お嬢様夏休みを楽しみます!ーお嬢様…ではない!?ー
目が覚めたのはドアをノックする音だった。
「ふぁ~、まだ眠い。誰だ。はいはい今開けます」
相馬はドアのロックを解除してドアを開け外を見る、そこには綺麗なドレスを身にまとった摩耶が立っていた。
「摩耶!?」
「どう?似合ってる?」
摩耶はニコニコしながらその場で一回りする。
「あ、ああ似合ってる…」
しかし、相馬は目をそらす。摩耶は不思議に思い相馬のそらした方向に顔を傾ける。
「大丈夫ですか?顔赤いですよ」
「いや何でもない、たださっきまで少し寝ていたから…」
「そうですか、これから行くのですが一目でもいいので相馬さんに見てもらいたくて早めに着るのを手伝ってもらい来ちゃいました」
「そ、そうか。じゃあ楽しんでこい。俺は部屋でゆっくりしてるから」
「本当にすみません、本当は一緒に行きたかったのですが…」
「気にするな、じゃあ俺は戻る」
「はい、それではまた」
摩耶は小さく手を振り相馬は少し急ぎでドアを閉める。
「びっくりした~」
相馬は予想外にも摩耶のドレス姿にびっくりして心臓の鼓動が早くなっていた。
「まさかあそこまでかわ…、いやドレス姿だったしそれに化粧も少しはしてるはずだ、気のせい気のせい」
ドレス姿が可愛いと思った相馬だったが気のせいと思い頭から先程の摩耶の姿を思い出さないように頭を振ったのち部屋のシャワーを浴びた。
その後はテレビを見るが当たり前だったが英語で見るのを止めてスマフォを見る。
すると環からメールが届く。
「『楽しんでる?相馬。私は暇すぎて死にそう_( 」∠)_』、暇なら親に会いに行けよ」
くだらないメールだと思った相馬は適当に返信をした、すぐに環から返信が来る。
「『お土産よろしくね~、買ってこなかったら…分かってるよな?』、子供か、いい歳してお土産期待するのかよ、一応買って帰るけど…」
「ーーへっぶし!」
環が書類を纏めペンを走らせてるくしゃみをする、隣に座っていた教員が心配する。
「大丈夫ですか?風邪ですか?」
「あはは、大丈夫です。急に鼻がムズムズしただけですよ~」
不思議に思った環はスマフォを見ると相馬からの顔文字だけのメールが届いていた。
「何か変な噂でもしてんのかぁ~?」
「何か言いました?」
「ううん、なんでもない」
鼻を軽くすすったのち再びペンを走らせた。
相馬は食事を部屋でとったのちベッドの上で横になりながらスマフォを弄っていた。
「ーーーーー暇だ」
ただその言葉しか出なかった、自分の家ならまだリビングなど行く場所や自由にできる場所があるがここには自分の部屋でしか過ごせずほとんど監禁状態だった。
部屋の中をウロウロしては窓から見える色鮮やかなニューヨークの景色が見える。
「暇の言葉しか見当たらない、抜け出すか?いや日本だったらまだしも海外は色んな意味でヤバそうだな、どうすっか…」
抜け出そうと考えた相馬だったが踏みとどまった、しかし魔が差して少しだけならと思い部屋から出ようとドアノブに手をかけるとドアがノックされる。
「ーーッ!やべっ」
焦った相馬は深呼吸してから抜け出すことを悟られないようにドアを開けた。そこには普通なら食事会に出席しているはずの奈々が立っていた、しかもドレス姿ではなく私服姿だった。
「…えっと……、奈々さん?どうしてここに?」
不思議に思った相馬は聞く、すると奈々は露骨に舌打ちをする。
「私はあーゆう集まり嫌いなんだよね、だから抜けてきた」
「はい?」
「抜けてきた、悪い?」
睨みつける奈々。
「え~と、じゃあなんでここに?部屋に戻ればいいのでは?」
「はぁ?馬鹿じゃない?部屋に戻ったら私一人じゃない、だから暇である汚い男の所に来たの」
「ん?うん、支離滅裂と思うのは俺だけ?」
「汚いのは見た目だけじゃなく脳内まで汚れてるのかしら、暇だから出かけるわよ。どうせ暇でしょ、本当は汚い男と出かけるなんて万死に値することだけど今回は許してあげる」
言ってる事とこれからの事が全く矛盾してることに驚きを隠せない相馬だったが奈々がいるなら大丈夫と思い部屋から出てホテルから出る。
外は東京と一味変わった雰囲気でニューヨークの街中は夜とは思えないほど明るく活気溢れていた。
「んーー、は~…。やっぱ外はいいわね~」
背伸びして大きく息を吸って吐き肩の力を抜く奈々。そして相馬と奈々は揃って街中を歩き始める。
「奈々さん、どうして…」
「その『さん』付けはやめて、鬱陶しい。別に私とあんたは同い年でしょ」
歩みを止めて相馬に指さし怒る。
「お、おう…。奈々はどうして抜けてきたんだ?というか大丈夫なのか?」
再び歩き始める相馬と奈々。
「まぁね、いつもの事だし。それに私は摩耶と違って人を惹き付けるものがない」
「惹き付ける?」
「聞いた話だと摩耶は学校に行き始めたらしいわね、おそらくだけど結構人気高いんじゃない?あんたと違って」
「んまぁ、そうだな。最後の一言は余計だ」
予想通りと思い鼻で笑う奈々に相馬は殴りたい気分だったが諦めた。
「摩耶は……」
奈々は会話の途中で足を止め不意にうしろを向く、相馬もそれに合わせて向く。
「どうした?」
「いやなんでもない」
向き直して歩き始め話を戻した。
「摩耶は人を惹き付ける魅力はあるけどどこか抜けてるからねぇ」
「ふ〜ん、まぁそうだな」
相馬は夏休み前の出来事を思い出す。
「その分私は色々と大変なのよ…」
「どういうこと?…てかどこ行く?」
奈々は裏路地に入る、相馬は止めようとしたが迷いなくと歩く奈々に声をかけるが一向に止まらずついに腕を掴み強制的に止めた。
「おい、なんでわざわざ人気のない所を行く」
「あら?心配してくれてるの?」
振り返りニヤニヤする奈々。
「心配というよりお前の身に何かあったら大変だからな」
「ふぅん、それよりまた来たの?」
「はぁ?」
相馬はいきなり訳分からない事を聞かれたが奈々の目は相馬を見ておらずそのうしろを見ていた。
すると影から複数人の外国人集団が現れた。
「ワカッテイタノカ…」
「はん、多少は日本語が使えるようになったのね」
集団の代表と見られる大男がカタコトの日本語を言い前に出てくる、奈々も相馬を押しのけて前に出る。
「今回コソハ、オ前ヲ、倒ス」
「いや私を倒してどうすんの…、あんた達の目的は身代金でしょ…」
奈々は冷静に自分を誘拐して身代金を要求してることを自分で言う。
「奈々、この人達は?」
「まぁ愉快な誘拐犯集団みたいな?あの大男とは何度も会ってるよ」
「はぁ?なら警察に…」
「大丈夫よ、どうせまた私がボコるんだから」
多少の日本語が分かる大男は奈々の言葉に怒りが達した。
「ナマイキ…コロス」
大男はポケットからナイフを取り出して奈々に襲いかかる、それに合わせて周りの集団も奈々を襲う。
だが奈々は動じることなく全て受け流し容赦ない拳を殴りつける。
「まだまだ未熟、それに女の子一人にナイフとか恥ずかしくないの?」
余裕を見せる奈々に大男のナイフは必死に振るうが一向に当たらない、それに加えて他の人達も襲うが全て受け流される。
「…ありえねぇ」
目の前で起きてる現状にただ呆然と見つめる相馬。
「クソっ!クソっ!ナゼアタラナイ」
「馬鹿ね、そんなの決まってるじゃない。ーーほいっ!」
「ーーグフッ!」
大男が隙を見せた一瞬に思いっきり下から上へと真っ直ぐにアッパーを決める奈々。
そのまま数十センチほど浮いたのち鮮やかに大の字で倒れ込み気絶する大男。
「さて、あとは誰が殴られたい?」
骨をボキボキと鳴らす奈々に背後から近づく影にナイフを持ち振り下ろそうとしていた。
「ーー奈々っ!」
咄嗟に相馬が飛び出てナイフを持つ手を蹴りナイフを落とす。
「oh!!」
「…あらなかなかやるじゃない」
背中合わせ状態の相馬と奈々。
「なんだ知っていたのか」
「当たり前じゃない、あんたを試したの」
「もし俺が出なかったら?」
「それはそれで」
楽しそうな奈々に呆れる相馬。
「さてと、あなた達どうする?」
ニヤリと悪魔的な笑みを浮かべる奈々に怖気付いた集団は大男を抱えて逃げて行った。
「とまぁ、摩耶に寄ってたかる悪いハエみたいな者を私は追い払ってたの」
「急に話を戻すな、てか明らかにアイツらはお前目的みたいだったけど…」
「ああ、あれは最初は私と摩耶を狙って襲ってきたけど私が追っ払っていたら目的が変わってね」
「警備とか付けないのか?」
「やだよ、暑苦しい。てかそんなことしたら『私たちはお金持ちですよ〜』て、言ってるもんじゃない」
「そんなモンなのか?」
「そんなモンよ、さてデートは終わり帰りましょ」
「デートて…、まぁいいか…」
「馬鹿ね、私と隣に歩くだけありがたいと思いなさい」
「はいはい…」
相馬と奈々はホテルに戻る、中では奈々が居なくなったことに騒いでいたが奈々が戻ったことにより騒ぎは収束した。
しかし奈々が「小汚い男に連れ回された」と相馬のせいにして相馬は奈々の父親にこっぴどく怒られたが「奈々はいつも逃げ出すことは知っていた」らしく表上厳罰となっていたが裏では軽い笑い話になっていた。
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