかも道のりが分からないように

目隠しされて・・・


レイとは分かれるようにと

言われました。


勿論OKしましたよ。」


「うーん、王妃様は人をあやめたり

する、お方では無いぞ‼


多少ワガママなところはあるが

お優しくて気の回る明るい性格だし、

何より

殿下の母君なのだぞ

殿下が悲しむような事をなされる

訳がないぞ‼」



「それで王妃様のお話は

何だったんだい?」

カワンは不思議そうに聞いた。


「レイの第一夫人はミリアン様で

私は妾だから、わきまえろみたいな。

それが嫌なら分かれるように

テキナ!」


「あ、ああ・・・ね。」

納得したようにカワンさんは頷いた。」


「母親ならば、息子の好きな娘は

手放さないよ。

息子と険悪な中になる事は分かって

いるし、国の母となる妃も必要に

なる。

王妃様も国を思っての事だから・・・」


「はい、でも私は妾にはならない

と申し上げたのに・・・

命を狙わなくても・・・。」


「いやいやいや、

王妃様はそんな御方では無い。

殿下の悲しむ事など

なさる訳が無い。


甘夏に何か有れば殿下は仕事所じゃ

無い‼甘夏への御寵愛はこの国の

隅々迄届いている。」


「ウワッ!! やめて下さいよー

笑笑、彼は同時に5人の妻を

娶る気マンマンの、エロですよ‼


普通に無理ですってバ。」


そんな甘夏を笑いながらカワン

さんは言った。


「甘夏は普通の娘と違うし

変わっている。

一緒にいると・・・ん・・・

和むってゆうか、癒されるって言うか

ま‼楽しいんだよ。


そんな所に殿下も惚れたんだろうよ。」


「あーそれな!」

ヨンスンさんもニコニコと頷く。


「それからな俺達は、王室と関わり

がある。

甘夏は今じゃ王室お手配人だ・・・

俺達も甘夏を匿うって事は、殿下を

敵に回すと言う事なんだ、

それでも甘夏は家族だ、カワンと匿うと決めた‼


だから窮屈だろうけど家から出たら

ダメだぞ・・・

焼菓子店にも顔を出したらダメだ‼」


「カワンさん、ヨンスンさん

感謝します。


でもこれ以上御迷惑は

かけられません。私、出頭します。

その覚悟で帰って来たんです。


ただ蝶欄をお願いします。

この子は女の子で出生に問題がある

気がします。」


「‎( ⊙⊙)!!(ʘ╻ʘ)!

お、女の子?名前だけじゃなく?」


ウンウン

「何か理由かあるんでしょう。

頭もいいので学校に通わせては

もらえませんか?


母親も男の子にしておかなければ

いけない理由があるようなのです。

母親の安否も分かりません。


蝶欄も不安みたいで御迷惑かける

と思いますが私も蝶欄も頼れる人

は、お二人しかいません。」



「甘夏、決めたのかい。」


「はい、蝶欄に母親を探すと約束

しました。

レイに頼んでみようと思います。」


「・・・ああ・・・

安心しなさい。ちゃんと育てる。」



「蝶欄の母親は簡単な調理方法と、

逃げ方と、人の見分け方を厳しく

蝶欄に教えて、何者かに捕まったと

思われます。」


「この子には思う所がある。

目、鼻、名前、ナチリコ国の

妾腹の明蘭様の御子かも知れない。

明蘭様は王が殺された時お腹に

お子がおられたと聞いた。


妾ではあるが賢くて、お優しくて

人々の信頼を受けていたと聞いている。


私達が確かめに行った時は

・・・もう御姿は無かった。


多分明蘭様が国を収めたら困る

輩がいたんでは無いかと・・・


いやいや推測でものを言うのは

やめておこう。」


「なんでそんなに言えるんですか?」


「この子は明蘭様の幼少の頃に

そっくりなんだ。

私は若い頃明蘭様の使用人として

勤めていたんだ。


弟君のお顔立ちにも良く似ている。」



「でも、お血筋がそうで有れば

命を狙われている。

母親が明蘭様なら連れて行かれたのも

理解出来る。」



「噂が本当なら・・・」


カワンは言いかけた言葉を飲み込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る