第14話 🌻狙われた甘夏
「聞いたか?殿下は北地から
戻られて頗るご機嫌なそうだぞ」
「ああ、密偵捕まえた話か?」
「あーあ聞いたぞー
なんと殿下の探しておられた
姫も見つかったらしいじゃない
か。」
「いやあ流石、殿下はなされる事が
違うなぁ。」
人々は剣も使わず密偵を根こそぎ
お縄にした事を国中で讃えた。
然しあの日、甘夏がマノライ国に来た
時、手に掛けようとした2人組は
未だみつからなかった。
部屋で甘夏は、する事も無く退屈
だった。
カワンさんとヨンスンさんには
電話で容疑が晴れた事を知らせたが
もうレイから連絡が来ていて
安心したと言っていた。
本当に2人の気持ちが、有難く
甘夏も泣いてしまった。
帰ってお礼と、身を偽っていた事を
お詫びしたい。
でも、レイの許しが無くては
外にも出れない、いままで
一日中動き回っていた甘夏は
暇で暇で何もする事が無く、
退屈のあまり城中の
草取りをしていたら
メイド長が飛んで来てミッチリ
叱られてしまった。
「退屈か?甘夏‼」
「んーもう帰りたいー‼」
その一言を聞いたレイは青くなり
「そ、そうか‼
じゃあ、明日狩りにいくか?
甘夏の好きなミラン鳥が
もう飛んで来てるそうだぞ‼」
「うわぁー行く行く!」
馬に乗れる嬉しさと、城を
出れる嬉しさに大はしゃぎ‼
幼い頃から乗馬は好きだった。
良くレイに仕込まれた。
甘夏が、馬に乗るのが大好きだと
彼は覚えているらしい。
あの頃はレイと遠乗りを楽しんだ
ものだ。
レイの前に甘夏が座り山をかけぬけた
木になる果物🍑や、きいちご、杏
秋は🍇や柿、馬の背から立ちながら
レイが甘夏をしっかりと抱いて、
もいでたべたっけ‼
明日が楽しみで仕方ない。
まるで遠足を待つ小学生の低学年
の様にワクワクして眠れ無かった。
朝が来た。
甘夏はベッドから飛び起き、レイの
足音を待った。
窓を開けると朝はまだ太陽が昇り
かってない程、青く城を写し出して
いた。
朝食を済ますとやっと
レイがやって来た。
「モウッ、レイおそーいぞ!」
ハハハハハ
「あの頃の甘夏の口調に戻ったな。」
レイは嬉しそうに目を細めて甘夏を
見る。
「バレちゃったんだから
しょーがないでしょっ‼
拘束するなんて《反則》なんだから」
相変わらず凛々しい姿で毛皮を
左上から垂らし腰に巻、作務衣
のような下ズボンは金糸銀糸で
織られた高そうな、動きやすそうな
服を着て、
背中には狩の為の矢を沢山担いで
いた。
左手には弓を持ち直ぐにでも
狩が出来そうだ。
「甘夏、これに着替えろ!」
ポイと渡されたのは、レイとオソロの
服だった。
「うわぁーレイ駄目だよ!
せめて、もうちょい地味系じゃな
いと・・・目立つ‼」
レイは
「ゴチャゴチャ言う暇があったら
着替えろ‼ 」
レイの一喝に甘夏はビビり
「はーい。」
レイはツカツカと甘夏の腕を取り
庭で待つ馬の所迄早足で歩いた。
「待って、待つて、」
甘夏の慌て様を楽しむかの様に
ニヤニヤしながらレイは歩いていた。
庭に着くと真っ黒い立派な馬と
茶色の又立派な馬が待っていた。
レイはピョンと乗りなれた愛馬に
跨り
「甘夏、ついて来い‼」
そう言うと二、三人の警護を付け
パカパカと走り出した。
あーん、待ってよー‼
甘夏が乗ろうとすると
「すみません、馬が調子悪いみたいで
こちらの馬と変えます。」
そう馬番の男の人が違う馬を引いて
来た。
甘夏が乗ろうとするとビシツと
聞き慣れないムチの音がした。
エッ、キャーアアア
まだ甘夏が馬の腹に張り付いた
状態で、あろう事か馬はレイを追って
走り出した。
甘夏にとって10年ぶりの乗馬が
こんな、こんな・・・
目を瞑り必死に馬の手網にしがみついた、馬はまるで人を振り落とす
訓練を受けたかの様に走る。
ああっ💦も、もう限界‼
甘夏は手を離す機会を狙った
馬は猛スピードで、草原を駆け出した
下を見ると、あれは🍀🍀
クローバの白い花が沢山見えた。
もうすぐ草原が終わり
林が目前に迫って来た時
甘夏は決心したように
パッと手を離した。
ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ
甘夏は頭を縮こませ身を守りながら
止まる所迄転げ落ちた。
幸い岩も無く草だらけだったから
大した怪我も無かったが、体は
アチコチ痛かった。
草から必死で立ち上がり
水の流れて居ない谷に身を隠した。
大勢の男達の声が聞こえた。
それはマノライ国の言葉では
無かったから咄嗟に身構えて体が
動いた。
昔レイに言われた。
「言葉が違う奴には気をつけろ‼」
男達はザワザワと走り甘夏の
隠れていた岩の所迄やっきた。
ムリサカハケーー‼
そうやたらに叫んでいた。
聞いた事がある、確か
探せ、探せ・・・だ。
風の様に走り抜けたレイは
見事な手網さばきで目的地に着いて
いた。
ドウッ ドウッ
レイのお気に入りの一頭の馬は
レイの命令通りに動いた。
レイは甘夏の好物がミラ鳥の唐揚げ
とトマト煮と言う事を覚えていた。
茶褐色で艶があり鶏位の大きさで
カモの様な味もあり、鶏の様な
味もある。
レイは甘夏に食べさせてあげたくて
狩りに集中した。
護衛もそれぞれミラ鳥を狙う。
バタパタパタ殿下ー
シッ‼黙れ💥💢
ピューン→>>>>→
レイの放った矢は見事ミラン鶏に
命中した。
「どうした、鳥が逃げるではない
か‼💢」
バサバサバサ バサバサ
ミラ鳥は一斉に飛び立って行った。
レイが一羽、護衛がそれぞれ三羽
捕まえていた。
「殿下、申し訳ありません。
甘夏様が見当たりません。
馬番が胸を刺され倒れていると
報告を受け、急いで戻りました所、
甘夏様に用意した馬は
朝のまま木に繋がれていました。」
な、なに‼
急いで捜索しろー探せー
レイはミラ鶏所ではなく
森や林、草原を探し回った!
すると草原には沢山の馬の足跡が
あり転げ落ちた後の形跡があった。
レイは悲痛な叫び声を上げ甘夏を
探し回った。
《《カンナー、カンナー、
カンナ ー》》
レイの捜している甘夏は笹薮の
中を走っていた。
何人かの男達に追われていた。
もしかしてレイと間違われて追われて
いるのかも知れない。
馬もレイの馬だし服もレイとオソロ
体型は完全に違うけど、遠目には
同じに見えたかも知れない!
昔はレイが何度も狙われた
しかし自分より私を優先して守って
くれた。
今度は私がレイを守る。
甘夏はレイが走り去った方向とは
逆に逃げていた。
レイの方へ逃げると気づいた追っ手は
レイを狙うに違いない。
足も傷だらけで走り、
もう走れ無いくらい疲れて
ヨロヨロになった甘夏は兎の穴を
見つけた。
中に兎が居ない事を確め上着を脱いで
兎の穴に突っ込んだ。
「やべえ、ミラン鶏の祟か?
鶏と同じ立場になっちゃった‼
狩りに来て、獲物扱いか━━━━‼」
上はシルバーの作務衣一枚になり
下はジーンズを履いていた。
作務衣の下の足の長さが合わず
ジーンズを履いていたが
上の長い毛皮でレイは甘夏が
ジーンズを履いているのは気付いて
いなかった。
重い上着を脱いで
これで歩き安くなった。
適当な隠れ場所を見つけると甘夏は
そこでジッとしていた。
頭の上をシュシューッ、シュシューッ
と人影が走り甘夏はブルブルと
震える体を固くするのに体力を
使っていた。
薄暗くなる頃には追っ手の足音も
ようやく聞こえ無くなっていた。
「きっと、殺し屋だ‼
レイを狙ったんだ。」
森の入口に、火が炊かれ捜索の
会議が開かれた。
森をグルりと取り囲み中へ追い込む
作戦だ。
レイは心配で堪らない
明日は皇女ミリアンとの偏見がある。
捜索は一晩中続いたが甘夏は
見つからなかった。
その頃森をとうに抜け出した甘夏は
凸凹の農道を歩いていた。
功を奏したのは、山歩きし易い足袋を
履いていた事だ、レイが馬で走り
抜けた方向とは逆に走ったからこっち
は?西?ん?太陽はアッチに沈んだ
からえーと?えーと?
南か?
街の灯りを頼りに降りて来たが・・・
農道に出た途端疲労感が増して
足が急に固くなった。
今分かる事はレイを離れてしまった。
そして自分自身で戻らぬかぎり
レイとは二度と会えない事だ。
そして彼を狙う一味が蔓延っている
事。
お金も何も無い。
お腹はグーグーグー
薄暗くなった道の畦道に体育座り
をする
どうしていいのか分からない。
甘夏の目に、畑の中に干し草が見えた
昨日刈り取ったのだろうか?
ホンノリ青草の匂いがする。
甘夏は土手の上から飛び降り
ホンワリした干し草に飛び乗った
ボロボロの足とクタクタの体を
柔らかい暖かい干し草が包んだ
甘夏の体には安らぎと安心を与え
秒で寝てしまった。
青草をカミカミしながら・・・
甘夏には格好のベッドだった。
朝が来ていた。干し草に沈んだ
甘夏はグッスリと寝ていた。
「女の子が寝てるぞ」
「‥何でだ?」
「旦那様を呼ぶか?」
そこへ黒い立派な馬に乗った男が
現れた。目は黒く澄んだ眼差し、
髪も短く手入れされ鼻も高い
体は鍛えられて胸板がピンと
張っている。
背も高い彼はこの地を収める
公爵アルバート、ウィリアム
メリディアン国とマノライ国との
国境を守っている。
大国マノリラ国と同じ位の広さを持っ
メリディアン国は、マノライ国と
強い協定を結んでいた。
今日もミリアン皇女がマノライ国へ
行く為王族専用機がメリディアン国を
通過する、その為異常が起きないよう
見回りをしていた。
地上から狙う輩もいないとは限らない。
最近やって来たマノライ国の
アルフレッド、フランリンと名乗る、
前公爵の養子と
争いが起きないように話し合い
協力して、地上からの
見張りをしていた2人は
ウマがあったのか
アルバートとアルフレッドは
同じ歳でもあり、仲良くなっていた。
「どうしたのだ‼」
アルバートが下僕に尋ねた。
「あ‼旦那様、 いえ、女の子が
寝ております。
今お伺いに上がろうかと
話しておりました。」
アルバートは馬から降りて近づいた
甘夏はつかれはててアルバートが
頭に手を当てると熱を感じた。
「怪我もしておるし
少し熱もある様だ、連れて帰る。」
「ヘイ!
馬屋にでも寝かして起きます。」
そう言うと下僕は甘夏に近ずいたが
横から公爵が抱え上げた。
思いもしないアルバートの素行に
( ☉_☉) パチクリ。
そこにいた農夫達は目を見張って
見ていた。
逞しいアルバートがヒョイと
甘夏を抱えた速さと、クニャリと
柔らかい体をした甘夏は
物凄く可愛らしかった。
アルバートも甘夏を見た途端
///ω///ポッ
甘夏はユラユラと揺られながら
逞しい腕に安心していた。
「気持ちいい。」
目を開けるのも辛いほど眠たかった。
黒々とした髪に大きな黒いグルリと
した眼差しガタイのいい体型
抱かれ心地の良さに甘夏は又ウトウト
と眠ってしまった。
疲れていたのか、甘夏は昼過ぎまで
グッスリと寝入っていた。
目が覚めるとだだっ広い、ピカピカの
家具に囲まれた寝室にいた。
「凄ーい。」
16世紀の中世に来たようなデザイン
の家具、寝室なのに広ーい
テーブルがある。
『なんにつかうの?』
花もデッカイ過敏にアマリリスの
赤、白、ピンクがデーンと生けて
ある。
「ゴージャス‼」
レイの用意してくれた客室と余り
変わらないピンピカピーン。・:*:・゚★,。・:*:・゚☆
この高級さにそぐわぬ甘夏
髪はボサボサ服は汚れて
シュン「どうしよう。」
別に汚れがベッドカバーについて
しまった訳では無い。
パッパ、パッパ叩けば
何も残らない、デモ・・・悪いよね。
甘夏はベッドカバーを剥ぎ取り
部屋を出た。
キョロキョロ、ウロウロ
何処をどう歩いたか分からず
又キョロキョロ
メイドの人が洗濯ものを抱え
走り去った後を小走りで付いて行く
ガラガラガラーと戸を開けると
柔軟剤のいい香りが漂って来た。
「あのー洗濯機使っても
いいですか?」
そこに居た全員がふりむいた。
変に思った使用人の30代半ばの
厳しい顔をした人が
「これ、旦那様のベッドカバー
じゃない?今朝取り替えたばかり
よ!」
「えーとすみません
汚しては、いないんですけど
汚れた服で寝ちゃって・・・
結果汚れて居ないようで?汚れて
いるっちゃいるし・・・💦」
腕を組みながら近づいた彼女は
「ああー貴方ね、今朝旦那様が
拾って来たと言うオンナ?」
オンナが何を指しているのかは
分からないが彼女は
「ふーん。なるほどね笑
弱々しい振りをして
旦那様に近づいたのね。」
と値踏みするように甘夏をジロジロ
と舐めるように見て来た。
「いえ、これを洗濯して取り
替えたら、直ぐにお暇しますんで
旦那様?に近づきませんてば!」
「どーだか!
あの手この手で近づく上流階級の
御令嬢は沢山見てきたけど
新手の手法なの?
しかも旦那様のお部屋迄入り込む
とは・・呆れてモノが言えないわ。」
「だって、目が覚めたら
あんな上等のベッドにいたんです。
私のせいじゃないし・・・💦
旦那様とやらのせいです‼」
まあぁぁぁ、ズーズしいっ‼
かしなさいよ・・・
そう言って30代半ばの、彼女は
甘夏の腕からベッドカバーとシーツ
をブリ取って、大型の洗濯機に
押し込んだ。
あとは完無視されてスゴスゴと
甘夏は洗濯場を出た。
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