第8話 いつかは

「あ、連絡来てた。」

夕はLINEとかは全然返さない性格だつたがある友達には頻繁に返しているようだった。

「どんな人なの?その友達は。」

ソファでゆっくりしながら手を繋いで夕の顔を伺う。

「ん〜…月が好きって言ってたよ。大人で綺麗で、あとは〜そうだなあ。ちょっと儚げなところもあって。」

「そうなんだ。」

「小説とかも書いてるみたいでよく読んでるよ〜。」

「ん。小説…。」

なんかデジャブ。

「名前は、さすがに知ってるよな。」

「ん?うん。」

「…。」

怖くて聞けなかった。まさか、彼女と月が知り合いとか思うのがしんどかった。


「…話は聞いてる。色々あったんでしょ?」

夕が知ってると知って更に驚く。

「月ちゃん…もりさんのこと好きだったんだよね…?」

それと、とつづける。手を握る力が強くなる。顔を見てると辛そうな感情が伝わる。


「月ちゃんは、子供欲しいって言ってる。結婚もしたいって。」

まつ毛の陰りでほとんど顔が見えない。

「ん〜。だから、月ちゃんのほうがいいのかなあって。思ったり。思わなかったり。」

思わなかったり。とかは無理がある。

「人の気持ちって…自分だけでどうにかなることじゃないし?」

お互い寄り添わないとな。

そんなようなことを上っ面で言った気がする。

「そうだよ?」

じっと見つめてくる。それでも俺はお前がいいよ。

「いつか…結婚したいとか。子供が欲しいとか。」

そうなるのかな…という意味なのだろうか。

「思ったら付き合ってはやるよ。」

「ほんと?」

「嘘言ってどうするだよ。」

俺が嘘つけないって知ってるだろ?

「ありがとお…。」

いつもね、と続ける。

「甘えちゃってるの。もりさんの優しさに、会いたい時に会ってくれて、甘えたいときに甘えさせてくれて。」

「甘えればいいよ、俺には。」

「嫌だよ。私らしくないもん。」

「たしかになあ。付き合う前のお前はまじで適当だったし、大雑把で男らしくてよ。」

「…。」

「あ、すまん。夕は。」

「うふ。」

うふ。とかそれこそらしくねえわ。

「ぎゅってしていい?」

ダメなわけないだろ?

そういう視線を感じるや否やすぐにぎゅっとしてくる。

「いつか…。」

いつか、ね。なるものなのかな。

傷が癒えて。

慰めるのに必死だったけど、そんなようなことを言ってた気がする。

暑いね。

そんなことも言った気がする。

「あのね、たまに嫌な夢見ちゃうの。」

「どんな夢?」

「もりさんが私の元を去っていく夢。」

「なんだその現実味ない夢。」

「そう思うでしょ?」

「うん。」

「ずっと、嫌な予感がしてるの。」

そう言っていつかの希望を抱いてる彼女はいつも不安げに俺に抱きついてくる。

「わかんないもんね、未来のことは。」

そう言って、手を背中に擦り寄せる。



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