お嬢様勉強教えます!ーお嬢様、完璧では?ー
相馬は休み時間と昼休みにずっと教科書とノートを開いて唸っていた。
「相馬さん、ここ数日ずっと教科書とノートを開いて唸ってますけど大丈夫ですか?」
摩耶はお弁当を食べながら聞いた。
「あん?お前大丈夫なのか?」
「へ?」
「この前に言っただろ、もう少しでテストだって…」
「あ〜」
少し前にショッピングモールに出掛けた際に環がテストの準備と言っていた事を思い出した摩耶。
「俺はテストが大の苦手なんだよ…」
相馬は頭を抱えつつ教科書の問を書いて答えを導く。
「意外ですね、あ、そこ計算違いますよ」
「意外ってなんだよ、本当だ、ここが間違えたのか…」
「本を読んでいらっしゃるから頭がいいのかと思いましたよ、それも違いますよ」
「別に本は読みたくて読んでるだけだ、勉強とは関係ない、うん?違う、どこだ…」
「そうなのですね~、そこはここはこうすると答えることが出来ますよ」
箸を置きノートに書いた問と教科書の問を交互に指さし説明する。
「あ〜、なるほど……ん?」
「どうしました?」
相馬は摩耶に教わり問を答えられたがふと何かに気づく。
「お前、ここ答えられるか?」
教科書をパラパラとめくり授業で習った所を指した。
摩耶は考える隙もなく「簡単ですね」と言ってすぐに答えを導き出した。
相馬は次々と指すが摩耶は難なく答える。
「……天才か?」
「何言ってるんですか、こんなの常識ですよ」
笑う摩耶、授業で習った所は知って当然だったが相馬にとっては覚えることがとても苦手でテスト前はいつも必死で勉強していた。
「腑に落ちない、お前が頭いいなんて…」
毎度の如くどこか抜けてる摩耶に対して相馬は悔しがる。
「失礼ですね、私はこう見えて頭はいい方なんですよ」
「うっわ~、それ自分で言うかよ」
自分で頭がいいと言う奴を初めて見た相馬、摩耶は頬を膨らませる。
「じゃあ私が教えましょうか?」
「はぁ?なぜそうなる?」
「相馬さん私を信用してないからです!」
「いいよ、別に環に教わるから」
相馬は遠慮した、しかしタイミングが悪かったのか良かったのか環がちょうど教室にきて摩耶と相馬の元に立っていた。
「相馬それは無理よ」
「環!?」
「理由は私が教師だから、それより一年だからって赤点をとったら分かるわよね?それを伝えにきたの」
「うっそ!マジ?」
「本当よ、それじゃ」
環はそのまま教室を出て行った。
「仕方ない、じぶ……なんだよ」
ため息を吐き仕方なく自分で勉強を頑張ろうとシャーペンを握ろうとした時に摩耶が何か言いたそうな顔をしていた。
「私が教えましょうか?」
「遠慮する」
ニコニコする摩耶、相馬は教えてもらう事に対して変なプライドがありましてや女子ということもあり無視をして教科書とノートを見る。
「う~ん………うん?いや違うか~、ここ間違ってるのか?それすらも分からねぇ……」
ブツブツと独り言をする相馬、しかし隣ではまだニコニコしている摩耶、段々とその視線が集中を欠けさせ相馬は耐えきれずに言った。
「悪い、教えてくれ」
テストとプライドを天秤に掛けた結果、テストを最優先させた。
摩耶は「はい」と元気よく返事をして相馬に勉強を教えた。
テストは一週間後、相馬はその間に摩耶に教わった。
放課後、教室に残り勉強を教える摩耶に教わる相馬。
「相馬さん、そこの古語違いますよ」
「え?マジ?」
「マジです、そこはコレです」
教科書を見比べてノートに書き込む摩耶に相馬は真剣に取り組む、ふと相馬は摩耶に聞いた。
「お前勉強好きなのか?」
「え?」
「いやお前いかにも教えたそうにしていたから…」
「好きですよ勉強、教えるのも教えられるのも、勉強は嘘をつきません、日々の積み重ねによって今後の生活が身に付くのです」
摩耶は笑顔で答える、その姿に感動した相馬だった、だがふと気づいた。
「生活が身に付くってお前全然身に付いてないし、まず世間を知らないところでヤバいだろ」
「世間ですか?そりゃ知ってますよ」
自信満々に答える摩耶。
「はぁ?馬鹿かお前は、全然知らないじゃねぇかよ」
「知ってますよ!」
「おま、この前携帯どころかスマフォを知らなかったじゃねぇかよ!」
「ち、違いますよ!アレは単に世間とは関係ないじゃないですか!」
言い争う二人、段々とエスカレートしていく。
「ーー二人ともヒートアップしすぎ」
摩耶と相馬を止めたのは環だった。
「環」
「環先生」
「全く軽く見回りしていたら段々と声が大きくなる二人だからびっくりしちゃった」
「悪い」
「ごめんなさい」
「喧嘩はしない、世間知らずでも女の子よ、大事にしないとね」
環は相馬に向かって不敵な笑みを浮かべる。相馬は「どういう意味だよ」と言うが環は知らんぷりをする。
「ま、勉強はいい事だ。摩耶ちゃん悪いけどこの馬鹿をよろしく頼むよ」
「はい」
「普通に返事をするなよ、俺が馬鹿みたいじゃねえか」
「馬鹿だろ、だから教えてもらってるんじゃん」
「うぐっ…」
環の言葉に思いっきり心に突き刺さる相馬、正論だったがこうもハッキリと身内でさえも言われると心にくる相馬。
環はそのまま教室を出ていく。
「さて続きをやりましょうか相馬さん」
「そ、そうだな…」
突き刺さった心を抑えながら勉強を再開する摩耶と相馬。
数時間後、ある程度勉強が進みキリのいいところで終わらして帰る二人だった。
テストまで残り数日、昼休み昼食をとったのちにまた勉強を教えようと席から立つ摩耶。
「摩耶、ちょっといい?」
不意に女子生徒3人組に声をかけられる摩耶。
「はい?いいですよ」
摩耶は疑問に思いつつも了承した、相馬は教科書をずっと見ていたが教室を出ていく摩耶に気づきそのうしろに女子生徒3人組にも気づいた。
「アイツら、もしかして…」
相馬はあの女子生徒3人組を見て瞬時に理解した、それは摩耶を影で悪口を言う3人組。
相馬は男子生徒何人かから話を聞いていたため注意していた、あまり不安事を持ち込ませないため摩耶本人には言わなかったため摩耶は何の疑いもせずに3人組と一緒に教室から出て行った。
「クソ…」
席を立ち急いで摩耶を追いかける、なんとかすぐに追いつくことが出来た相馬。
「摩耶どこに行く?」
「相馬さん?私呼ばれたので…」
3人組の間から摩耶は振り返り相馬に言う。
「あん?相馬文句ある?悪いけどお前に用はないから」
「そうそう私達は摩耶に用があるの」
3人組は相馬を睨みつける、明らかに何かあると思った相馬、しかし怖気付くこともなく答えた。
「悪いけど俺にも摩耶に用がある」
「はぁ?いや私達の方が重要なんですけど」
「馬鹿じゃないの?」
「キモイ、死ね」
引き下がらない3人組、相馬は鬱陶しく思い3人組に聞いた。
「俺は摩耶に勉強を教えてもらう用事だ、お前達はなんだ?」
「それは…」
「「……」」
3人組は顔を見合わせる、本人を目の前にして本人の悪口は言えないこともあり無言なる、相馬は「無いのなら誘うな」とだけ言って摩耶を手招きして教室へと戻る。
「あの~相馬さん、大丈夫だったのですか?」
「大丈夫だ、それよりお前今後あの3人組と関わるな」
「どうしてです?」
「付き合いが悪い、いや悪すぎるからだ」
「はぁ、そうなんですか…」
摩耶はあまり納得した様子ではなかっが相馬はとりあえず予防線として警告はした。
その後は通常通りに勉強を教わった。
テスト当日、なんとかギリギリまで教わり頑張った相馬は脳をフル回転させテストに挑んだ。
結果はギリギリ赤点回避、相馬はホッとして摩耶に恥ずかしながらも感謝の言葉を伝え、摩耶は「お疲れ様でした、また頑張りましょう」と笑顔で答えた、だがこの時に相馬は見てしまった、摩耶の成績を薄々予想はしていたが恐ろしいことに的中した、摩耶は全教科満点と言うことに。
相馬は複雑な気持ちのまま次のテストは摩耶に教わることもなく勉強しようと心に決めたのだった。
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