2-3
【スキルを固定にしたまま、プレイを開始します。よろしいですか?】
まさかのインフォメーションメッセージだった。アバターにスキルが装備されている事は、ここで初めて知った。
ジークフリートのプレイ動画でも言及していた可能性はあるのだが、そこまでチェックするのを怠った可能性は否定できない。
色々と思う部分はあるだろう。しかし、今はそのままプレイに集中する。リズムゲームにおける雑念は、思わぬ失敗を生むからだ。
「あのプレイヤー、どう思う?」
「プレイ称号も表示されていないという事は、まだ始めたばかりだろうな」
「外野が色々と言ったとして、プレイヤーの為にはならない」
周囲のギャラリーは様子を見ているのだが、彼らが西雲のプレイに口出しをして水を差すことはない。
格闘ゲーム等の場合であればヒートアップするかもしれないが――これはリズムゲームだ。
他の機種であれば、上級者プレイで盛り上がるのもリズムゲームの特徴である。
しかし、スターゲートでそのようなプレイが推奨されているかと言われると――賛否両論には違いない。
「だが、選曲したのは比較的に初心者向けではない。もしかすると、他機種のプレイヤーかもしれない」
「何故に言い切れる? 版権曲未収録機種だとレベルの目安が当てになるとは――」
「実際のプレイを見れば分かる。手の配置等も知っているプレイヤーの物だ」
ギャラリーの一人は、西雲が他のリズムゲームもプレイしているプレイヤーと予想していた。
西雲の手の配置は右手がボタン二つ、左手はレバーと言う配置だ。左側のボタンは高難易度で使われる物だが、この難易度では使われない。
その辺りはチュートリアルでも言及されているし、プレイ前に使用するボタンの表示もされる。画面を見ていれば、それ位は把握していて当たり前だ。
今回のプレイは二曲までだが、一般的なリズムゲームでは三曲設定も多い。二曲で百円は安い方と見るかは――機種によるだろうか?
他の台も混雑し始めたので、もしかすると人気機種と言う事で台を回す方を優先したのかもしれない。
この辺りはゲーセンによって対応が異なるので、こればかりはどうしようもないだろう。サービスプレイもあるだろうが――。
(どちらにしても――)
西雲は椅子から立ち、台を離れて別の機種へと向かい始めていた。最初のプレイなので、しかたはないのかもしれないがスコアは散々な結果だ。
演奏失敗せずにクリア出来たのは他のリズムゲームでプレイ感覚を把握していたのもあるかもしれない。それでもスコアが伸びなかったのには別の理由もあるのだろう。
さすがに上級のトップランカーや動画でプレイを披露していたジークフリートレベルは、まず無理だろう。自分でも自覚はしているのだが――。
「あれは――?」
人の集まりが若干増えている様な場所を発見し、西雲がそこへ足を踏み入れると――そこには五〇インチはあるようなセンターモニターが設置されていた。
このモニターでは様々なゲームのプレイをチェックする事が出来るのだが、あくまでもリズムゲームガジェットに対応した機種に限られる。
そういえば――と西雲は思いだし、そのモニターに表示されているゲーム画面を見て言葉を失った。
「まさかだな」
「あのビスマルクか?」
「これが、上級プレイヤーの実力?」
周囲が動揺しているのも無理はない。映像がライブ配信されていたプレイ、それはあのビスマルクによる物だった。
リズムゲームの上位ランカーに迫るような実力者――とSNS上では言及されているような人物である。
それ程の人物であれば、人気に便乗しようとするなりすましプレイヤーだって現れるはずだろう。しかし、リズムゲームの技術をコピーするなんて事は不可能に近い。
その理由は、機種によって同じような法則でプレイ可能なのかもしれないが――筺体の形状やボタン等が変わることで感覚は変わってしまう。
太鼓型、ギター型、ドラム型のような楽器モチーフの筺体のリズムゲームを全て同じ感覚でプレイするなんて、数日で出来ればテレビで取り上げられそうなレベルだ。
ジークフリートも『全機種を制覇するなんてプレイヤーは、いてもごく少数。それがわずか数日や数週間レベルで誕生するなんてありえない』と断言している。
(あれは――本物だ)
西雲はビスマルクのプレイしていると思われるライブ映像を見て確信していた。
あそこまでのコンボにこだわるプレイスタイルは、ビスマルクの特徴とも言えるだろう。
コンボを繋げていけばスコアが上昇するようなゲームもあれば、フルコンボの称号が得られる物だってある。
ビスマルクの場合は、どちらかと言うと後者を優先するプレイヤーだ。それに、リズムゲームにおける最高スコアの理論値を意図的に狙う事はない。
理論値を狙えば、SNS上でも目立てるのは間違いないだろうが――そこまでの事をするようなゲーマーは滅多にいないのだ。
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