第15話 🌻アルバート公爵の恋

「旦那様、ソロソロ始まりますよ。」


「おお、そうか‼

有難う。」

アルバート公爵は知らせに来た下僕

と並んで居間へ行く。


アルバート公爵は下の者と上の者を

分け隔て無く扱った。

その為領地の者や街の衆、子供から

老人にまで慕われていた。


「あの娘は寝ておるのか?」

下僕のロスに聞いた。


「いえ、もう起きてなんやら

かんやらやっております。

さっきは台所で皿洗いをしており

ました。」


「ほう。」


台所に無理を言って働かせて

もらったのはいいが此処でも甘夏は

招かれざる客だった。


「はい、コレも‼」

甘夏の前にドンと積まれた皿は

大きくて重かった。


使用人や、来客、それに今日は

騎馬隊や騎士、兵隊が立ち寄り

厨房は戦場の様になっていた。


洗い物は次から次に終わりが無く

流石の甘夏も背中や腰が痛く

なっていた。


甘夏はこの屋敷の主に、会って

お礼を言ったら立ち去るつもりで

この屋敷の主を捜していたが

一宿一飯の御礼をする為お手伝いを

しょうと考えていた。


『見ず知らずの私を助けて下さり

有難い。このまま去っては

日本女子の名がすたる!』


が甘かった。昼飯抜きでもう4時だ

他の人は交代で昼休憩を取っているが

甘夏には交代する者がいない。



料理が並んでホッとしたのはもう直ぐ

夕食が始まる5時だった。


クタクタクタと庭に転がった。

すると公爵の立派な外庭から

大型テレビが見えた。


映画のスクリーン位のデカさだ

大きな一枚ガラスの戸は開けられ

人の声がした。


「とうとう、マノライ国のレイ様が

ご結婚かー、公爵様も早く良き

御令嬢を娶られねば、我々が安心

致しかねまする。」


ん?・・・💦公爵様は独身?

埋もれた草の中から顔をだす。


テレビの中にはあの、あの、あの野郎

レイが空港に向かう様子を写し

出していた。


空港にお着きになった殿下は・・・

ナレーションは続いていた。


上下の藍色のスーツを着こなした

ウエットなショートへァーのレイは

凄く凛々しくカッコイイ!


と思う反面

やはり自分の事は探しもしない、

ただの妾なんてどーでも良かっ

たんだーコノヤロウ!!

と思い知らされた。


昨日の今日なのに、レイは

甘夏の事はスッカリ抜け落ち

心配する欠片も見当たらない。


彼はすこぶる上機嫌な様子。


突然居なくなった甘夏を血眼に

なって捜してくれているとでも

思っていたのか?


自惚れていた自分に水をザバーン

と頭からかけられたような


それで思いが断ち切れた気もしていた。


「丁度いい、お互いこのまま別れ

たがいい。」

外からテレビ中継を眺めながら甘夏は

決心していた。


声をかけてきたのは馬番のマルクだった。

日に焼けて健康的で細マッチョ

馬番だけに顔が細長い。

彼はサンドイッチをほうばりながら


「ほい、昼飯。」


投げられたパンは1枚のペラペラの

ブレットの端だった。


新入り?雇用契約もして無いし

此処で働く気もない。


飯抜き、部屋なし、風呂なし

しかし受け取ったパンのミミのもっと

細いミミ、パクパクパク

3回噛み付いたら終わった。


馬の餌の方が栄養があって美味そうだ。


じー🐴、馬は甘夏を怪しんで

ブヒヒーンブルブルと威嚇してきた。


馬の餌にある豆を甘夏は狙っていた。

しかし馬には、バレていた。

腹が減ってしょうが無かった。


馬の餌に手を突っ込むと

ブヒヒーンブヒヒーンブヒヒーン

💥💢💥🐎💨大暴れ‼


仕方なく次の🐴の餌を狙う。

またも💥💢💥🐎💨💨💨

もっと大暴れ‼


甘夏が近寄るだけで次の🐎💨

又次の🐎💨🐎💨🐎💨🐎💨


馬の泣き声が止む頃には

馬の食事も終わっていた。


「あーヤバい、早くこの奴隷

地獄から解放されねば・・・💦」


フラフラと馬小屋を出る。

昨日の夜から何も食べていない

フラフラフラ

いつの間にか甘夏は食い物の匂いに

釣られ、あろう事か騎士団達のテーブ

ルを狙っていた。


皆酒を飲んで🍻ワイワイガャガヤ

甘夏はソ﹏っと手を伸ばして

チキンを2個ゲット


馬小屋に走り馬の前で勿体つけ

ながら食べた。


🐴はじーっと見て、馬には豆を分けて

あげなかった事を後悔させる。

食い物の怨み思い知れーー‼


手をパンパンパンと叩くと

オカワリを取りに走る。


テーブルの上には焼きたての

ホワンホワンしたパンが柔らか

そうで甘夏には我慢が出来なかった。


テーブルには誰も居なかった。

チャンスちゃあチャンスだけど


昔のレイの言葉を思い出す。


『いいか、鳥を呼び寄せるには

餌がいるんだ、大好物を

バラ巻いて隠れるんだ、鳥が

来た時このツナを切る、

とホラ籠の中で捕まえる。』


怪しい、静か過ぎる。

私は🦃扱いか?

パンのみみっちいミミが餌か?

🐴がチクッたのか?


仕方なく厨房に帰ると

「あれは旦那様ねらいよ

わざと旦那様の見回りの時間に

寝ていたのよ。」


アルバート公爵は27歳

公爵もソロソロ婚姻をしても

おかしくない!いや、遅いくらいだ。

だからと言って私は無実だ‼


この屋敷の全員に言いたい‼

公爵を狙ってはいないと﹏w

今狙っているのは騎士団の飯だと‼


甘夏が裏口から入って来ると

話声が止む。

冷たい視線は気の所為では無く

間違い無く甘夏に向けられていた。


「あーオンナの嫉妬程

恐ろしいモノは無いわ‼

何で?


📣 早く旦那様に合わせろ‼

御礼を言ったらでてくんだからっ

旦那様狙ってませーん。」


甘夏のなげゼリフに厨房は

シ━━━━━━━━━━ン‼

まーったく🐴といい使用人といい

ろくな屋敷じゃねーワ。


プンプンしながら中庭に出ると

まだテレビ中継は続いていた。


ミリアン皇女の出で立ちは

レイと合わせたように藍色の薄い

ドレスを着て胸元が白とピンク

の小さな小花を散りばめたレース

・・・綺麗


思わず、甘夏の口を付いてでた。


そうレイは藍色を好んでいた。

ミリアン皇女もレイの好きな色を

知っていたのだろう。


「アハハなんだなんだレイの奴

後で電話して冷やかしてやるか‼」


アルバート公爵はノリノリで呟いた。


一言御礼を言ってお暇しょうと

思った甘夏だったがまだ沢山の

人に囲まれた公爵に声などかけら

れ無かった。


アルバート公爵は騎士団、騎馬隊

兵隊が帰った後、甘夏を探しに

厨房へとやって来た。


皆の視線が集まる。


「どうだ屋敷には慣れたか?」


(´⊙ω⊙ˋ)?

「慣れた?慣れた?は?」


朝からパンのミミの端っこ

一枚、ミミのミミですよー

□の回りをほそーく、ほそーく

ミミをまたほそーくした奴よ

あんな細く切る技術も相当だけど

意味ある?


ちゃんとしたパンのミミ、食わせてよ!


📣こんな、食事もナシで働かせ

られて、侯爵様に助けて貰った

有り難さも1日ハード労働のせいで

帳消しデスヨネ‼」


甘夏の怒り声にアルバートは驚いた。

「えっ‼なんと?申した。

食事抜き?ロス、ロス」


公爵の怒りの声にロスが飛び出て

来た。

「ロス、どういう事だ、ホントか?」


背の小さい、気弱そうなロスさんは

「忙しかったので行き届かなかっ

たのです。申し訳ありません。」

と平謝りしていたが


「違うよーほら昼飯ってちゃんと

聞いたもん。

ほらあんた(🐴番を👉さす。)

言ったヨネ、金魚の餌じゃ無いんだし

ミミのミミは無いよね。

折り曲げたら1口だったから

3回にパクついたけど、直ぐに無くなったわ。」



馬番は気まずそうにしていた。

( ̄. ̄;)エット・・( ̄。 ̄;)アノォ・・( ̄- ̄;)ンー


「私が公爵様を狙っていると

沢山の使用人の方に言われました。

ハッキリ言えば、狙ってませーん。


あ‼そうそう

アルバート公爵様

お世話になりました。

私は甘夏と申します。」


腕を曲げ膝を折り頭を下げる。



それを見てアルバート公爵は、

「甘夏?

甘夏か、可愛らしい名だな♥

//д///

甘夏はマノライ国の住人か?

何故あの様な所にねていた?」


マノライ国の挨拶の仕方で、

アルバート公爵はピンと来たのだろう。


甘夏は事の次第をアルバートに

説明した。

このまま、レイとは別れるつもり

だと、このままではレイの

妾にされてしまう。


それは嫌だとハッキリと言った。


「分かった。

レイ、いや殿下には私から話そう。

だから甘夏、この屋敷に留まっては

くれぬか?」


「えーパンのミミのミミ食わせ

られて留まるバカいますかねー

せめて人参の一本くれたら

馬の豆と交換出来ますし、🐴も

納得して豆をさしだすでしょう。」


「🐴?人参?豆?」

アルバート公爵は?ナニソレ

みたいな顔をしていた。


馬と食い物争いをした事の無い

証拠だ・・と甘夏は呆れてしまった。

(いやいや馬の食い物とる奴って

滅多にいない。)


屋敷中の使用人の目が甘夏に集中する。

コソコソと話し声がする。


《ホラーヤッパリ旦那様ねらいよ‼》


《助けて貰ったのにズーズしい‼》

『旦那様優しいから騙されてるよ‼』


《何処の娘よ!》

チラチラと聞こえる怒りの囁きが

旦那様には聞こえないのか?

皆大反対してるよ。


「両親も心配していると思います。

公爵様には感謝いたします。

それに公爵様は皆にかなり愛されて

おりますし、何処の馬のホネとも

分からない私は無理です。


誤解を招く発言は宜しく無いかと

思われます。」


アルバート公爵は甘夏の柔らかい

頬を愛しそうになでて

「甘夏、誤解では無いぞ」


公爵様は目配せをして人下がりを

させた。


気づけばアルバートと甘夏の2人

きりになっていた。


「皆、悪気は無いのだよ‼」


「はい、皆様に

慕われておられますね。

お人柄が良くわかりました。」


「甘夏、私はお前が気に入った。

悪いようにはせぬ!

お前の両親も呼び寄せよう。

お前と同じく大事にする、

約束は違わぬ!」


( ̄ェ ̄;) エッ?


『両親にもパンのミミ食わせる気

か?』


「約束は違わぬ?

レイもあの日、裁判の日

そう言った。」


「アノォ﹏ 私身分無いし

父もリーマンだし、

公爵様にはもっといい人が

居ますよ。

公爵様には見合った御令嬢を

娶りくださいませ。」


「甘夏、私は本気なのだ!」


「いやいやいや、どーせ妾様でしょ

私も本気で無理でっス‼」


「いや、そうではあっても

私は一番甘夏を大事にする。

本妻は娶らなくていい!

一生、甘夏だけでいい。」


「でも妻には出来ないと・・・?」


「色々、ややこしい事があるのだ‼

親戚関係、王室関係、しきたり、

それをこなすのは・・・💦」


「ゆゆしき御令嬢で、す、よ、ねっ」


「あ、ああんンンスマン💦」


「公爵様、私はですね!

やっと、やっと、妾にされそう

な所を偶然とは言え脱出出来たのです。

分かります?👉」


フムフム、

「甘夏程の器量好しなら

男なら皆ほしがるだろうなぁ。」


「公爵様も?」


ふふふ

「お前と会った時は・・・

器量好しとは程遠かったぞ

`,、 '`,、



するとコンコン、ドアをノックする

音がした。


「旦那様、マノライ国のレイ様

がお忍びで、お見えです。」

背の高い蝶ネクタイ、黒いスーツ姿

で白髪の執事さんが呼びに来た。


アルバートは急にキツイ表情になり


「直ぐ行くとお伝えしろ‼」

と言った。


執事さんは軽く一礼してパタンと

扉を閉めて出て行った。


公爵様は甘夏の髪を撫でて

「邪魔が入ったな、甘夏

ちょっと待っててくれ、そうだ

食事をしなさい。


用意させよう。

私は本気だ、本妻は娶らぬ。

レイの事は私に任せてくれ。」

そう言うと客間の方へと消えた。


(́ὼ;;́ὼ)

『食事してるヒマねーよ‼』


甘夏は騎士団のテーブルに走り

スープ、蒸し鶏、をパクパクパク

《んーウメエ 》

騎士団は酒ばかり飲んで料理には

手を付けていないのを

甘夏は目を付けていた。


ハムを散らしたサラダ

サンドイッチ、パクパクパク

🦃の蒸し物に食いつきながら

さっき狙った焼きたてのパン

今は冷えた普通なパンになっていた

そのパンを厨房から拝借した

袋に詰め込んた。

甘夏の口は大忙し。


さあて、お腹も膨らんだし

長居は無用‼


レイに捕まっても妾

アルバート公爵の屋敷にいても

妾、全く妾ってなに?

国公立大学出てなんで就職先が

妾なんだよ💥💢💥


現世で、お嬢様育ちの甘夏

そこいらのお嬢様となんや

変わらないお育ちをしているのに

この差はなに?


まあ今じゃ野生が目覚めた感は

ある。

一枚テーブルクロスを拝借して

風呂敷みたいに広げパンと水

フルーツを詰め端と端を結び

リュックサックの様にからうと


右見て左見て、誰も居ないのを

確かめると=͟͟=͟͟͞͞===ササッ

と屋敷の門目掛けて走った。


門にはピッカピカのピッカピカ

皇太子殿下の車が横付けされていた。

門には護衛兵が立っていて


グルグル甘夏は周りを見渡した。

すると使用人用出口なるものが

見えた。


何人かのおばちゃんの後ろを歩き

無事脱出出来た。



「殿下、この度はご婚約

誠におめでとうございます。」

アルバートは頭を下げ片膝を付き

胸に手を当てメリディアン国の

挨拶をした。


「よせよせ、アルバート

机を並べた中だろ‼むず痒い」


ククク「だな!テレビ中継見たぞ

ラブラブじゃないか‼

俺も嫁が欲しくなったぞ‼」


「そう見えたか‼」


「なんだなんだ、婚約したのに

嬉しそうじゃ無いな‼


で‼ 皇女はまだ城にいるのだろう!

いーいのかぁーほっといて

破談になっても知らぬぞ‼」


「最近変わった事は無かったか?

娘を見たとか・・・💦」


ハハハハハ

「殿下が自ら娘さがしか?

どんな娘だ?何をしたのだ?」


「彼女は大事な女だ。

一緒に狩りに出て、はぐれたんだ。


お揃いの服だったから私と間違え

られ狙われたやもしれん。」


「ああー

そう言えば干草の上で娘が寝ていた

そうだぞ‼ 食事を・・・」

と言った所で黙ってしまった。


パンのミミのミミを、食わせた

と言うのか?

アルバート公爵 は気まずそうに

していた。


「食事?」


「ああ、いや何でもない笑」


「とにかく甘夏は無事なんだな!」


「ああまあそう聞いている。」


「屋敷におるのか?

連れて帰るから会わせてくれ。」


「いや、甘夏は諦めてくれ。」


「お前・・・まさか甘夏に

なんかしたのか?」


「いやいやいや何もしてはいない。

今厨房で食事をとっ・・・💦」


ズカズカと厨房目掛けてレイの足

が早くなる。


後ろからアルバートが引き止めに

かかるがアルバートの腕を払い

レイは小走りに厨房へと

入った。



突然のレイの訪問に

厨房はざわめいたが皆頭を下げて

レイを受け入れた。


キョロキョロと半身を使い甘夏を探す。


「甘夏は何処におる。」

声を先に出したのはアルバートだった。


「あのぉー食事を取られながら

荷造りをされて、じゃあねー

って出て行かれました。」


レイが叫ぶと

「えーともう1時間くらい前です。」


レイもアルバートも

(๑°⌓°๑)(´◦ω◦`)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る