お嬢様またお願いします!ー次は必ず…ー
イジメの件があって以降、教室内は物静かな雰囲気だった、件の事もあったがそれよりもこの日、自宅謹慎が解けた相馬が登校してくるからだった。
休み時間、相馬は登校してきて教室に入ってくる。
「………」
相馬は誰とも喋ることもなく自分の席に座る、相馬は無表情で席に座り本を読む、周りは相馬の事を危険視していた。
「……」
そんな相馬を摩耶は何か言いたそうに見るが相馬は見向きもしない。
「お~い、相馬~」
お通夜状態の空気の中割って入ってきたのは環だった。
「環、なんだ?」
「全く、登校したのならちゃんと職員室来てよ~」
「わりぃ、それより環には迷惑かけたな」
環は相馬が自宅謹慎中、色々と生徒が押し迫られたため色々と大変な思いをしていた。
「ばーか、全然大丈夫よ。放課後は職員室に」
「ああ…」
環は笑顔で教室から出ていく、見た目は普通にしていたがそれなりにあったことは理解していた相馬。
「あの~、相馬さん…」
「摩耶か、大丈夫か?悪かったな、あれが本当の俺だから、近づかない方がいい。むしろ俺は女嫌いだから…」
摩耶が相馬の近くに来たが相馬はに苦笑いで勝手に説明する。
「私も放課後に呼ばれてるので、その…」
「もしかして今回のせいで?」
「そうなんですが、それ以上に大変な事になってまして…」
「いいよ、摩耶はこの学校に残ればいい。俺が消えればいい話だ」
「いえそれは…」
ちょうどその時に休み時間が終わるチャイムと同時に授業が始まるチャイムが鳴る、摩耶は仕方ないく席に戻る。
その後も相馬の悪い噂は広まったが当の本人は気にすることも無く放課後になった。
相馬は職員室に向かって摩耶もあとからついて行く、環と会ったのち隣の会議室に入り環の向かい側に摩耶と相馬が座る。
「はぁ~~、疲れた~」
環が座るなり緊張の糸が切れたかのように机にベタリと倒れ込む。
「全く相馬は~、手加減してあげなよ~、あの三人組相当泣いていたよ」
スマフォを取り出し画面を見ながら文句を駄べる環、その様子からもはや教員という姿はなかったが摩耶は少し驚いていたが相馬は見慣れた光景で気にしてなかった。
「いや謝る時間は設けた、けど謝らなかった」
「摩耶ちゃんから目を離した相馬が悪い、仮にも女の子だよ、首を絞めるなんてもはや犯罪の領域。今回はイジメを止めようとした際における過度な制止行為として収めたけど外だったらもう警察です」
「…ごめん」
「で、どうする?」
スマフォを置いて相馬と向き合う、相馬の答えは決まっていた。
「それは環の判断でいい、もしくは摩耶の」
「はぁ…。本当に相馬は自分に厳しいというかなんというか……。いいのそれで?」
環は予想していた答えで色々な意味で頭を悩ませた、そして再度聞く。
「構わない、元々は俺は学校というものが合わないからな」
「はいはい、摩耶ちゃんは?」
「わた、私は……、どうすれば…」
摩耶は言葉を詰まらせて困った様子だった。
「気持ちは?」
「学校に居たいです、けどお父様とお母様は帰ってこいと言いました、いじめは怖かったですけどそれ以外は良いことでした、ですがこのまま居たらまたいじめられてしまうのではないのかと考え、相馬さんや環先生に迷惑をかけてしまうのではないのか心配で……」
摩耶は今にも泣きそうな声で自分の気持ちを伝える。
「なるほど、じゃあ担任である私が決断を下すわ」
摩耶と相馬は身構える、どんな決断であろうとしっかりと受け止めなければならなかった。
「いつも通りでいいんじゃない?」
「はぁ?」「え?」
予想外な答えに気が抜けた声が出る。
「だっていちいち手続きするの大変だし、それにあの三人組はもう反省してるから大丈夫だと思う、それに相馬が居なくなったら摩耶ちゃんは誰に守ってもらうの?摩耶ちゃんは残っていたいと言うのに」
「環、大丈夫なのか?」
「いや大丈夫じゃないよ、だってやべぇ生徒、それも教員の弟がクラスにいることが判明してしまったから」
「そこじゃなくて…教員の立場というか…」
「ばーか、私を誰だと思ってるの、凶暴凶悪女よ」
その言葉に固まる相馬だったが吹っ切れたように笑い天井を見上げる。
「馬鹿はお前だよ」
「環先生、私はこのままでいいんですか?」
摩耶が聞くと環は微笑むように答える。
「いつも通り学校に来て大丈夫」
「……ありがとうございます」
また学校に来れることに泣き頭を下げる摩耶。
「さて終わりにしようか、相馬はいつも通りに摩耶ちゃんを送り届けることよ」
「ああ、分かった」
「じゃ、さようなら~」
環は手を振って会議室から出ていく、そして摩耶と相馬だけになる。
「やっぱ敵わないな、環には…」
一人で笑う相馬に恐る恐る声をかける摩耶。
「相馬さん、またお願いできますか?」
「本当に悪かった、あの三人組のことをちゃんと言っとくべきだった」
相馬は摩耶の方に向いて頭を下げる。
「相馬さんだけが悪いわけじゃないですよ、私がしっかりと逃げるか話していれば良かっただけのことですから…」
「今度こそお前を守ってやる」
「ーーえっ…」
相馬の言葉に摩耶は一瞬だけ胸に何かが響く感じがした。
「ん?どうした」
だが、摩耶は緊張が解けただけだと思い特に気にしてなかった。
「…いえ大丈夫です」
「そうか、さて帰るか」
「そうですね」
摩耶と相馬は会議室から出て荷物を取りに戻ったあと帰っていった。
その様子を会議室を繋ぐ職員室の扉から耳を当てて聞いていた環。
「これはかなりの進展か?」
その様子を見ていた教頭が首を傾げる。
「環先生、どうしたのですか?」
「いえなんでもないです」
「そうですか、それより今回の一件ですが次もし起きた場合はたとえ弟であろうとそれなりの処罰、対応をさせていただきます。それに噂のお嬢様のお守りだとかなんとからしいですが問題が起きたら学校が大変な事になるのであしからず…」
「はい、申し訳ございませんでした。以後気をつけます」
環は深々と頭を下げたのち自分の席に戻る。
「今後もかな~り大変ね、相馬色々な意味で頑張ってよ…」
苦笑いしながら小声で密かに相馬に期待を込める、その期待が相馬に届いたのか分からないがくしゃみをした相馬だったが特に気にしてなかった。
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