第四話 急造美少女の『まい1号』

 ある意味、自分と自分の分身に二股を掛けられているという摩訶不思議なシチュエーションではあるが「ゆい」にとっては「芳文」が少々真面目であるだけに若干腹立たしい状況になった。

 「ゆい」には「将人」という双子の弟がいる。将人も結構なルックスの持ち主で、割と華奢である。

<そうだ、将人を女装させて「芳文」さんを驚かせてやろう>

 翌日、「ゆい」は『まい』として「芳文(文由)」とトークを進める。

「こんにちは、「文由」さん。映画のお誘い有難うございました。でも、少し考えてもいいですか?」

「OK。前向きな返事待ってるね」

「はい」

 「芳文」は満更でも無い『ゆい』の回答に胸を躍らせていた。実のお相手はキャバクラ嬢の「ゆい」なのに、ご苦労なこった!である。男とは何と浅はかであろう。

 その一方、「ゆい」は「芳文」に一泡吹かせる作戦の下地を作っていた。 早速、双子の弟、将人に連絡を取る。

「おう、姉貴。電話なんて珍しいな。ってか、姉貴が電話して来る時ってろくな事ねぇし」

「流石は我が双子の弟よ。察しがいい。そこで、ひとつお願いがあんだけど」

「何さ。金以外の相談なら聞いてやってもいいぜ」

「うちのお客さんなんだけど二股掛けられてんのよ。そんで、将人にあたしの代わりをして欲しいの」

「は?姉貴、今彼氏いないんじゃないの?」

「余計な事は言わないでいいの。二股って言っても気持ち的ってか何と言うか。その辺を話すと長いから取り敢えず『まい』っていう女の子になりきって欲しいの」

「取り敢えず?はぁ?意味分からん。どういう事だよ、それ」

「だからぁ、そのお客さんと「まい」って言う女の子の体で映画を観に行って欲しいって事!お礼はちゃんとするから」

「ふーん、よく分かんねぇけど面白そうだな。わかった。引き受けてやろう」

「ありがとう。女の子だから女装、お願いね」

「え~、マジで?」

「当然でしょ?あなた元々女っぽいからバレないわよ」

「うーん、しょうがねぇなぁ」

「じゃぁ、よろしくね。あとで詳しく話すから」

「OK」

 将人は姉の頼みを聞き入れた。その後、「まい」は「文由」の申し出を承知し、

次の土曜日、13:00に新宿の「気の国や書店」前で待ち合わせることにした。

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