3-2

 ビスマルクを発見できなかった西雲にしぐもハヤトは、仕方なく――ゲームをプレイする事にする。

せっかくのチャンスと言うのもあるかもしれないが、手がかりなしでゲーセンを捜索するよりは手っ取り早いのだ。

ゲームで聖地巡礼を考えていた草加市は様々な個所で資金を投じた経緯もあってか、アーケードゲームの技術革新にも貢献している。

実際、リズムゲーム専用のリズムゲームガジェット、ARゲーム、それ以外にも様々なシステムが資金提供によって完成出来たような物。

(あのセンターモニターシステムも、元々は草加市の――)

 一応、それに賭ける事にした。自分がビスマルクのプレイを見る事が出来たのと同じように――。

自分のプレイでビスマルクを呼び寄せれば――と。

(出来る事をやっていくしかない。こつこつと――)

 思う部分は色々とあれど、今はリズムゲームのプレイに集中する事にした。

雑念が入れば、そのプレイは必ずどこかでミスを呼びかねない。あの時に見たビスマルクのプレイは、明らかに雑念のないプレイその物だろう。

なりきりや偽者は『自分が有名になりたい』という気持ちがプレイに雑念を生み出し、完コピプレイであろうと『チート』等を疑われて炎上する。


 

 自分のプレイが終了し、その後には次の順番待ちプレイヤーがいたので、そのプレイヤーに順番を譲る。

中には連コインと言う筺体の占拠をするような行為をするプレイヤーもいるのだが、ここではそう言った行為は見かけない。

ローカルルールを守っているプレイヤーばかりではないし、マナーが守られていないという事で炎上するジャンルだって存在するだろう。

その中でも、リズムゲームに限って――最低でも草加市内では大きなトラブルやSNS炎上に発展しそうなニュースは出ていない。

「君は確か――?」

 プレイを終えて少し歩いた所で、声をかけてきたのは先ほどの長身女性だった。

自分の名前を知っているかどうかは分からないが、気になって声をかけてきたのかもしれない。

「あなたは一体――」

 思う所はあるが、向こうから接触してきた以上は何か知っていると――。

もしかすると彼女がビスマルクの関係者という可能性だってあるだろうが、自信がない。

「何となく、何処かで見覚えがあるようなプレイヤーと思ったが――見間違いか」

 向こうは別の有名ランカーとでも思ったのだろうか? FPSや格ゲーではテレビにも出演しているプロゲーマーだっている。

それを踏まえると、そう言った人物と彼女は認識していたのだろうか?

「声をかけてきた以上は――?」

 話の流れが微妙に――と考えた西雲は、ある疑問を切りだす事にした。

「もしかして、あなたがビスマルク――」

 それを聞いた目の前の女性は何か言い忘れていた――と思わせるような表情をする。

もしかすると、向こうは自分の顔を見ただけで分かってくれるような気配だったのだろう。一種のアイコンタクトだ。

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