第3話:ゲームの裏に潜む影

 あるSNS上で、このようなつぶやきが拡散されていた。

【リズムゲームがイースポーツのフィールドに立つということは――滅多になかった。それ位に、注目度としては低い部類だったのだろう】

 しかし、それに耳を傾けるようなプレイヤーがいたのかは疑わしい。

このつぶやきを拡散していたのが、大抵は承認欲求を満たす為だったり、同意圧力的な物、もしくは特定コンテンツ炎上狙いと言った理由だろう。

実際、スターゲートをプレイしているプレイヤーの中にはこの発言に関して一切耳を貸さないプレイヤーが多い。

「このつぶやき、どう思う?」

「明らかに同調圧力狙いだろうな。そして、最終的には悪目立ちするのは、よくある事だ」

 センターモニターよりも若干離れた別ゲームの待機列、そこでつぶやきを見ていたゲーマーも同じことを思った。

並んでいる機種は対戦格闘ゲーム、イースポーツ的には発展しているジャンルと言ってもいいのだが――。

それでも他ジャンルを批判しようという姿勢は見せず、今回のつぶやきも下手に同調すれば自滅をすると感じているのかもしれない。



 ゲーセンに設置されたセンターモニター、そこに集まるプレイヤーは該当するつぶやきに目を通したりもしないだろう。

西雲にしぐもハヤトもつぶやきをスルーしている人物の一人になる。

それ以前に過去のSNS炎上等を踏まえてか、こうした話題を把握はしても意見は出さないのかもしれない。

「ビスマルクはSNS上で名前しか聞かない。何者なのか?」

「知らないのか? あの人物は上級ランカーと言ってもいい実力者だ」

 近くにいたゲーマーがビスマルクを知らなかったので、解説をしている別のプレイヤーの話が西雲の耳に入ってくる。

ビスマルクが上級ランカーらしいのは知っているが、実在するのかさえ疑わしい。ジークフリートもバーチャルアバターなので、その正体は不明と言ってもいいだろう。

それを踏まえてしまうと、どうしても本物なのかも疑わしい――そう考えるのが普通だ。しかし、それでも西雲は本物だと確信している。

(そうだ。確かにビスマルクは上級ランカーと言ってもいい実力者――)

 西雲の目は真剣そのもので、楽曲が終わってリザルトが表示されるまではモニターを見ていた。

そして、そのリザルトを見てますます興味を持つ。その表示は、間違いなくフルコンボを記録している。

(アレでなりすましだったら、上級ランカーのプレイヤー全てがビスマルクの名前を名乗っていると言われるだろうな)

 そして、モニターから離れて――筺体の方へと移動を始める。

タイミング的に、他のプレイヤーがプレイを終えて筺体を離れると考えたからだ。



 プレイが終わったビスマルクを、西雲は発見できなかったらしい。

理由は様々あるが、せっかく筺体が空席になったのでプレイを始める事にする。

しかし、西雲はビスマルクの姿を見た訳ではない。男性なのか、それとも女性なのか――そこさえも彼は知らないのだ。

(せっかく空席になったのだから、プレイを始めても――?)

 プレイを始めようと百円玉を準備しようとした矢先、隣の台では一人の女性がリズムゲーム専用ガジェットを用意している。

女性だと速攻で分かったのには理由があった。それは彼女がメイド服を着こなしてい、髪型もツインテールだったというのもあるだろう。

草加市内ではコスプレ可能エリアが存在し、そこであればコスプレイヤーが自由に出歩くことも可能。ハロウィンや有名なイベント以外でもコスプレが解放されているというのは、非常に珍しかった。

しかも、身長は椅子に座っている関係があるのに自分よりも高い――。百八十センチはあるだろうか?

(まさか、彼女が――)

 西雲は百円を投入、リズムゲーム専用ガジェットもタッチしてエントリーしたのだが――それと同時にログイン情報が画面の最上部に表示された。

そこには、先ほど目撃したプレイヤーネームが表示されており、無言で驚くしかなかったのである。

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