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先ほどまで探していたプレイヤー、ビスマルク――その姿を見た西雲は改めて驚くしかなかった。
百八十センチという長身にメイド服を着てリズムゲームをプレイする――実際に隣でプレイはしていたのだが、この光景には驚くしかない。
周囲のギャラリーもビスマルクのプレイヤーネームは見えたとしても、それがあのビスマルクとは思いもしないだろう。
実際、リズムゲームでビスマルクと言うプレイヤーネームを使っているプレイヤーは複数確認されており、ある種の都市伝説と言える。
そう言った事もあって、噂のビスマルクが彼女とは断定できなかった事情もあった。
「プレイヤーネームは見たけど、君があの――」
ビスマルクの方も西雲のプレイヤーネームを見て、見覚えがあると思ったらしい。
先ほどのアイコンタクトが意味するのは、それなのだろう。
「一つ、お願いがあるのですが」
西雲の方が話を切りだすと、ビスマルクの表情も若干だが真剣になる。
おそらくは――。
話を聞いたビスマルクも、少し困惑をしている。それ位に彼の頼みと言うのは、かなり難易度が高い物なのだろうか?
「話は読めたけどリズムゲームは十人十色、プレイ機種が同じでもプレイスタイルまで同じとは限らない」
「それは、こちらも分かっています。その上でのお願いと――」
西雲のお願いとは、ビスマルクにリズムゲームを教えてほしいという物だった。
さすがにビスマルクも『ネットで検索しろ!』的な言い方で突き飛ばす訳にもいかないとは思っている。
(どうした物かね)
さすがの彼女もため息の一つは出るだろう。それ位に一つ返事でOKを出す訳にはいかないのだ。
これが対戦格闘やアクションゲームだと話も違ってくる。機種によっては、実際に師弟関係なプロゲーマーだって存在していた。
(ココは一度持って帰って返事をしたい所だけど)
今は返答を保留にして置きたい所だが、あの目つきを見ると――過去に自分が別のプレイヤーのプレイを見ていた事を思い出す。
あっさり断って、他のゲームをプレイしたいという気持ちも彼女にはあった。ひょっとすると、最初は断ってもしつこくやってくる可能性も否定できない。
「一応、あなたのプレイを確かめてからにしましょう。話は、それから」
こういうやり方しか思いつかなかったので、ビスマルクは西雲のプレイを見て弟子にするかどうかを決める事にした。
(あの目つきだとあり得ないと思うけど、ゲームに限らず有名になりたいという欲望だけで、有名火と絡む人物だっている)
ビスマルクは、SNS上における炎上案件を例にして西雲にひとつの疑問を持っていた。
彼も同じように有名になりたいだけでリズムゲームをプレイし、それ以降はプレイしなくなってしまうのではないか――と。
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