お嬢様尾行やめましょうよ!ーそろそろ直接話たほうが早いですよー
結局一週間も続いた尾行に最後の二三日は奈々はついに何も言わなくなった。
「そろそろ直接聞きましょう!」
「あーもう聞いたぞ」
「え?」
相馬はすでに奈々から事情を聞いていた、そして一応摩耶のことも話して尾行をされても黙っていた。
「もう早く言ってくださいよ!」
「悪い、けどそれよりも事態は深刻だった」
「そんなにですか?」
「ああ、奈々のお兄ちゃんがかなりご立腹らしく戻ってこいなどと復縁など凄いらしい」
「お兄様が?」
「知ってるのか?」
「はい。私も一度お会いしたことがあります」
「どうだった?」
「とても怖い方ですが成績はトップクラスの博士号を持ち語学も完璧にこなしてどんな方に対しても柔らかい物言いで誰に対しても接すことが出来るとても素晴らしい方です」
「どこが怖いんだ?」
「ご自宅では寡黙で全て勉学に費やし今では財閥の跡取りが確約されていますがそれでも手を休めることしない方です、ご家族内では一番恐れる存在でご両親でさえも身を引く方です」
「え?ヤバくね?それ」
「はい。私の家族事情よりも怖いと思います」
「ひぇっ、じゃ、じゃあこの先どうなるんだ?」
黙り込む摩耶を見て唾を飲み込み緊張が走る。
「おそらく戻されるかと」
「戻されるか……摩耶はどう思う?」
「私はせっかく奈々ちゃんがこっちまで来てみんなと仲良くなったのに離れ離れになるのは嫌です」
「だろうな、正直俺も思った」
「じゃあ……」
「だが手の出しようがない、家族間の問題だ」
「そうですよね」
「でも奈々はここにいる、まだ止められる方法はいくらでもある」
「じゃあ今すぐにでも!」
「いや単に呼びかけるだけじゃダメだ。奈々や両親がそこまで恐れる人なら普通に話たところで意味がない、決定的なことがないと動かないだろう」
「そしたらどうすればいいのですか?」
「そこが分からない、なにかないか?」
「う〜ん、奈々ちゃんが好きなもの、奈々ちゃんがほしいもの」
「とりあえずありったけの計画は建ててそこから行けるものから試そう。いつ奈々が動き出すか分からないから早めに」
相馬と摩耶は奈々を止める計画を建て始める。そこにたまたま仕事が終わって帰ってきた環がやってくる。
「あれ?摩耶ちゃん、珍しいわね。いらっしゃい」
「あ、環先生。お邪魔させてもらいました」
「いいのよ、それより何してるの?」
「奈々が帰りそうだからそれを止めるための計画」
「止める?どうして?」
「そりゃ環だって生徒全員を卒業までさせたいだろ、そしたら一人欠けたら悲しくないか?」
「あーそれもそうね……ん?奈々ちゃん帰るの?」
「分からない、けどそれほどヤバい状況だ」
「えーじゃあ私も加わる」
「別に構わないけど教師としての範疇は絶対に超えるなよ」
「超えないよ〜〜多分」
「その多分が怖いわ」
環は多分といいつつも真面目に考え始める、摩耶は時間になり帰宅するために相馬は一緒に送っていく。
「しかし奈々の兄貴か、俺より年上ということだよな」
「はい。三つ上ですね」
「三つ上でもそんな経歴はビビるよ」
「物事の判断に躊躇しない方なので晩御飯のおかずを両親に一から作り直させたこともあるそうですよ」
「なにそれ、笑い事ぽいけど両親からしたらたまったもんじゃないな」
「だからもし……もし奈々ちゃんが帰ることになって計画もダメだった場合はお願い出来ますか?」
摩耶は相馬にお願いする、相馬はそれを見て笑う。
「当たり前だ、摩耶の友達なら誰であろうと助ける。ま、まぁ兄貴が来たらちょっと……」
しかし奈々の兄の話を聞いてやはり引き気味の相馬だったが摩耶は首を横に振る。
「大丈夫です、その時はガツンと言っちゃって下さい」
「あーそれは遠慮する。それはそれで奈々どころではなく摩耶にも迷惑かける」
「あはは……そうですよね、でも今を頼れるのは相馬さんしかいませんから」
「そう言われたらやるしかないよな」
「はい!」
そして相馬と摩耶は別れて家に戻ると環は酒を飲んでいたが相馬はお構い無しに奈々について考えた。
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