お嬢様二年生ですよ!ー相も変わらずいつも通りですねー

春、相馬と摩耶は二年生になり桜が咲く住宅街を歩いてバス停に向かっていた。

「桜綺麗ですね〜」

「そうだな」

「あ、相馬さん」

「ん?なんだ」

摩耶はバッグの中を漁り始め何かお守りを出した。

「このお守りあげます」

「何のお守りだ?」

受け取ったお守りは赤く真ん中に金糸で「御守」と刺繍がしてあった。

「えっと…、ずっと一緒に居る。お守りです」

恥ずかしそうに摩耶は言う、相馬は受ける。

「摩耶。ありがとう」

笑みが溢れる。摩耶は相馬の笑みを見て同じように微笑む。

「ーー朝から熱いわね」

背後から聞き覚えのある声、相馬と摩耶は驚きと嬉しさで振り返る。

「奈々!」

「奈々ちゃん!!」

「ふんっ…」

そこには腕を組み立ち尽くす奈々の姿が居た。

「ほら早く行かないと遅刻するわよ」

相馬と摩耶の間を通る。帰ってきた理由はどうであれ相馬と摩耶は奈々が帰ってきたことが嬉しかったがやはりあの事が心配になった。

「なぁ、奈々。大丈夫なのか?」

「なにが?」

「いやその…家の…」

相馬が事情を聞こうとしたが奈々は睨み言葉が詰まる。

「大丈夫よ、あんたなんかに関係ない」

ツンとした態度、前と変わりない感じだが相馬と摩耶はハッキリと違うことが感じ取れた。しかし聞こうとしても睨み威圧されとても聞ける状況ではなかった。

学校に着くと奈々はクラスメイト達に心配されながらも笑顔で変わらず取り繕う。

「怪しい…」

「ですね…」

相馬と摩耶はクラスメイト達と話す奈々を観察していた。

「おっ!何してるんだ?」

誠人が面白そうな物を見つけたようにやって来る。

「うん?奈々の観察」

適当に返す、しかし誠人に妙な誤解が生まれる。

「げっ、お前まさか摩耶ちゃんだけでは飽き足らず告白してきた相手に再度奈々ちゃんを狙うだと?貴様、かなりの強者だな…ゴクリ……」

「は?いやいや違うから」

「なんだ違うのか…つまんね」

「お前俺をなんだと思ってる?」

「幸運クソ野郎」

「は?」

「いや〜、俺は不本意なんだけどクラスメイトの男子であだ名人気投票でトップになったのがこの名前だったんだよ、他にも女たらしクソ野郎。見た目通りのクソ野郎。男好きを偽ったクソ野郎など色々だったよ」

「全部クソ野郎じゃないか…、というか最後のが誰提案したか気になるんだがまぁいい」

裏でとてつもない投票が行われていたことにゾッとした相馬。

「ま、でも正直相馬のお陰でクラスメイトは男女分け隔てなく楽しくなったけどな」

相馬は教室を見渡す、奈々と話す男女の他にもグループで話す男女、そして新たに付き合い始めたカップルの姿などと様々だった。誰一人として独りの姿は見えない。

「意外とタマちゃんが言っていた『仲良くなれ』なんて言われてもさ、同性同士ならなんとかなるけど異性だとなかなか話は合わないとかあるだろ、けど相馬と摩耶ちゃんのお陰で異性との壁みたいな物は壊れてさらに奈々ちゃんの力技で打ち解けたみたいなもんだよ。下手に取り繕う必要はないって」

「誠人…」

いつもへらへらした感じの誠人だったが相馬はこの時意外と良い奴なのかと思った。

「あ、第二回相馬あだ名投票開催するか、そうだな俺の候補はクソライオンでいいかな。いつも女を狙うクソ野郎にライオンみたいにいつもどこでも狙う感じの」

「はぁ?てか考え直せよその投票」

前言撤回してやはり誠人といいこのクラスは相当ヤバいやつが勢揃いだと思った相馬だった。

「相馬さん相馬さん」

「ん?どうした」

「奈々ちゃんが動きましたよ」

「よし、ついて行くぞ」

「はい」

奈々の後をコソコソとついていく様子に誠人は苦笑いする。

「色んな意味で相馬だけじゃなく摩耶ちゃんも変わったな〜」


ついて行った先は屋上で奈々は手すりにもたれかかって大きくため息を吐いていた。

「悩んでいますね」

「そうだな」

物陰から覗く相馬と摩耶。しかし奈々は振り返り二人に言う。

「二人とも見えてるから出てきなさいよ」

「げっ!」

「バレた!」

「バレバレよ、それに摩耶は尾行なんて出来るわけないじゃない」

「あははは、奈々ちゃんさすが〜」

「さすがじゃないわよ、それでなんの用?」

「奈々。率直に聞くが家は大丈夫なのか?」

「本当に率直ね、そうね……」

奈々は少し考える。

「大丈夫じゃないわ」

「じゃあ……」

「でも無理、というか二人には関係ないことだから、じゃあ」

奈々はそのまま屋上から出ていく。

「いつもなら怒鳴り返すくらいのことなのに普通だな」

「普通ですね」

やはりいつもの奈々ではないことに心配する相馬と摩耶は気が気でなくドンドンと気になってしまう。

「どうしますか?」

「う〜ん、やはり家族に何かあったんだろうな」

「調べますか?」

「しかないだろ」

その後も観察を続ける相馬と摩耶にさすがの奈々もいてもたってもいられずに下校途中で声をかける。

「ねぇ、正直ウザイんだけど」

「またバレた!」

「奈々ちゃん凄い!」

電柱の陰から覗いていたが完全に隠れてはいなかったため明らかにバレバレだった。

「バレバレだし、てかなに?本当に」

「いやその本当に心配だからさ」

「はっ、心配?そんなの必要ないわよ、それに私の家族の話だから他の人が心配する必要はないでしょ」

「そうだけどよ、さすがにいつもと様子が違ったから」

「バカにしないでよ、私はいつも通りだわ」

フンとそっぽ向いて帰っていく奈々。

「どうするか……」

「やっぱ心配です」

「そんなに摩耶達の世界では家族間に問題があるとそこまで深刻なのか?」

「はい。実際私と相馬さんに関しては今後にかなり響くことでしたので」

「あっ……ごめん」

「いえ私は相馬さんのことが好きですのでずっと一緒にいましょうね」

天使のような笑顔で思いっきり突き刺さる相馬は倒れそうになる。

「うぐ、かわいい……」

「え?なにか言いましたか?」

「いや何でもない、なんでもない」

「そうですか」

首を傾げる摩耶だがやはり奈々のことが心配になる。

「こうなったら奈々ちゃんの口から言うまでずっと後を追いましょう」

「いやもう直接聞いたほうが……あ、ダメだこれは」

摩耶の目は輝いていた、おそらく尾行という行為が楽しくなったのかワクワクしていた。

「全く奈々の心配してるのか分からないな」

多分、心配してると思うがやはり楽しいことが勝っていた。その後も尾行を続けバレることを何回も続ける羽目になった。

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